中小企業の採用力がアップする3つのポイントとは?
人手不足倒産に陥る企業が増えるなど、人材確保に頭を悩ませる中小企業は少なくありません。とはいえ、自社に合わない人材の採用や中長期的な視点を無視した求人活動をしていては、組織に悪影響を及ぼすおそれがあります。中小企業が人材採用に成功するためのポイントを紹介します。
(掲載日 2023/11/30)
人手不足の中小企業が意識したい採用力アップのポイント
人手不足となっている背景
コロナ明けに伴い、様々な業種において経済活動が回復の兆しを見せています。一方で、海外からのインバウンド客の急激な回復も相まって、観光産業・宿泊業・飲食業を中心に人手不足に課題を感じる企業が増えてきました。中にはオペレーションを回せる人材が確保できず、「人手不足倒産」となる企業も増え始めています。大手牛丼チェーン店が連休中に人手を確保できず、休業するというニュースがありました。そもそもの人手が減っている背景としては生産年齢人口(15~64歳)の減少があります。団塊の世代の退職が増え、労働力不足が注目を集めるようになったのですが、このタイミングでコロナの感染拡大がありました。これにより人手不足感が強かった飲食業や観光業を中心に多くの企業が経済的に大打撃を受け、人手不足に関する問題は自然消滅的に立ち消えになったのです。その後、コロナが明けて経済活動が再開するにつれ、再び人手不足が着目されるようになったのです。
また、近年、新生児の出生数は減少の一途を辿り、2022年には初めて80万人台を割り込みました。つまり、日本人の若年層はどんどん減っていくことが確定的な事実となっているのです。コンビニで外国人店員を見かけることが増えたように、日本人労働者の確保はこれから更に難化することが予想されます。
また、就職活動を行う大学生は依然、大手企業を志望する傾向が強い傾向にあります。キャリタス就活2023 学生モニター調査結果(2021年12月発行、株式会社ディスコ)によると、「業界トップ企業を中心に活動」と答えた学生が17.6%、「大手企業を中心に活動」が37.4%いるのに対し、「中堅中小企業を中心に活動」は11%にとどまります。中小企業においては中途採用が中心となっていますが、労働人口が減り、大手志望が強い状況が続けば、人材獲得競争はより厳しさを増すことでしょう。
採用の目的
採用には事業規模の拡大、新規事業立ち上げ、欠員補充、幹部候補の確保などの目的があります。これらの目的を意識することが大切です。例えば、会社の将来を担う幹部候補やコア人材を採用するのであれば、育成・研修の体制を意識しておく必要があります。採用はゴールではなくスタートなのであって、良い人を採用できれば終わりというわけではありません。いくら働く意欲がある人材を採用しても、勝手には育たないのです。どのような人材に育ってほしいかを考え、そのために行う採用後の対応もセットで考えなければなりません。
また、退職者の欠員補充としての採用であれば、採用を考える前にシステム導入や外注の活用で対応できないかを考えることも効果的です。例えば飲食業であればQRコードの注文システム、非接触での決済システムを導入して業務を効率化したり、調理ロボット・配膳ロボットを導入してオペレーションに必要な人数を減らす、正社員ではなくマッチングアプリを活用してアルバイトで対応する、といったようなイメージです。全体的な業務効率化により、採用が不要になる場合もあります。
採用はあくまで手段でしかありません。採用を通じて達成しようとする目的を意識し、その目的を果たすために、何をすべきか、別のアプローチを並行して考えるようにしましょう。
中小企業の採用力アップのポイント
人材獲得競争が激化する環境において、中小企業が採用力をアップするための方法としては以下が挙げられます。①採用したい人の人物像を定義する
まずは「どんな人を採りたいか」を明確にする必要があります。「良い人」を採りたいという社長は多くいますが、「良い」の定義を明確にできている企業は多くありません。専門的なスキルを有している、コミュニケーションが軽快に取れる、自分で勉強する意欲がある、といった誰もが欲しいと思う人材は、高い給与が払えないと採用できないのが現実です。だからこそ、自社の給与水準を事実として受け止めながらも、「何をもって良い人とするか」を明確に定義することが大切です。口下手かもしれないが真面目に物事に取り組める人、元気よく挨拶できる人、といったように、自社で働くうえで大切にしてもらいたい要素を言語化しましょう。マーケティング戦略における「ペルソナ」を設定することが大切です。今、会社で活躍している人の性格・能力を参考にするのもヒントになるでしょう。ここが明確になれば、採用基準も固まります。
②採用戦略を立てる
次に採用したい人にどうアプローチすべきか、採用活動における戦略を練りましょう。採用広告を使うのであれば、閲覧数が多いだけの広告をやみくもに使うのではなく、採用したい人が見るであろう広告媒体を選択することが適切です。若手を採用したいのであれば、若年層の閲覧数が多い広告を選定する、といった具合です。また、記載する求人票についても、採用したい人が転職活動を行っている理由を考察し、その悩みに応える内容にすることで「刺さる」文面になります。採用したい人の気持ちになって、その人にアクセスするための道筋を設計することが大切です。
③企業のブランディングを作る
ブランディングとは「差別化」の意味になります。つまり、企業の個性をアピールすることです。どこにでもあるような仕事、面白みのない無個性な企業で働きたいと思う人はいません。社会的意義のある仕事、特徴的な社風、雰囲気の良い職場、人望ある社長のキャラクターなど、「自社らしさ」を伝えていくことが求職者に対しての強い訴求力となります。自分の会社の良さが分からない場合は、社員に「この会社で働く理由」を尋ねてみましょう。その答えこそが個性であり、会社の強みの源泉であり、ブランディングになります。ブランディングを意識することが社長・社員のモチベーションアップに繋がる効果も期待できます。
事業計画を作り、採用の方針を考える
これらの取り組みを行う前段階として、事業計画の策定が重要になります。3年後~5年後、会社はどのくらいの規模になっているのか、既存事業と新規事業に合わせた体制の確立、社員の年齢層などの情報を加味することで、どんな人を採用すべきかの方針が見えてきます。
単に人手が足りないからという理由で場当たり的な採用をしてしまうと、バランスが悪い組織となり、会社の成長を鈍化させたり、別の問題を発生させます。将来の会社組織の青写真を描き、そのピースを埋めていくために人を採用し育てていくことを意識しましょう。
採用が難しくなってきている今、人材確保は戦略的に取り組む必要があります。良い人を採用し、育成できる会社にすることが会社の持続可能性に大きく影響します。そのためにも、今から事業計画を作り、採用力アップに取り組んでいきましょう。