自社商品・サービスの価格は、原価を把握し顧客や競合相手を考慮した客観的データに基づき決定している
価格決定における3つのパターン
企業の価格決定の方法は、大きく分けると、以下の3つのパターンがあります。
第1が、「コスト志向」の価格決定です。第2は、「顧客志向」の価格決定です。そして、第3は、「競争志向」の価格決定です。
第1の「コスト志向」の価格決定は、原価に一定のマージン(利幅)を加えて価格を決定する方法です。
製品 → コスト → 価格 → 価値 → 顧客
第2の「顧客志向」の価格決定は、買い手の知覚に基づいて、価格を設定しようという方法です。顧客に受け入れられる価格が先に決定され、その後に価格計算や利益計算がついてきます。
顧客 → 価値 → 価格 → コスト → 製品
第3の「競争志向」の価格決定は、競合他社の価格を基準として自社の価格を決定する方法です。
顧客価値に見合う価格決定を
中小企業の価格決定方法をみると、第1の「コスト志向」の価格決定、すなわち「価格=コスト+利益」を採用する企業が多いのですが、これは「顧客」と「競争環境」を考慮しない、コスト回収の発想といえるかもしれません。
マーケティングにおける価格戦略では、顧客価値に見合った価格設定を行うことがポイントになります。価格は、価値のバロメーターです。“はじめに顧客ありき”の発想が不可欠なのです。
コストと顧客価値は異なります。企業にとって、価格の下限は「コスト」ですが、上限は「顧客価値」です。顧客が感じる価値を高めれば高めるほど、高い価格設定が可能になります。
顧客価値 ≠ コスト
従って、価格決定にあたっては、コスト(Cost)だけでなく、顧客(Customer)、競争(Competition)の「3つのC」をバランスよく考慮することが重要です。
Case Study
欲しければきちんとした値段で買うもの
B社の販売システムはシンプルで明快だ。独自のサーモスタットは「数量別価格表」に基づいて、1~2 個から10,000 個まで16段階で販売単価が設定されている。この販売方式にしてから、価格を値切ろうとする顧客は1社もいないという。これが自社独自のサーモスタットは従来、世の中になかった高付加価値の製品だという何よりの励みになっている。小さな市場、少量の顧客が同社のターゲットであり、そうした顧客は喜んで同社の提示した価格で買っていく。
(各種サーモスタット製造・36人)
C社の化学薬品は、ものによっては生産量が50リットルくらいの少量なものもある。少量であってもその製品を扱って利益が出るかどうかを見極めなければならない。顧客が本当に困っていれば値段が高くても買ってもらえる。それゆえ同社は付加価値が高いものを売っている。
(化学工業薬品製造・84人)
Step Up
(1)新製品発売時や新規顧客の開拓時など、必要に応じて思い切った価格設定を検討している
新製品の価格決定には、大きく2つの類型があります。1つが、「初期高価格政策」です。比較的高い価格を設定し、余裕のある顧客層、価格に敏感ではない顧客層をターゲットとする価格戦略です。もう1つが、「初期低価格政策」です。比較的低い価格を設定し、急速に市場を拡大するための戦略です。いわゆる薄利多売方式です。
自社製品に独創性がある時には、「初期高価格政策」がベターでしょう。一方、「①その製品に対する需要の価格弾力性(価格が1%変化した時、需要量が何%変化するのか)が大きい時」や、「②競争企業がその製品を模倣する可能性が大きい時」、「③その製品を大量生産するメリットが大きい時」などは、思い切って「初期低価格政策」をとることも有効です。
(2)価格に関する市場調査を行っている
効果的な価格決定を行うためには、顧客(買い手)の知覚、すなわち、値ごろ感を把握することが必要です。顧客の値ごろ感を把握するための手法としては、
①消費者モニターの利用
②アンケート調査の実施
③実験(複数の価格で販売してみる)
などの手法があります。
また、競合他社の価格も、定期的に把握していくことが欠かせません。基本的に「価格」は製造方法などと異なり、公開されるものであるため、意欲さえあれば、定期的に把握することは困難ではありません。