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資金繰り表を作成して、お金に困らない経営を実現しよう!

決算書などで損益は把握していても、お金の動きは損益の動きと一致しません。利益がでていても、資金繰りがひっ迫し、倒産することだってあります。なぜ資金繰り管理が必要なのか、資金繰り表の作成方法とポイント、作成によってもたらされる効果についてお伝えします。

(掲載日 2021/02/03)

資金繰り表の必要性・効果と作り方

【はじめに】


 「資金繰り」と言うと、どういうイメージをお持ちでしょうか? 必要な資金を金策でやり繰りする、ひっ迫した状況をイメージする方も多いかもしれません。今回お話する「資金繰り」とは、「事業を継続するために今後資金がどれだけ必要なのかを把握しておき、必要に応じて対策を講じること」です。
 難しそうに聞こえるかもしれませんが、今後のお金の動きを把握するために、あらかじめ会社の「資金繰り表」(家庭に置き換えると「家計簿」の未来予想版)を作って管理しましょうということです。

 例えば、月次の「資金繰り」とはどういうものか、簡単に言うと、今月から数か月後まで月単位でどれだけの現金収入(売上)があり、どれだけの現金支出(経費、借入返済など)があるのかをシミュレーションし、結果として数か月後の手元現預金残高はどのような状況になっているのかを予測して一覧表にしておくことです。

 この「資金繰り」管理は、決してひっ迫した状況だけではなく、どんな事業者の方にも普段から行ってほしいことなのです。

【どうして資金繰り表が必要なのか】


 毎月収入が一定で、仕入や経費などの支出も変動しない、というビジネスはほぼ存在しません。だとすると、収入と支出のバランスは一定ではなく、資金不足が生じるリスクは常にどの事業者にも潜んでいると言えます。
 それではどういう時に資金不足が生じる可能性があるのでしょうか? 売上の減少や代金回収の遅延、取引条件の変更、在庫の増加、売上(事業)の急拡大、過剰な設備投資による拡大路線の際などが考えられます。そのほかにも、取引先の倒産や新型コロナウイルスによる影響などの外的要因も考えられます。



【黒字でも倒産する可能性がある】


 経営者の多くは、「売上」や「利益」への関心は高いものの、「現金の有り高」については意識が低くなりがちです。もちろん、利益を出すことは重要です。しかし、実際にはお金の動きと損益の動きは一致しないため、損益の状況に加えて、資金の状況も把握していないと非常に危険なのです
 赤字でも現金さえ潤沢にあれば倒産することはありません。しかし、利益が出ていても現金がないと支払いが滞り倒産してしまいます。例えば売上が増加局面にある場合、資金繰りがひっ迫することがあります。それは、売上に先行して仕入や人件費など諸経費の支払いが必要となり、それらの経費は売上の増加に伴って増えるケースが多いからです。
 実際に黒字倒産や、増収局面での倒産は想像以上に多いのが実情です((株)東京商工リサーチ公表の2019年データ*によると、倒産企業の47.2%が黒字企業。また倒産企業の42.8%が前期比増収企業)。
* https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200416_01.html

【借入を検討する際は必ず作成してほしい】


 金融機関から借入を行う際にもこの「資金繰り」表を根拠として、あらかじめ借入必要額を算定することをおすすめします。金融機関は融資審査において、財務内容と同様、実はこの「資金繰り」を非常に重視しているのです。また、借入申込の際に「資金繰り表」を準備すると、しっかり管理できている事業者として金融機関からの評価も上がりますし、交渉もよりスムーズに進みます。

 よくあるケースとして、融資の必要性があるものの、いくら借りたらいいのかよくわからず、感覚的に調達金額を決めて借入したというケースがあります。
 その後どういったことが起こるでしょうか?
 ①数か月後に再び資金不足に陥り、追加融資が必要となる、
 ②借り過ぎによって不必要な資金流出をしてしまう、
などが想定されます。
 特に①の場合、再度資金調達の必要性が生じますが、金融機関はこのようなケースを非常に敬遠しますし、借入を断られる可能性も高くなります。リスケジュール(リスケ)といって返済猶予(返済条件緩和)の選択肢を選ばざるを得なくなることにもなりかねません。

 このような事態を防ぐために「資金繰り表」を作成して、借入必要額を適正に見積もることは非常に重要なのです。




【資金繰り表のつくり方】


 ポイントは、まず簡略版をつくってみる、ということです。Excelシートでの作成をおすすめしますが、不得意な方はインターネットで検索するとたくさんのひな形がありますので、ダウンロードした上で、自身が入力しやすいようにアレンジしていくというのもお勧めです。(参考)日本政策金融公庫のホームページのひな形https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/data1_170501.xls (下図)

ここからは作成手順です。


まず過去の実績をベースにそれぞれの数値を考えていきます。月次残高試算表などから毎月の売上や経費の金額を把握できるので、これをベースに今後の増減要因を加味して数字を入力していきます。
※月次残高試算表がない場合は、通帳や帳簿など資金移動がわかるものを準備すれば、十分作成できます。


売上予測に、仕入および在庫予測、経費予測、借入返済予定を加えれば、簡易版の作成は十分にできます。これに取引先ごとの決済条件を加えていくとより確度の高い資金繰り表となります。取引先数が多く、取引条件がそれぞれ違う場合、計算が煩雑となる可能性があります。まずは主要取引先の取引条件をベースに作成する、もしくは最も悪い条件をベースに作成すれば、保守的な簡易版の作成が可能となります。


次に考慮したいのは(A)季節要因と(B)不定期の支出です。(A)売上や仕入に季節要因があるビジネスは少なくありません。過去の実績に応じて加味していきましょう。また(B)不定期の支払いとは、税金や賞与など毎月経常的に発生しない経費の支払いです。これらが資金繰りに大きな影響を及ぼすことがあるので注意しましょう。


資金繰り表を作成するうえで一番予想が難しいのが、売上です。
そこで提案させていただきたいのは、何パターンか作成してみるということです。例えば、(A)妥当シナリオ(現状の売上状況に合わせて現実的に見積もったパターン)、(B)楽観的シナリオ(営業努力などにより売上が回復、増加するパターン)、(C)最悪シナリオなどです。はじめから完璧なものは求めず、都度見直しや修正を加えていく、というスタンスで取り組んでみてください。


作成後は、毎月実績を確認するとともに、今後の予測については都度更新していきます


 上記の簡易版が完成したら、必要に応じて詳細版や日繰り表の作成を検討してみましょう。どこまで詳細に作成するのかは状況によります。置かれた状況、費用対効果を考慮して検討していきましょう。



【資金繰り表の効果】


 資金繰りをしっかりしている企業が急に倒れることがあるでしょうか? 資金繰り表を作成する最大の効果は、早期に状況を把握することで、早めの対策を講じることができることです。近い将来厳しい状況に陥ることがわかれば、何らかの手を打つ必要があります。収入を増やす方法としては具体的に、売上を増やす、売上債権を早期回収する、資金調達を行う、利用可能な助成金、補助金の活用を行う、必要性が低い資産を売却する、などです。逆に、支出を減らすには支払額そのものを減らす、支払い時期を繰り延べてもらう、などの方法が考えられます。いずれにしても、資金ショートまでの時期が切迫してしまうと選択肢が減ることになりますので、資金繰り表を作成する意義は非常に高いのです。

【最後に】


 いかがでしたでしょうか?
 始めは少しだけ手間がかかるかもしれません。しかし、先行きが不透明なこの時代だからこそ始めてみてはいかがでしょうか。自社の未来を守るため、一歩踏み出してみませんか。

著者プロフィール

丸田 佐和子(丸田コンサルティングオフィス代表)

中小企業診断士/認定経営革新等支援機関/事業承継士
地方銀行勤務時代には延べ1,000件を超える融資案件に携わり、資金調達(融資や補助金)の支援、事業計画策定を得意としている。独立開業後は経営相談、ビジネスプラン作成、資金繰り支援などの他、地域活性化支援を中心に活動している。

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