商品や生産現場の状況が把握しやすいように「見える化」に取り組んでいる
見える化で現状認識と問題の改善へ
企業の業務が円滑に行われているのかいないのかはわかりにくいものですが、企業活動の実態がわかると何を改めるべきかがわかります。そのためにも、業務の現状が目で見えるようにすることが大切です。トヨタ生産システムの重要な考え方のひとつに、問題を隠さずにわかるようにする可視化があります。問題を目に見えるようにすることで、改善につながるからです。
仕事がうまくいっているか、うまくいっていないのか、何が売れているのか、何が売れていないのか、それを日常の仕事のなかで具体的に見えるようにすることが大切です。そうすることで、社内でどこに問題があるのか顕在化させることができます。例えば次のような「見える化」があります。
- 売上や生産状況が計画通りに進んでいるのか、実績をグラフで示す。
- 業務スケジュールや進行状況をチャート化する。
- 黒板やコンピュータに主要な業務スケジュールと実績状況を掲示する。
- 売り場の陳列状況やバックヤードの商品置き場を見れば、売上状況がわかるように商品の並べ方を工夫する。
- 不良品や仕損じ品、キズがついたり傷んで劣化した商品を隠さず見えるようにしておく。
見える化で顧客の信頼獲得も
昨今では、商品・サービスに対する「安全」「安心」がより求められるようになっており、その点でも「見える化」は重要です。「安全」のために、品質管理および検査記録、工程の記録などの情報管理を徹底し、それを開示することが製品・サービスに対する「安心」につながります。
また「見える化」によって顧客の「信頼」につながる効果もあります。例えば、あるデパートではトイレの片隅に1日何回かの掃除予定とチェック欄のある表を貼っています。これは従業員の業務管理用で清掃計画と清掃忘れがないのかの確認表ですが、顧客にとってもきちんとトイレ清掃に力をいれている企業だという安心につながります。他にも、商品に生産者の名前や写真を入れるのもその方法です。「見える化」は問題発見ばかりでなく、販売促進活動にさえ活用できるのです。
社内のさまざまな業務について「見える化」運動を始めてはいかがでしょうか。
Case Study
社内が見渡せる中小企業のメリットを生かせ
「従業員の顔写真を工場に貼ることで自分の職場であるという意識づけになる」というB社。この取り組みは“人を大切にする”という経営方針の一環で始めたものだ。工場の入り口には、職場ごとに所属する従業員の顔写真が貼ってある。従業員はこれを見るたびに、自分の役割を再認識するとともに自負心にもつながるという。
(電子ビーム加工・90人)
C社は、情報を共有するためさまざまな工夫をしている。ひとつは工場を併設したオフィスだ。事務部門の従業員の座席はフリーアドレス制になっていて、どこに座っても構わない。フリーアドレスにすることで、部門を越えた関係者が必要な時にパッと集まって話ができる。組織の壁を作らない仕組みだ。日によって違う従業員が隣に座るので、自然とさまざまな情報が交換される。
(自動外観検査装置製造・60人)
Step Up
(1)業務上のデータについては、表だけでなくグラフ化するなどビジュアルに判断できるようにしている
今日ではコンピュータという便利な道具がありますので、売上データや仕入データなどが数字でプリントアウトされてきます。それを表にするだけでなく、グラフにして視覚的にわかりやすいように表示しましょう。この時、ただグラフ化するだけでなく、その課題や対応策についても発想しやすいように表現方法を工夫します。それには、顧客別や製品別、前月や過去の同月比との対比といった具合に、さまざまな視点からデータを見たり比べたりできることが必要です。何が起こっているのか、どうすればもっとよくなるのか、そうした発想につながるようなデータ活用を工夫しましょう。
(2)業務成果や課題については社内に掲示し、全員が理解できるようにしている
売上や生産数量、利益率、付加価値率、不良率など業務の成果に関する情報は、事務所や作業場、バックヤードなど、外部の人には目に触れない所に掲示しましょう。重要な情報ということで経営者や管理者が業績にかかわるデータを隠していると、従業員の協力は得られません。データを提示して企業と一体になって頑張る、そして頑張ると各自にそれが報いられるという励みが必要です。また、企業や職場の課題についてもわかりやすく表現して掲示しましょう。
このような掲示物は必要なタイミングで随時、また定期的に内容を更新しましょう。いつも同じ物では従業員は注目しなくなります。