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「キャリア」を意識した経営で組織力向上を

経営者の方々は、ご自身や従事者のキャリアを意識した経営ができているでしょうか。人材の多様性への対応が求められる現代において、キャリアについて考えることはたいへん重要です。それでは、どのようにキャリアを見つめればよいでしょうか。そのポイントを紹介します。

(掲載日 2025/02/19)

皆で一緒に考える「あなたのキャリア、私のキャリア」

1. 現在の時代背景

キャリアについての議論が重要になった時代背景を見ていきましょう。

①人生100年時代

男性の平均寿命81.09歳は、女性の平均寿命87.14歳です(令和5年簡易生命表、厚生労働省)。70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とする「改正高年齢者雇用安定法」が2021年4月1日に施行されました。


②少子高齢化社会

少子化という面では、2023年の合計特殊出生率*1は1.20で前年の1.26より低下し、過去最低となりました(東京都は0.99でした)。

また、高齢化という面では、2023年9月15日時点の日本の65歳以上の人口割合は29.3%でした(統計トピックス No.142「統計からみた我が国の高齢者」、総務省統計局)。

65歳以上の人口が、全人口に対して
・7%を超えると「高齢化社会」
・14%を超えると「高齢社会」
・21%を超えると「超高齢社会」
と呼ばれます。つまり日本は、現在「少子化超高齢社会」なのです。

*1…合計特殊出生率:その年次の15歳~49歳までの女性の年齢別出生率を合計(出生力)。総人口を維持するためには、合計特殊出生率(以下、出生率)が少なくとも2.07を維持することが必要です。


③生産年齢人口

生産年齢人口(15歳~64歳)も1995年をピークに減少してきています。

そのため、労働力の不足、国内需要の減少による経済規模の縮小など様々な社会的・経済的課題の深刻化が懸念されています。

少なくなってきた労働力を確保するために、「人材の多様性」の対応が必須となってきます。


2.今こそ、「キャリア」について考えてみよう

さて、突然ですが「キャリア」とは一体何なのでしょうか。

「○○省のキャリア官僚」、いまは死語ですが「キャリアウーマン」、はたまた「あの人はすごいキャリアの持ち主だねぇ」と、キャリアと聞くと「仕事ができる人」というイメージをお持ちの方も少ないないかもしれません。

実は、キャリアとは「過去からの経験」を「未来への挑戦」へ導くためのキーワードです。

時代の変化で変わることもあれば、普遍なこともあります。VUCA*2の時代と呼ばれて久しく経ちますが、従事者*3の過去からの経験の棚卸(キャリア形成)を通じて、従事者のモチベーションアップにつながる策について一緒に考えてみましょう。

*2…VUCA:Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)
*3…自社で働く人物は必ずしも自社のリソースではなく、派遣社員、委託契約などのケースがあるため、従事者と表現します


3.そもそも「キャリア」とは

まず、「キャリア」の正体からお話ししましょう。英語表記では「career」で、「carry」(運ぶ)の派生語です。キャリアの語源は、「轍(わだち)」となります。轍とは、もともとは馬車が通ることによりできた「くぼんだ場所」です。

それがなぜ、仕事につながるのかというと、「後ろから前に続くもの」、転じて「過去から未来へつながるもの」だからです。そもそも、キャリアは「仕事」だけではなく、「生涯経験」を指します。


4.経験は自分の証であり、拠り所である

経験は積みあがるものであり、下がるものではありません。中には「あの人この間、降格してたから、“キャリアダウン“だってあるじゃないか?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。それは、「降格したというキャリア」が増えたのです。その経験を通じて、得る価値観が増えたのです。酸いも甘いも、経験です。つらい経験があるから、甘い時により甘く感じられる。また、この「つらい経験」をどのようすれば、甘く変えることができるか。

それだけでなく、「酸い」を経験するから、他の人の酸いも想像できる。寄り添うことができるのです。

そのため、一見ネガティブに見える経験も、長い目でみることで、ポジティブに変えることができます。まずは、一度ふり返ってみて自分で「私(経営者)のキャリア」も褒めてあげてください。成功体験はもちろんのこと、失敗から学ぶこともあります。それは意思決定する際にも効果が発揮されます。

キャリアのふり返りが明るい未来への“第一歩”になります



5.多様性の活用方法

前出のとおり、キャリアの語源は馬車が通った後です。そういう意味では馬車とは縁があります。

馬車は英語で「コーチ(coach)もしくはキャリッジ(carriage)」です。前者は他のシーンでも聞いたことはあると思います。スポーツなどにおける指導者です。指導という意味ではティーチもあります、ではティーチとコーチの違いは何でしょうか。

ティーチは、まずやってみせてから、それを真似させていくことです(=学ぶ)。

一方、コーチは、その人が行きたい未来やなりたい自分(目的地)を聴き、一緒に行き方を考えて、最後は独力で行かせることです(=気づき)。

つまり、「こうなれよ」ではなく、「こうやって見たらどうかな→うまくできたね、次はどうすればいいと思う?」と相手の気づきを促す力です。

従事者(あなた)が、自らの力を最大限に発揮するためには、自分の力だけではなく、周囲の力も必要です。

つまり、「あなた(従事者)がそのキャリア」を職場で活用してもらうために、周囲ができることとは
①人間関係の構築
②自信や興味を持てない場合のフォロー
③成果や報酬の付与
が挙げられます。

①は相性もありますので、残念ながら正解はありません。しかし、お互いの努力で最大公約数を作り出すことは可能です。

②はその業務や役割に対して、「なぜできないのか」を尋ねるのではなく、「どうやったら、何がうまく作用すれば、よい状態にできるのか」を尋ねてください。

「なぜ」は自問の際は有効ですが、相手に使うと詰問をされているように受け止められます。「WHY(なぜ)」よりも「HOW(どのように)」の発想の方がポジティブな思考につながります。

③は必ずしも金銭や待遇ではなくてもかまいません。その人が頑張った過程について承認することも大切です。声を一言掛けるだけでも、ぐっと距離が縮まります。

ヒトは承認欲求があります。そして、その承認欲求が満たされると自己実現をしようと、その人は真価を発揮しようとします。

従事者の“未来”に寄り添う姿勢が経営者には求められます



しかし、人間関係の構築だからと言って、過度な干渉はいけません。こちらの気持ちを押し付けず、相手のタイミングで相手の話に丁寧に耳を傾けて、何を伝えたいのかに寄り添ってください。

・相手の目を見る
・うなずく
・相槌をうつ
・良いところを褒める

そんなに難しいことではないと思います。

そして、変化を促したいときは、頭ごなしに否定をしたり、強要することはよくありません。それまでのキャリアを否定されることは気持ちのいいことではありません。

そんな時は、「イエス・バット法」と言って、相手のいいところを肯定してから、「こうしたらより良くなるのでは?」という提案の技法を使うと角が立ちません。

傾聴してよい人間関係を気づき、いいところを褒めてください。減算思考ではなく加算思考です。「人材の多様性」の時代への対応策の一つと考えてみてください。

また、「あなた(従事者)のキャリア」を肯定することで、
①従事者自身が、自分の居場所を感じることができる
②離職率が下がるので、ノウハウが蓄積できる
③採用コストを削減できる
と、業績の向上に寄与します。

それは、結果的に「私(事業主・企業)のキャリア」につながります。

著者プロフィール

大嶋 亨一(Team Taylor Japan 代表)

中小企業診断士・2級キャリアコンサルティング技能士。専門は採用・研修・人事。IT会社にて23年間採用・社員研修に従事してきた。総務担当としても社員からの各種窓口(キャリア・ハラスメントなど)となり、相談の対応をした。また、上記以外でも安全衛生管理、ISO資格取得推薦、小口現金管理など中小企業の総務を一通り経験した。中小企業の実態がわかる強みがある。

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