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【製造業向け】適切な設備管理で事業の安定・成長を

設備管理をしっかりと実践していますか? 設備管理には設備寿命を延ばすなどの多くのメリットがあります。しかし、経営資源が限られる中小企業では、優先順位が低くなりがちです。今回は設備管理の基本を解説します。適切な設備管理に取り組み、事業の安定・成長を図りましょう。

(掲載日 2025/03/07)

大事な設備を長生きさせる! 設備管理の考え方

0. 設備管理、やっていますか?

小規模事業者を含む中小企業の経営において、設備管理は悩ましい業務です。効果的に実行するだけの余力やノウハウがなく、企業によっては十分に手をかけられていないこともあります。しかし、設備の適切な管理は、生産性の向上やコスト削減、品質維持に直結する重要な取り組みの一つです。


1. 設備管理の基本とは?

設備管理とは、企業が保有する機械や設備を効率的に稼働させ、最適な状態を維持するための活動を指します。その目的とメリットは以下の通りです。

・稼働率の向上
設備の故障を防ぎ、停止時間を最小化します。設備の稼働率が向上することで、生産活動をスムーズに進行できます。

・コストの最適化
過剰な修理や無駄な部品交換を防げます。また、故障の発生自体を抑えて設備の寿命を延ばします。それにより、メンテナンスや設備更新にかかるコストを抑えられます。

・品質の安定
設備の劣化が製品やサービスの品質低下につながることを防ぎます。安定した品質の製品やサービスを提供できるため、顧客からの信頼が高まります。

・安全性の確保
設備のトラブルによる労働災害を防止します。従業員の働きやすい環境を整備してモチベーションを維持・向上させることで、離職の防止や人材確保につながります。

これらを実現するには、日々の点検や計画的な保守が欠かせません。設備管理は手間のかかるものですが、直接的に売上と結び付けづらいため、生産活動や営業活動よりも優先度を下げられてしまうことがあります。しかし、設備管理は売上を生み出すための大切な支えである、ということは改めて認識する必要があります。

不測の事態を防ぐには設備管理が欠かせません



2. 中小企業における設備管理の課題

中小企業特有の設備管理の課題として、以下が挙げられます。

・リソース不足
中小企業では、専門の設備管理担当者や十分な予算が確保されていないことが多いです。そのため、設備管理が後回しになりがちです。設備管理を行うためのノウハウ自体が不足していることも要因の一つです。

・計画性の欠如
突発的な設備の故障に対応するだけで、長期的な保守計画を立てられていない企業が多く見受けられます。事後対応の場合、生産活動や納期管理に与える影響が大きくなります。設備の稼働停止が長引くと、顧客との信頼関係を損ねることにもつながります。

・教育・訓練不足
設備の正しい使い方や保守方法を従業員に浸透できていないケースがあります。また、特殊な設備が特定の従業員にしか扱えない、という共有の問題もあります。

中小企業においては、こうした課題をいつまでもそのままにしておくと、事業へ与える影響が徐々に大きくなります。常日頃から危機意識を持ち、少しずつ取り組みを行えば状況の改善は可能です。そのためには、次に示す具体的な方法を実践していくことが重要です。


3. 効果的な設備管理の実践方法

中小企業が効果的な設備管理を実現するためには、どのような取り組みが必要でしょうか。


(1)日常点検の徹底

設備の不具合は、日常点検で早期発見することが肝要です。大きな異常を起こす前に適切な対処をとれれば、生産活動への影響を最小限に抑えることができます。

点検内容には以下のような例が挙げられます。

・動作音や振動の異常を確認する。
・ボルトやナットの緩みをチェックする。
・配管やホースの漏れや劣化を点検する。
・消耗品(フィルターやベルトなど)の状態を確認する。

まずは自社で取り組める簡単なチェックリストを作ると良いでしょう。必要に応じて徐々に点検項目を増やしていきます。初めからしっかり作りこむよりも、継続することが大事です。この点検が日々の業務に組み込まれることで、未然にトラブルを防ぐ仕組みができあがります。

日常点検を効果的に進めるためには、点検結果を記録し、共有する仕組みが必要です。例えば、点検内容をデータベース化することで、過去の履歴と比較しやすくなります。データベースといっても、特別なシステムは不要です。紙ベースの記録であればスキャンしてPDF化しておく、データを同じ場所に保管して誰でも確認できるようにしておく、データをバックアップしておく、といったことから進めていきます。

日常点検の注意点としては、形だけのチェックリストにしないことです。単に記録をつけるだけで、実は点検を行っていない、ということがあります。これでは手間が増えただけで意味がありません。この解決策の一つとしては、「(4)従業員教育の強化」を参照ください。

チェックリストを用いた点検が有効です



(2)設備台帳の作成

設備台帳とは、設備ごとの情報をまとめた記録です。台帳には以下のような情報を記載します。

・設備名、型式
・導入日、廃棄日(売却含む)
・メーカー名、販売業者名
・管理担当者名
・メンテナンス履歴、故障履歴
・次回点検や保守の予定

設備台帳を活用することで、保守スケジュールの管理が容易になり、突発的なトラブルを未然に防ぐことができます。また、記録を取ることで、設備をどの程度使用すると故障やトラブルが増えていくか予測しやすくなり、適切なメンテナンスや更新の計画を立てることも可能になります。


(3)計画的な保守(予防保全)

突発的な故障を防ぐためには、計画的な保守が欠かせません。例えば、以下のような保守プログラムを設けると良いでしょう。

・実施時期(3か月おき、1年おきなど)
・設備の使用時間や稼働回数
・交換部品の予備在庫管理
・実施担当者
・実施期限


(4)従業員教育の強化

設備管理は担当者だけでなく、現場の全従業員がかかわるべき活動です。基本的な設備操作や点検方法の教育を定期的に行うことで、設備の不具合を未然に防ぐ意識が広がります。また、簡単なトラブルシューティング(不具合の把握、問題の原因特定、修理や部品交換など解決方法の検討、処置とその後の経過観察、といった一連の流れ)を学ぶことで、現場で迅速に対応できる能力が養われます。

設備管理がうまくいかない理由の一つとして、従業員教育が不足していることが挙げられます。仕組み化して設備管理の体制を作ったとしても、実行に移す「ヒト」の意識が低いと設備管理は正常に機能しません。設備管理を社内に根付かせるためには、繰り返しの意識付けが重要になります。

経営者や経営層による支援も必要です。設備管理担当者に丸投げでは設備管理はうまくいきません。必要な権限の付与、人的・物的支援、経営トップによる社内の意識改革がなければ、十分な設備管理体制を築くことは困難になるでしょう。

従業員への教育が設備管理の効果を促進します



4. まとめ

中小企業における設備管理は、単なるコストではなく、事業の安定と成長を支える大切な取り組みです。人材や予算が限られるなかでも、日常点検や設備台帳の作成、計画的な保守など、小さな取り組みを積み重ねることで大きな効果を得ることができます。

その前提として、従業員教育を組み合わせることで、効果的な管理が可能となります。設備管理の重要性を再認識し、ぜひ自社の現状を見直してみてください。設備管理を通じて生産体制を強化し、安定した事業活動を目指しましょう。

著者プロフィール

石川 慶成(石川経営事務所 代表)

中小企業診断士。町工場の工場運営に従事。品質管理、生産管理、工程設計、購買業務などの管理業務と並行して、生産オペレータ、設備管理、品質改善などの現場業務に携わる。改善活動や標準化による生産性向上を得意とし、現場目線からの支援を実施している。

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