顧客ごとのニーズを的確に把握し、商品やサービス提供の仕方を工夫している
顧客ニーズに基づく市場セグメント
質的な豊かさが強く志向される21世紀の消費の特徴は、「多様性」や「異質性」です。「消費の多様化」や「顧客の多様化」というフレーズは、現代の消費者を語る文章において、枕詞のように出てきます。
多様化と一言でいっても、そのパターンも以下のようにさまざまです。
- 十人十色: 顧客ごとにニーズは異なる
- 一人十色: ひとりの顧客でも時と場合によってニーズは変化する
- 時間的多様化: 時間が経過するとニーズが変化していく など
顧客のニーズが多様化するなか、企業は市場(顧客)をひとつの塊として捉えるのではなく、何らかの基準でいくつかに分割することが必要です。このことを「市場細分化(マーケット・セグメンテーション)」と呼びます。また、分割された市場を「市場セグメント」と呼びます。
マーケティング活動は、セグメンテーションとターゲティングから
市場選択の仕方は、大きく分けると以下の4つのパターンがあります。
- (市場を細分化せず)市場全体を対象とする。
- 市場を細分化し、そのいずれもターゲットとする。
- 細分化された市場のなかから、ひとつ、もしくは少数のセグメントを選択し、それを対象とする。
- 個々の顧客に個別に対応する(「one to oneマーケティング」と呼ばれます)。
大企業と比べ経営資源が限られる多くの中小企業にとっては、すべての市場のニーズを満たすことは困難でしょう。従って、中小企業にとっては、上記の3. と4.の併用パターンが有効だと考えられます。具体的には、自社が有している資源を最も効果的・効率的に投入できる特定の市場セグメントを選び、そこを標的としてマーケティングを展開していくことが重要です。
そのうえで、選択した市場セグメント内における、個々の顧客の特性やニーズにきめ細かく対応したマーケティング活動(one to oneマーケティング)を行うことが大切です。そのためには、顧客データベースの整備など、IT(情報技術)を生かして、一人ひとり(一社一社)の顧客の管理を行うことが重要です。
下の表は、市場細分化の基準の例です。自社に最適な市場細分化の基準を選択し、市場セグメントごとにマーケティング計画をつくりましょう。
Case Study
ニッチも積もれば山となる
A社の事業はニッチな商売ばかりなので、割に合わないと思われがちだ。しかし、市場が狭いためにそのなかで認知されると物が一人歩きで売れていくという。化粧品用の接着剤は宣伝していなくても、今でもずっと売れ続けている。
ニッチであっても、同社は中小企業なので余計な経費がかからず利益を出せる市場となる。細かい注文をする顧客が多いので、対応が面倒と思われがちなところもある。しかし、他人と同じことをやらない、他人が避けることをやるのが同社のモットーだ。
(化学工業薬品製造・84人)
Step Up
自社にとって重要な顧客を特定し、さらに親密な関係になるよう注力している
一般的に、企業の収益の8割は2割の顧客からもたらされるといわれています。上位2割の顧客は、高い物を買ってくれる、しかも、よく買いに来てくれる「優良顧客」です。
逆に、顧客のなかには、売上や利益にほとんど貢献しない「非優良顧客」も存在します。価格の安さだけを求めて、企業から企業へと頻繁に移動するタイプの顧客です。
中小企業にとっては、「優良顧客」を重視した経営を行うことが重要です。この層を、販促費をかけ囲い込むのです。そのためには、「顧客データベース」などを活用し、顧客の分類(例えば、「現在の優良顧客」「将来的な優良顧客」「非優良顧客」といった分類)を行うことが必要です。