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生産性向上と成長スピードを加速するフランチャイズシステムとは

フランチャイズは様々な業種に適用が可能で、少ない資本で事業展開を加速する有効なシステムです。しかし、安易に始めることはリスクが高いのです。本稿では、フランチャイズシステムの仕組みと、その仕組みを経営に取り入れる前に考えるべきポイントをお伝えします。

(掲載日 2021/03/04)

フランチャイズシステムを使って飛躍的な成長を図る

 2020年の中小企業白書によると、中小企業の労働生産性は長らく横ばい傾向で推移し、労働生産性の一要素である資本装備率も低い水準で、生産性の向上は長年の課題となっています。今後、人口減少が見込まれる中、生産性の向上は放置できない課題として認識されており、政府においても働き方改革や中小企業生産性革命推進事業などの施策が打たれています。今回紹介するフランチャイズシステムは、そのような課題を解決し、飛躍的な成長を促進する一つの解といえるでしょう。

 フランチャイズシステムを使った事業としてコンビニエンスストアが有名ですが、他にも外食チェーンや学習塾、クリーニング店、不動産仲介店など様々な業種があり、あらゆる業種で取り入れることができるシステムといえます。

◆フランチャイズシステムのメリット


 フランチャイズシステムは米国を源流としていますが、国際フランチャイズ協会では下記のように記載されています 。

「フランチャイズは、ブランドの商標または商号と確立したビジネスシステムを持つフランチャイザーが製品やサービスを提供する方法であり、フランチャイジーは、フランチャイザーの名前とシステムの下でビジネスを行う権利のためのロイヤルティと、多くの場合初期費用を支払う。」
参考)https://www.franchise.org/faqs/basics/what-is-a-franchise

 フランチャイザーが提供する商標の利用や経営支援によってフランチャイジー(以下、加盟店と表記)となる個人や事業者は、フランチャイザーのブランドやビジネスシステムを活かすことができ、経営ノウハウが不足していても事業立ち上げのリスクを抑えることができるメリットがあります。

 
 一方、フランチャイザーのメリットは、加盟店が持つ他人資本を使うことで、単独で販路拡大するよりも急速な事業展開が可能になります。

 例えば、ある店舗が事業拡大のために店舗を増やしたい場合、直営店の店舗を準備し人を雇わねばなりません。その為、多額の資金調達が必要になり、金利負担も増加します。
 更に店舗を増やしたいとなると、新たな店舗投資が必要になります。このようなやり方では、10店舗増やすとしたら何年かかるでしょうか。短期間で事業拡大を実現することは難しいといえます。

 一方、フランチャイズシステムでは、店舗投資は加盟店が行うため、少ない投資で店舗を増やすことが出来ます。更に店舗を増やしたい場合、フランチャイザーは新たな加盟店を募集し教育・指導する負担はありますが、店舗投資に比べるとかなり少ないのは明白です。その為、店舗拡大を短期間で進めることが可能になります。成長事業であれば、資金や人が集めやすくなり、さらに成長を加速することも可能です。



◆加盟店の成功がフランチャイザーの成功


 従来から事業を行っていた事業者がフランチャイズシステム化に取り組む場合、加盟店が成功しないとフランチャイザーの成功も成しえないことを肝に命じなければなりません。

 下の図はフランチャイザーと加盟店のビジネスモデルをビジネスモデルキャンバスで表したものです。ビジネスモデルキャンバスは、提供価値(VP)を中心に左側上部で提供価値を実現するための調達に関する要素、右側上部に提供価値の顧客への販売に関する要素を表し、下部の左側に費用、右側に収益を表したものです。

 フランチャイザーのビジネスモデルの収益部分に着目すると加盟店が支払う費用がフランチャイザーの収益となっていることがわかります。一方、加盟店は独立した事業者であり、フランチャイザーに費用を支払っても十分な利益を出せないと魅力的な事業といえません。加盟店にとって魅力的な事業でなければ、新たな加盟店候補も現れず、事業拡大が頓挫しかねません。

 フランチャイザーとしての収益は加盟店の売上高や数に依存するため、加盟店オーナーが満足する収入を得られること、また、事業が利益を出して継続できることが重要になります。

図:フランチャイザーとフランチャイジー(加盟店)のビジネスモデル
(ビジネスモデルキャンバスを使用して筆者作成)



◆フランチャイズシステムに向く事業


 うまくいけば急成長できるフランチャイズシステムですが、フランチャイズに向く事業と向かない事業があります。そのためのチェックポイントを下記の5分野にまとめました。

①マーケット要件:事業の商品/サービスが消費者・購買者にとって魅力的であること。
 どの地域でも通用する事業であること。
 事業そのものが市場にとって魅力的か、どこでも通用する事業であれば、広い市場で加盟店を募ることができます。

②ビジネスモデル要件:そもそも利益率あるいは商品回転率の高い事業であること。
 フランチャイザーにイニシャルフィーやロイヤルティ、有料サービスなどの費用を支払っても加盟店に利益が残るような利益率の高い(あるいは商品回転率の高い)事業である必要があります。

③オペレーション要件:運営ノウハウなど標準化、技術移転性が高いこと。
 フランチャイザーのノウハウを加盟店にコピペ(Copy&Paste)できるかということです。難しいオペレーションや属人的な要素が多いと手間がかかる上、加盟店にとっても事業運営が難しくなります。

④成長要件:実証済みの事業であること。
 実現可能性を高めるためにフランチャイザーは自身で事業運営を行っていることが重要です。自身の事業運営で市場性や効率性を検証しビジネスフォーマットの元になります。

⑤経営者要件:事業に信念があり、加盟店をパートナーとして尊重できること。        
 フランチャイザーの経営者は、単純に儲けたいだけでなく、フランチャイズシステムを使ってオーナーとして志をもって事業に取り組み消費者の共感を得ること、加盟店を契約に基づくパートナーとして尊重し、共に成長する信念が重要です。


◆始めるには十分な準備を!


 事前準備として特に重要なことは、事業運営方法を効率化した上でのビジネスフォーマットの準備と、収益予想です。


①効率化とビジネスフォーマットの準備~まずは直営店から
 フランチャイズシステムはフランチャイザーと加盟店が契約に基づくパートナーとして共に事業を作り上げるシステムです。フランチャイザーはまず、直営店で実際に事業を運営し、業務の標準化・効率化等の実証実験を行います。フランチャイザーが集中して行う方が良いものは本部で行います。例えば、広告宣伝や仕入れ、会計システム等のシステム投資などが例として挙げられます。会計システムが出来ていれば、フランチャイザー本部が加盟店を監査する業務も効率化できます。
 業務を標準化・効率化した上でビジネスフォーマットを準備しておく必要があります。ビジネスフォーマットは確立された店舗モデル、収益計画や事業運営方法、効率化のためのツール、契約書類、商標権に係る契約書類などをいいます。また、加盟店への教育・トレーニングの準備も必要です。これらを準備し、加盟店が事業開始する際に手厚い導入支援や教育を行うことで、加盟店の事業リスクを軽減できます。
 また、加盟店が早く自立して経営できればフランチャイザー自身の支援に係る運営コストも軽減できます。

②収益予想
 事前準備や、フランチャイズビジネスの立ち上げ期で加盟店が十分集まらない中では本部としてのコストがかさみます。成長するにつれこれらの割合は低減しますが、成長スピードを事前に検証するためにも数か年計画で収益予想を行い、どの位のスピードで事業拡大できるかシミュレーションしておくことが重要です。


これら準備は大変そうに思えますが、失敗しないためにも、成長スピードを上げるためにも必要なことですので、専門家に相談することをお勧めします。

著者プロフィール

宮内 京子(認定支援機関 株式会社アキュリオ 代表取締役)

前職を含め20年の事業コンサルティングの知見/経験を活かした「儲かる仕組みづくり支援」として、経営/マーケティング戦略立案から売上向上と業務効率化、人材育成の支援や、経営革新等支援機関として事業計画や財務改善の支援など幅広く活動している。他に公的機関の専門相談員として経営支援/創業支援も行っている。(MBA/中小企業診断士)

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