省エネルギー設備の導入など、省エネルギー対策に力を入れている
環境問題とコスト縮減のための省エネ対策
東日本大震災などの影響もあり、産業用の電気料金は長期的には上昇傾向にあります。しかしながら中小企業は、電力などのエネルギー価格の上昇を販売価格には転嫁しにくい構造にあります。海外から安価な製品が流入し、販売価格に下押し圧力がかかっているからです。従って、エネルギー消費量を圧縮することも重要です。環境問題だけではなく、コストを縮減するためにも省エネルギーの必要性は高まっています。
省エネの4つの留意点
中小企業が省エネに取り組む際に留意すべきことは4つあります。
第1は、どのようなエネルギーをどこで、どれくらい使っているかを正確に把握することです。月別・事業所別に、料金単位ではなく使用量単位で、1年間のデータを把握することが望ましいでしょう。
第2は、省エネ機器は最も効果的な生産工程や設備に導入するということです。現在はさまざまな省エネ機器が開発され、またそれらの機器の導入には税制や金融面での優遇措置が講じられています。従って省エネ機器を導入すること自体は難しくありません。しかし、稼働率が低い設備に費用をかけて省エネ化しても効果は限られています。自社にとってどこに省エネ機器を導入すれば費用対効果が最も高いかを検討する必要があります。それには、先述のデータが重要です。
第3は、できることから着実に行うということです。例えば、部屋の照明や空調はゾーン別にON/OFFする、昼休み中はOA機器の電源を切る、ひさしやブラインドを設置する、駐車時のアイドリングをやめる、クールビズを採用して室温を高める、等々の取り組みです。一つひとつは小さな取り組みでも、あわせるとコスト節減につながります。また省エネに対する意識を従業員の間に共有できるという副次的な効果も期待できます。
第4は、これらの取り組みを持続させることです。省エネ対策の効果が一過性な物になりがちなのは、対策に取り組んだという自己満足で終わってしまい、社内の意識が次第に希薄化してしまうからです。そうした事態を避けるには、従業員の省エネに対する意識を継続させる工夫が必要です。例えば、省エネ対策によってどの程度のコスト削減につながったのかを検証して明示するとともに、たとえ少額であっても削減できたコストの一部を従業員に還元する、などといった取り組みも考えられます。
Case Study
環境への取り組みから思わぬメリット
E社は環境を客観的な数値で追いかけるために、社内に委員や監査、マネジメントする人などを決めて一年交替で担当している。環境管理を進めるうえでは、いずれの部署の作業が遅れても月間の活動集計ができないので、担当ごとに遅れが生じないよう気をつけている。ISOの作業が時間外になるため、取得して半年間くらい従業員は嫌がっていたようだ。
社内に設置したISO委員会では、意思の疎通がしっかりできるようになってきた。さらに委員会後の飲み会では、本業に関するコミュニケーションも活発になった。そのため本業の仕事まで、以前よりスムーズに運ぶようになるという副次的効果が現れた。本業における仕事の漏れやミスが激減したというメリットも現れている。社内では備品を大切に扱うようになり、コピーの裏紙がなければ、探してまで使うほど意識が変わった。蛍光灯もこまめに消したり、ゴミも減ったりしている。
( 包装資材紙工品総合卸売・40人)
F社では、環境ISOは従業員が手弁当で集まって勉強したもので、外部委託をせず自分たちの手で取得した。環境対策では自分だけがよいということはダメで、部署ごとに環境の目標を数値化して掲げている。企業全体でも電力消費など省エネ化の目標を掲げた。
(防塵ユニフォームアパレル業・55人)
Step Up
(1)自社の活動分野において省エネルギーに関連する法令を理解している
省エネに関してどのような法令が適用されるのかを理解する必要があります。考えられるのは、「①エネルギーの使用の合理化に関する法律(平成20年5月改正、21年4月施行、「省エネ法」)」、「②地球温暖化対策の推進に関する法律(平成20年6月改正、21年4月施行、「温対法」)」、「③都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(同年6月改正、「東京都環境確保条例」)」の3つです。
まずそれぞれの法令の適用対象かどうかを確認しなければなりません。省エネ法はエネルギー使用量(複数の事業所を有している場合は、それらを合算)が原油換算で年間1,500キロリットル以上の企業、温対法は省エネ法の対象企業など、東京都環境確保条例は同3,000キロリットル以上の企業です。エネルギー使用量の目安は下表の通りです。
省エネ法が適用されると定期報告書、中長期計画書の届け出が、温対法の場合は温室効果ガス算定排出量の報告書の届け出が、東京都環境確保条例の場合は地球温暖化対策報告書の届け出が義務づけられます。
省エネ法、温対法では、報告書を提出しない企業に対して提出を促す指導などが行われ、それでも改善されない場合には罰金が科されます。さらに省エネ法では、場合によっては名前が公表されます。東京都環境確保条例では、報告内容が公表され、必要に応じて指導・助言を行われ、正当な理由なく従わない場合には名前が公表されます。