助成金・補助金等、経営力UPの経営情報が満載!

専門家コラム

専門家コラム
会員登録すると、
新規会員登録はこちら
お気に入りに追加 シェアツイートLINEはてぶ

新たなビジネスを効率的かつ効果的に始める6つのステップ

顧客ニーズの変化や競合他社の動向などの外部環境の変化によって、既存事業の売上が低迷してしまうのはよく聞く話です。その状況を打破する一つの方法に「新たなビジネスの開始」があります。効率的かつ効果的に新しいビジネスを始めるための6つのステップを専門家が解説します。

(掲載日 2023/11/29)

小さな会社で新しいビジネスを始める

はじめに

コロナ禍後の物価高などの影響により多くの会社にとって経営が厳しい状況が続いています。また、ITの発展や普及などの影響により顧客や取引先が減っている業界は、コロナ禍前からすでに厳しい状況に置かれています。

このような時代だからこそ、会社を長く存続させるためには、何らかの手を打たなければなりません。例えば、売上を向上するために販売する物を増やす、販売する先を増やす、客単価を上げる仕組みを作る、といった対応が考えられます。このような対応も新しいビジネスと捉えることができますが、小さな会社の継続的な存続のためには、時には新しいビジネスを始めることも有効です。

しかしながら、経営資源を潤沢に持たない小さな会社にとって、新しいビジネスを始めるための資金や人手が足りない場合があります。また、何か新しいこと、つまり今まで経験のないことに挑戦するということに対して、経営者だけでなく従業員も躊躇してしまうかもしれません。


新しいビジネスを始めるには

では、どのようにしたら、小さな会社が、できるだけ失敗することなく、新しいビジネスを始めることができるでしょうか。会社規模が小さい場合、大きな初期投資が必要なビジネスは資金の調達に苦労しそうです。また、人手がたくさん必要なビジネスを始めるには人材の獲得にも苦労するかもしれません。資金や人材に関する課題がクリアできたとしても、従業員からの不平や不満、計画通りに売上が伸びない、知識や経験不足に起因するトラブル発生などの可能性が考えられます。順調に新しいビジネスのスタートを切ることができたとしても、そのあとの収益性が問題になることもあります。


新しいビジネスの企画

効率的かつ効果的に新しいビジネスを始めるために、準備段階を含めた以下の6つのステップを実施することにより、新しいビジネスを企画することができるようになるでしょう。

図1. 新しいビジネスの企画手順

筆者作成



各ステップについて以下に解説します。


0.新しいビジネスの背景

まず、準備段階として、新しいビジネスが必要になった背景について改めて考えて、整理します。コロナ禍や円安などの社会環境による変化のためなのか、競争が激しいからなのか、それとも、技術者の高齢化などの社内事情によるものなのか。どのような背景で新しいビジネスが必要になったのかを見極めます。場合によっては、新しいビジネス以外のもっと効果的な解決策が見つかるかもしれません。


1.アイデア出し

次に、どのようなビジネスをするのかについて、何ができるのか、何をしたいのか、そして、ニーズはあるのかという観点から、新しいビジネスのアイデアを探します。従業員も含めて複数人でブレインストーミング*1することが理想的ですが、経営者だけで行うこともできます。自社の潜在能力を最大限に引き出すために、思い込みを捨てて、できるだけ柔軟な気持ちでいろいろなアイデアを出します。

*1ブレインストーミング:自由に意見を出し合い、新たなアイデアの種を見つける手法。批判の禁止や量の重視などのルールで実施するのが特徴。「ブレスト」と略して用いられることが多い。


2.アイデアの絞り込み

複数のアイデアが出てきたら、どのアイデアが最も良いのか絞り込みをします。絞り込みにあたり、①既存の経営資源をうまく活用することができるのか、②希少性があるのか、という2点に着目します。

資金を潤沢に持っていない小さな会社の場合は、既存の経営資源を最大活用することにより、投資を最小限に抑えることができます。例えば、店舗用の物件を新しく借りるのではなく、倉庫として使っていた1階のスペースを店舗として活用するようなやり方です。

また、希少性の高いニッチな商品やサービスを販売することになれば、競合が少ないために単価を下げる必要がなくなります。その結果、一定の利益率を維持することができ、確保した利益は次の成長のための礎となり、最終的には企業価値の向上が期待できます。

図2. ビジネスアイデアを絞り込むポイント

筆者作成



3.新ビジネス案の定義

新しいビジネスのアイデアを1つに絞ることができたら、それを新ビジネス案として定義します。まず、ビジネスモデルを描き、収益を上げる仕組みについて整理します。次に、マーケティングミックスの4P(製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion))という観点から、内容を具体化します。誰をターゲットとし、どのような商品・サービスを、どのような価格で、どこで、どのようにして販売し、どのように収益を得るか、明確に定義します。このステップで、新ビジネス案を十分に具体化することにより、次のステップの課題抽出に取り掛かりやすくなります。ここで、収益性が低い、ターゲットが少ないなど、ビジネスとして成り立たないことに気付くかもしれません。その場合は、1つ前のステップに戻り、アイデアを見直し、絞り込みをやり直すことになります。


4.課題の抽出

次に、新ビジネス案の実行にあたり想定される課題の抽出をします。課題抽出の方法として、SWOT分析による弱みや脅威や、自然災害などによるリスクなどを考えてみてください。例えば、初めて海外に販売する新ビジネス案の場合、少人数で運営していると24時間対応が難しいということが課題として考えられます。また、既存の製品に機能追加した新製品を開発することを考えたものの、市場からのニーズがそれほど高くないことに気付くかもしれません。


5.課題の克服

最終ステップとして、課題を克服する方法について考えます。社内での意見交換だけでなく、外部の専門家にアドバイスを仰いだり、協力会社などに協力を要請したりすることもできます。課題克服の例として、24時間対応が難しいという課題には、問い合わせを日本の営業時間内で行うことを顧客に了承してもらうという解決策や、営業時間外の問い合わせについては社長がすべて対応するという解決策などが考えられます。どうしても克服できない課題が無視できないほど重要な場合には、このビジネス案を諦めて、ステップ2のアイデアの絞り込みに戻ります。


上記の6ステップから成る手順は、社内の複数人でステップごとに取り組むこともできますが、経営者1人の頭の中で行うこともできます。重要なのは、各ステップでのアウトプットを次のステップにつなげること、時には前のステップに戻って考え直すことです。このような手順により、自社にとって最も有効なビジネス案を選定した上で、課題克服まで事前に想定することができます。さらに、自社の潜在能力を最大限に引き出すことができ、失敗のリスクを最小限に抑えることができます。

新たなビジネスを効率的かつ効果的に始めるには、適切な手順と方法による検討が欠かせません



まとめ

小さな会社が成長するためには、投資を最小限にし、収益性の高い事業を創出しようとすることが成功への鍵です。何か新しいことに挑戦すると、失敗のリスクや新たな課題が必ず付いてきます。ただ、社会環境は確実に変化し続けますし、時間の経過とともに、社内の事情にも変化が生まれます。会社を50年、100年といった長い期間で存続させるには、そういった変化に対応するために新しいことに挑戦せざるを得ません。

今日明日の事業に集中しながら、その先の未来に目を向けて、新しいビジネスの種になることに考えを巡らせるようにするとよいでしょう。そして、「よし、これだ!」と思ったら、具体的に考えて課題にも対処しながら、できるだけスピーディーに新しいビジネスに取り組んでください。

著者プロフィール

岡本 麻代(ASAYO事務所 中小企業診断士)

IT企業で新規ビジネス開発、新規取引先の開拓、海外取引企業との折衝に25年以上従事。中小企業診断士として、創業支援、小規模事業者からの経営相談・診断、女性相談、輸出製品に関する技術支援など公的機関での相談業務を中心に活動。

< 専門家コラムTOP

pagetop