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パンも人材も手作り。従業員の士気向上で再度成長軌道へ

企業名:株式会社アンテンドゥ  取材先ご担当者様:代表取締役社長:井戸大通氏

KPIマネジメントで従業員の意識・行動改革を促進

コロナ禍は沈静化しつつあったが、売上の回復は十分でなく、営業赤字が続いていた。計画未達は仕方がないという雰囲気が現場の店舗を中心に残っており、様々なアプローチを試みるも、従業員の士気が回復しない・・・

企業概要

株式会社アンテンドゥ(代表取締役社長:井戸大通氏)は、ベーカリーショップ「パン工房アンテンドゥ」およびベーカリーカフェ、洋菓子店「セゾンココ」、サンドイッチ店「シェフズプレス」を、東京都および神奈川県に22 店展開している。
石の保持する熱による遠赤効果でパンの中からじっくりと火が通ることで、ふっくらした仕上がりと小麦の甘味や香りを引き出す石窯製法が特徴である。現代表の父である創業者・井戸勤氏が生み出した食パンは、全国パン菓子博覧会において食パン日本一に輝くとともに「高松宮王冠賞」を受賞、「石焼食パン」として現在も受け継がれている。
「焼きたての感動を食卓に」をコンセプトに掲げ、石窯オーブンをお客さんからみて一番目立つ位置に配置し、焼きたての商品が即座に出てくるこだわりのスタイルを貫く。
また、「パンも人材も手作り」をモットーに、ホスピタリティ研修等の従業員教育にも注力している。

企業の悩み

2020年からのコロナ禍により、駅前立地の店舗を中心に客数が激減したことで売上不振に陥り、いくつかの店舗の閉鎖を余儀なくされた。まん延防止等重点措置の対策で、パンを一度冷ましてから袋詰めして提供するスタイルに変更せざるを得なくなり、強みである焼きたて状態での売り込みができなくなった。また、緊急事態宣言が繰り返されるたびに、現場の従業員は感染症対策等の様々な対応に追われ、モチベーションを維持することが困難になっていった。
2023年にはコロナ禍は沈静化しつつあったが、売上の回復は十分でなく、営業赤字が続いていた。計画未達は仕方がないという雰囲気が現場の店舗を中心に残っており、井戸氏は様々なアプローチを試みるも、従業員の士気が回復しないことに悩んでいた。
そんな中、付き合いのある金融機関から、専門家による経営支援を受けられる本プロジェクトを活用してはどうかと紹介があり、利用することにした。

導き出された課題

経営分析の結果、指摘された課題は、①売上拡大に向けた具体的な取組事項の洗い出し、②生産性向上に向けた成功要因の洗い出し、③人材採用の促進の3点であった。
特に、①売上拡大や②生産性向上は、店長や現場リーダーの力量に依存しており、店舗間のばらつきが生じていた。経営改善のためには、優秀店舗のノウハウの水平展開や従業員教育の仕組み化等を通じて、従業員の意識および行動を改革することが必要とされた。
井戸氏はこれらの解決のため、本プロジェクトのアドバンスコースを利用することにした。

提案された解決策

アドバンスコースでは、専門家から具体的なアドバイスを受けながら取り組んだ。特に、各店舗の置かれている状況が違うために各店での裁量に任せる部分が多かったが、それが店舗間のばらつきを生んでいたことを感じた井戸氏は、本部統一での対策や管理が重要だとの結論に至った。そこで、売上拡大や生産性向上につながるKPIマネジメントを導入し、全店舗統一の指標での管理を徹底することにした。
例えば、「イチオシオリンピック」と名付けた指標がある。毎月会社が決めた商品の売上を競うものである。従来も近しいことをやっていたが、専門家のアドバイスにより毎週集計してランキング形式で発表することにした。自店舗のランク付けや立ち位置が示されることで店舗間での競争意識を芽生えさせた。上位店舗には、社長自ら表彰を行った。
アフターコロナ期で売上が前年を超えることは普通であったが、それで満足するものではなく、優秀店舗と比較させることで、そのギャップを販売を伸ばす余地として可視化し、全体を引き上げることを狙った。
また、「店舗焼成率」という指標もある。焼きたて販売が強みであったが、客数減で焼いても売れ残る状況があり、ロスを気にして焼成に消極的な店舗も多かった。しかし、お客様は焼きたてを好まれる。セントラル工場から納品されるパンもあるが、売れ筋のパンは自店舗で焼き上げ、それをしっかり売り切ることを奨励した。
加えて、毎月の店長等が集まるZoom会議で、各店舗と経営陣のやりとりを全員が聞けるような会議スタイルを取り入れた。KPI達成店舗の店長やリーダーがどのようなやり方をしていたのか、そのエッセンスを全員で共有することで、各店舗の成長につなげた。

その後の状況

井戸氏は、KPIマネジメントにより、現場の意識や言動が前向きに変わってきたことを感じている。従来は売上を中心に追いかけて、現場からはできない理由を述べられることが多かった。しかしもう一歩踏み込んで、事業計画で掲げる売上の達成に必要な指標を明示して、それを追いかけることで、各店舗でのやるべきことが明確になり、従業員のモチベーションを高めることにつながった。重点商品の陳列ボリュームアップや積極的な店内焼成により、店内に焼きたての商品があふれ、お客様の喜ぶ姿が増えることで、従業員も意気に感じてますます力が入るという相乗効果が生まれた。
その結果、売上は前年と比べて約1億円上がり、利益も回復した。今後は既存店を引き続きしっかり伸ばしながら、店舗数を再び増やし、再度成長軌道にのせたいと考えている。

企業様の声

本プロジェクトを通じて、売上回復と経常黒字化につなげることができました。特に、専門家との話し合いを行う中で、どうしたら現場が動くのか、頭の整理をすることができたのが良かったと思います。KPIを設定し、PDCA を回していくことで、現場の意識と行動の変革を促せました。今後は、コロナ禍以後に採用した人材も増えていますので、職人の技術力向上や販売スタッフの採用・育成強化等、人材投資にさらに力を入れていき、パンも人も手作りの、地域密着のベーカリーショップとして、さらなる成長を目指していきます。
(代表取締役社長:井戸大通氏)

支援者の声

前年度はアシストコースで事業計画書を作成し、今年度は実行支援としてアドバンスコースをお申込みいただきました。店舗の売上回復に向け、社長自身が計画されていた数値計画に加え、事業計画書を作成することで、目的と手段が明確になり実行策として具体化されました。これまでできていなかった現場への実行策の落とし込みをすることで、従業員のモチベーションアップに繋がり、徐々に売上を回復しております。
社長と現場の皆様の熱心な取り組みにより、ますますご発展されますことを祈念しております。
(東京商工会議所:新井捺紀氏)

企業情報

企業名 株式会社アンテンドゥ
代表者 代表取締役社長:井戸大通氏
創業年 1985
業種 小売業(パン・洋菓子の製造・販売)
所在地 東京都練馬区北町5-11-14
事業PR
URL http://www.antendo.com/


中小企業診断士 矢野達也

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