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発達障害のお子さんやご家族が安心して暮らせる環境作りに貢献したい

企業名:株式会社tobiraco  取材先ご担当者様:平野佳代子氏

「売れ筋の見える化」による販売強化で夢の実現へ前進

創業からこれまで、堅調に事業を展開してきたが、直近では売上の伸びが鈍化していた。その打開策として、商品が海外関係者から好評であったことから、平野氏は海外展開を考えるようになった。しかし、具体策をどう描けばよいか・・・

企業概要

「子どもが扉を開けて新しい世界に行く。そのための道具、環境を提供したい」
「tobiraco(トビラコ)」という社名には、そんな平野社長の思いが込められている。
株式会社tobiraco(代表取締役:平野佳代子氏)は発達障害の子ども、そのご家族や支援者に役立つ教材を販売している。主にコミュニケーションを育むカードゲームやボードに加え、姿勢を保持しやすい椅子や、子どもがリラックスできるアロマなど、様々なニーズに応える商品をECサイトで販売している。
平野氏は長年、出版業界で教育雑誌の編集に携わってきた。ある時、取材で訪れた特別支援学校での教師との出会いが、創業のきっかけとなる。様々な教材を考案し、手作りの道具で子どもたちを支援する教師の取り組みに、平野氏は深い感銘を受けた。2016年、tobiraco を創業し、発達障害の子どもたちの安心した暮らしや成長を支援する教材の販売を手がけることになった。

企業の悩み

創業当時、まだ「発達障害」という言葉は今日ほど一般的ではなかったため、その教材などは、あまり存在していなかった。そうした中、使いやすくデザインされた当社の教材は珍しく、度々メディアで注目を浴びた。なかでもNHKの情報番組で、自身も発達障害である芸能タレントが、当社のカードゲームを取り上げたところ、注文が殺到した時期もあった。今でもカードゲームは売上の大きな割合を占めている。
そうした創業期を経た当社の課題は「売上の拡大」であった。創業からこれまで、堅調に事業を展開してきたが、直近では売上の伸びが鈍化していた。その打開策として、商品が海外関係者から好評であったことから、平野氏は海外展開を考えるようになった。しかし、日々の運営に追われる中で、具体策をどう描くかわからず思い悩んでいた。
このような状況の中、日頃から懇意であった東京商工会議所から、専門家の支援を受けられる本プロジェクトを紹介され、2022年の夏、経営分析を申し込むに至った。

導き出された課題

経営分析では、現状のヒアリングや状況の確認が行われた。海外展開を指向する平野氏に対し、専門家からは「まずは国内販売を盤石にすること」をアドバイスされた。「tobiraco の商品をもっと多くの人に使ってもらいたいという、情熱や夢を受け止めたうえでの、冷静な提案でした」と平野氏は当時を振り返る。平野氏の「思い」を実現するには、足元の課題解決を優先するとともに、具体的な事業計画の立案が必要であった。
経営分析の結果、課題とされたのは、まず「卸価格の低減」であった。当社はECサイトで主に個人向けに販売しているが、今後の飛躍には法人向けの卸販売は避けて通れない。法人が取り扱いやすい適切な卸価格を実現するために「仕入れロット数の増加によるコストダウン」という道筋が導き出された。
また、当社はオリジナル商品に加え、品揃えに必要な仕入れ商品など、多種多様な商品を扱っていた。その結果、商品バリエーションは豊富であった一方で、在庫管理の手間も増加しており、「販売に見合った在庫の管理」が必要となっていた。そのため、どの商品がどれだけ売れているのかを把握できる「売れ筋の見える化」も課題とされた。
課題も明確となったことで「売れ筋を把握し、販売を強化することで売上を拡大する。その拡大による卸価格の低減で、法人販路を開拓し、さらなる成長を図る」という大きな事業戦略を描くに至った。
そして平野氏は事業計画を実現するために、具体策の立案と実行について支援が必要と考え、本プロジェクトのアドバンスコースを利用することとなった。

提案された解決策

アドバンスコースを利用して、専門家から具体的な指導を受けながら課題解決に向けて取り組んだ。
まずは「売れ筋の見える化」による商品の統廃合である。販売数と利益率から商品をA~Cにランク付けし、見える化を行った。そこで明らかとなったのはオリジナル商品の強さであった。オリジナル商品は、特別支援学校の教師の手作り教材で実際に効果のあったものを商品化しており、専門の書籍等で取り上げられるほど評判であった。専門家はその強みをさらに高めるため、複数のカードゲームをひとまとめとした「コミュニケーションゲーム」というジャンル化を提言し、現在、訴求方法について検討を進めている。一方、販売のふるわない商品は廃盤を決め、売り切りを図り、これまで商品全体で約1割の統廃合を行っている。
また売れ筋商品の認知度向上や売上拡大など、販売促進機能を強化するために、ホームページの刷新にも取り組んでいる。ホームページのページビューや、商品検索のしやすさ、説明のわかりやすさは売上に直結する。そこで、デザインや見せ方を工夫した「誰もが入りやすく、より購入しやすいサイト」への進化を図っている。加えて、これまで発信してきた200を超えるメルマガや記事をホームページに載せ、情報発信も強化している。商品の購入だけでなく、必要な情報が手に入る有益なホームページとすることで、発達障害を抱えるご家族や支援者へ貢献することを目指し、現在、リニューアルに向けてエンジニアと協議を重ねている。

提案した中小企業支援施策

その後の状況

商品展開の方向性が明確になり、法人販売を強く意識するようになった平野氏は、法人向け決済の導入や、専用窓口の開設を準備中である。また発達障害の子どもに関連した書籍を上梓し、出版社と連携した販促活動による商品との相乗効果を図るなど、様々な形で具体的
な一歩を踏み出し始めている。
これまでインターネット販売を展開してきた当社だが、お客様との信頼を重視する平野氏はリアル店舗の開設も視野に入れている。当社には「商品を購入する前に現物を確認したい」というお客様がしばしば来社するため、実際の商品を手に取ったり、試したりする場の必要性を強く感じている。また、アロマセラピーなど各種セミナーや勉強会もリアル店舗で開催し、直接のコミュニケーションを通じた支援や、啓蒙活動も強く押し進めたいと将来を構想する。

企業様の声

創業より今日までご支援いただいている、東京商工会議所を心から信頼しています。また、専門家から、目の前の課題や進む道を客観的にアドバイスいただいたのは、とても大きな手助けとなりました。最初は「安心してください。大丈夫ですよ」と励まされ、徐々に慣れてくると、課題や数字について具体的に相談できるようになりました。今振り返ると、とてもバランスよくご指導いただいたと思います。これまでは「思い」が先行していましたが、具体的な課題の相談を通じて、経営者として注力すべきことを意識するようになり、着実な事業展開を考えられるようになりました。
(代表取締役:平野佳代子氏)

支援者の声

平野社長はご自分の経験や人脈をうまく活用されながら、ご商売をスタートすることができましたが、価格設定や在庫管理など、今まで経験したことのない業務・分野で悩みを抱えられておられました。中小企業のリソースは限られていますので、外部に任せるべきことと、社長自身が取り組まなければならないことを切り分けてあげることが必要です。
リアル店舗の開設という夢の実現に向け、まずは更なる販路開拓の強化を図るべく、継続した支援をしていきたいと考えております。
(東京商工会議所:黒田直幹氏)

企業情報

企業名 株式会社tobiraco
代表者 代表取締役:平野佳代子氏
創業年 2016
業種 製造業・卸売業(特別支援教育の教材販売)
所在地 東京都大田区東雪谷1-12-1 Maison15 203
事業PR
URL https://tobiraco.co.jp/


中小企業診断士 増田利弘

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