バリ島の温かみと味わいを提供する「JATI Seijo」の新たなる挑戦
企業名:有限会社仁恵(店舗名:JATI Seijo) 取材先ご担当者様:代表取締役:須賀原愛氏
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長年の地元での歴史に加え、バリ料理を提供する他店にない試みも、コロナ禍の影響で思うように結果が出なくなった。テイクアウトやデリバリーのサービスに加え、深大寺にカフェとして出張するなど様々な施策を実施してきたが・・・
企業概要
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有限会社仁恵(代表取締役:須賀原愛氏)は、成城学園駅前で隠れ家風居酒屋「JATI Seijo」を営業している。1991年に須賀原氏の父が和風居酒屋として創業した後、須賀原氏が引き継いだ。その際、バリ島で培った経験と知識を活かし、日本での新たなる挑戦としてバリ島の雰囲気を楽しめる居酒屋とした。以降、先代より引き継いだ和食に加えてバリ島の温かみとエスニックな味わいを提供することに力を注いでいる。店名に含まれる「JATI」はインドネシア語で「チーク材」を意味し、強さと耐久性、使えば使うほど味が増すという「JATI Seijo」のイメージを象徴している。「JATISeijo」は、代表である須賀原氏と同氏の夫の2名、およびアルバイトスタッフで運営され、地域に根差した温かな接客とユニークな料理で、多くの常連客に愛され続けている。
企業の悩み
「JATI Seijo」が直面する経営の悩みは、コロナ禍における顧客減少に起因する。長年の地元での歴史に加え、バリ料理を提供する他店にない試みも、コロナ禍の影響で思うように結果が出なくなった。そこで、テイクアウトやデリバリーのサービスに加え、深大寺にカフェとして出張するなど様々な施策を実施し、経営を維持してきた。一方で、これからの店舗の進むべき方向性や集客の拡大についての悩みは深くなった。飲酒を伴う居酒屋利用ではなく食事目的で来店されるお客様もいらして、お通し代を請求するのも躊躇するような状態であった。須賀原氏は、「JATI Seijo」の存続と成長のためには何らかの経営改善が必要であると考え、その一歩を踏み出すために外部の専門家の支援を受けるべく、本プロジェクトを利用することにした。
導き出された課題
経営分析の結果、指摘された課題は、①店舗のコンセプトの明確化、②看板と照明の改善、③キラーコンテンツの展開の3 点である。
専門家からは、そもそも店舗のコンセプトが不明確で向かうべき方向性が定まっておらず、「JATI Seijo」が何のお店であるのかがわかりにくいという指摘を受けた。酒場であると伝わっていないことが、夜の営業で食堂と混同されることにもつながっている。
また、店内はたしかにバリ島の雰囲気が醸し出されているが、店外から見て飲食店とわかりにくいという指摘も受けた。店舗の看板はバリ島のテイストを採り入れて須賀原氏がデザインしたものであったが、飲食店であることは伝わりにくかった。店内の照明についても、店外から一目見て飲食店とわかるような演出が足りず、飲食店としての認知や店内への誘導を妨げていた。
さらには、顧客の関心を引きつけ記憶に残る特徴的なメニューやサービスを持っていないことも指摘された。店舗のコンセプトを明確にしたうえで、それに沿って「JATI Seijo」を象徴する独自のキラーコンテンツを開発することが必要とされた。
須賀原氏は、これらの課題に取り組むためにアシストコースを利用することにした。
提案された解決策
実行支援は、専門家からの助言をもとに改善を行い、その改善について専門家からフィードバックを受けるというプロセスを繰り返す形で行われた。
店舗コンセプトの明確化については、須賀原氏が経営者として何を大切にするのか、どのような価値を顧客に提供したいのかについて、専門家からの助言を参考にしながら検討したうえ、「バリ酒場」に決定した。バリ島の多様な文化を尊重し、それらを店舗の運営に取り入れることにより、店のイメージを顧客にわかりやすく伝えることが狙いである。その「バリ酒場」というコンセプトをホームページやメニューに掲載することにした。あわせて、新たにインドネシア人留学生を採用し、多様性のあるスタッフ構成にした。
飲食店としての認知度向上のうち、看板については、視認性を高め店の独自性を訴求する新しいデザインへの変更を検討することになった。店内の照明については、店外から飲食店として認知されやすくするため、ペンダントライトを設置するよう助言された。
次に、店舗のコンセプトに沿ったキラーコンテンツについても、専門家の助言を受けながら検討を進めた結果、「バリテバ」という新メニューを開発した。「バリテバ」はバリ料理そのものではなく、バリ料理のスパイシーなテイストを取り入れた料理である。バリ料理では鶏肉を使用する料理が一般的であるが、その鶏肉の中でも手頃で日本人にもなじみのある手羽先を使用している。バリ料理の伝統的な要素を取り入れつつ、日本の顧客に合わせたアレンジを施し、他店と差別化された魅力的な一品に仕上がった。辛くて美味しい味わいは、ビールとの相性も抜群である。
提案した中小企業支援施策
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その後の状況
本プロジェクトの支援を受け始めた2023年の5月頃から夏までは目立った変化は見られなかったが、その後は顕著な変化が現れてきた。「バリ酒場」というコンセプトにより店のイメージが伝わりやすくなり、来客数が増加し始めた(店側のコンセプトを理解した客層の来店が増えた)。さらに、キラーコンテンツである「バリテバ」の展開により、料理だけでなくビールの注文も増えるなど、徐々に効果が出てきた。
また、英語が堪能なインドネシア人留学生をスタッフとして採用することで、インバウンド対応が強化された。英語メニューの作成を通じて店舗の国際的な魅力を高めるだけでなく、インドネシア人スタッフの陽気な性格によって、地元の顧客にとっても新しい体験となり、店舗の活性化に大きく寄与している。
今では、昼は主婦層や会社員、夜は会社員やファミリー層を中心に、接客が忙しくなるほど来客数が増加しており、一連の取り組みが実を結びつつある。
なお、看板の作り直しと店内照明の改善については、今後補助金を活用して実施する予定である。
企業様の声
今回の支援での専門家からのアドバイスは非常に的確で、これまで気づかなかった店舗の潜在的な改善点に目を向けるきっかけとなりました。これらの支援により、店舗の改善や新しいキラーコンテンツの開発に取り組むことができ、サービスの質の向上と同時に顧客からの反応も良いものとなりました。今後の抱負としては、一生懸命に改善を行ったのでこれを無駄にはしないように、さらにメニューや店舗の改良を行っていくことです。長期的には10年後にバリ島に2号店を開設する計画があり、今回の支援を通じて得た経験を活かしながら、その目標に向けて地道に努力を続けていきたいと思います。
(代表取締役:須賀原愛氏)
支援者の声
これまで事業の運営の方針や方向性が曖昧なまま経営を続けてこられましたが、コロナ禍で事業や今後について考える時間が増え、これからの時代に合い、かつ無理のない経営をしていくための相談をしたいとのことでお申し込みをいただきました。中長期的な展望を見据えての事業計画策定支援の他、店舗誘導の改善やバリ酒場を打ち出すメニューの検討にも取り組み、徐々に成果につながってきています。思い描く将来像の実現のため、今回策定した事業計画書の実行を支援していきたいと考えております。
(東京商工会議所:椛澤悠斗氏)
企業情報
企業名 | 有限会社仁恵(店舗名:JATI Seijo) |
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代表者 | 代表取締役:須賀原愛氏 |
創業年 | 1991 |
業種 | 飲食業(居酒屋・インドネシア料理店) |
所在地 | 東京都世田谷区成城6-14-2 三輪ビル2F |
事業PR | |
URL | http://www.jatiseijo.com |
中小企業診断士 清水正久