システム導入でDX? その前に押さえておきたい3つのポイント<前編>
DXという言葉をかなり多くの場所で耳にするようになってきましたが、既に取り組みは始めていますでしょうか? 既に実施している企業も、何も進めていない企業も、DXをこれから進める上でぜひ知っておいていただきたい内容をお伝えします。
(掲載日 2022/03/10)
システム導入でDX? その前に押さえておきたい3つのポイント<前編>
はじめに:DXとは
コロナ禍においてIT活用の必要性はそれまでにも増して高まっています。社会環境の変化に対応するために、事業の変革を求められている経営者も多くいらっしゃることでしょう。
そんな中で「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」という言葉が思い浮かぶことがあるかもしれません。DXを経済産業省では以下のように定義しています。
DXとは、突き詰めればデジタル技術を活用した変革のことです。その背景には「ビジネス環境の激しい変化」があります。この定義はコロナ禍前に行われたものですが、まさに今のような激しい変化の時代にこそ、DXが重要であることがわかります。
そして、忘れてはならないこととして「競争上の優位を確立する」という目的があります。そのためには「顧客や社会のニーズ」を捉えることも必要になります。
「DXとは何か」をしっかりと意識しながら、それを成功に導くためにどんなことができるでしょうか。
各種システムの導入
DXのためにできることとして、比較的イメージしやすいものに、基幹システムや各種業務システムを導入することで効率化を図る、といったことが挙げられます。例えば製造業であれば生産管理システムを導入することで、製造にかかるコストを抑えて付加価値の高い製品を生産することができるようになるかもしれませんし、小売業であれば在庫管理システムや発注管理システムなどを利用することで、バックヤード業務も含めた業務の効率化を行える可能性があります。
最近では小規模な事業者であっても導入しやすい価格帯のものもあり、ぜひ積極的にシステムを活用して業務の効率化に取り組んでいただきたいのですが、実際はシステムを導入したものの、うまく活用することができずに稼働しないままになってしまっている会社を見ることがあります。せっかく費用や時間をかけて導入したシステムがうまく稼働しないのでは「変革による優位性の確立」どころか損害になってしまいます。
本稿ではそのような事態を避けるために、システムを導入する前に確認しておきたい3つのポイントを、前後編に分けてご紹介いたします。
ポイント1 チーム作り
社内のIT活用を進めるときにありがちなのが、「パソコンに詳しい○○さんを担当にしよう」と、なんとなく詳しそうな人に仕事を丸投げしてしまうことです。特に小規模企業では、ITを専門に担当する人材を確保することは難しいですから、若手社員などのITに詳しい人に頼り切りになってしまっているケースもよく見られます。
しかし誰かひとりに頼り切りになるIT活用は、非常にリスクが高いと言えます。機器やデータの管理を理解しているのが一人だけとなると、万一その社員が居なくなってしまった場合に全体像を把握している人がいなくなってしまうということです。実際、そのような状況になられてご相談に来られる企業を何社も見てきましたが、IDやパスワードがわからずに必要なデータ等にアクセスできなくなっているような事態にも遭遇しています。
すべての管理が適切に行われているとしても、ITは興味が無い・苦手意識のある人からはブラックボックスのように見えているものです。一人の担当者が一生懸命管理に時間やスキルを費やしていたとしても、他の人からその努力が認められることは少ないかもしれません。むしろ、不具合が起きたときだけ目立つ仕事になっている可能性もあります。そんな仕事を一人で続けることは、モチベーションの低下を招きやすくなります。
それはDXを目的としたシステム導入であっても同じです。自分の担当外の業務の内容もある程度把握したうえで、システムを選定し導入から運用までを一人で担当することは、たとえどんなに小さな会社であったとしても、容易なことではありません。
経営者の中には「導入はシステムベンダー(システムの販売会社などのこと)がやるのだから、そんなに難しいことはない」と考えてしまう方もおられるようですが、導入時に本当に大切なのは、現在の業務の状況や実際にシステムを使用する社員(ユーザー)のスキルとの整合性を取りながら、新しい仕組みの最適な導入方法を見つけることです。そこをベンダー任せにしてしまうと、使いにくいシステム運用になってしまいうまく活用することが難しくなります。
私は普段から「IT担当は必ずチームで」とお伝えしていますが、システム導入の際は特にその考え方が大切になってきます。できれば該当システムに関係する各部署から1名ずつメンバーを選出し、プロジェクトチームを組むのが良いでしょう。それぞれの部署の課題やメンバーのスキルなどを事前に把握しておくことは、システムの選定や運用手法を決めるうえで欠かせない情報となります。社員が数名の会社であれば、全員をチームメンバーと捉え、それぞれが責任をもって対応する分野を用意するようにしましょう。メンバーが「自分ごと」としてシステム導入に向き合うことが大切です。
できれば経営者もチームメンバーに名前を連ねてください。もしもすべてのチームミーティングに参加することなどができないとしても、最終的な判断は経営者がするべきですし、当然その判断の結果に対しても経営者が責任とるという姿勢を見せることで、チームも安心してその力を発揮できるようになるはずです。
そして、結果までが遅いように見えることがあっても、その過程を評価していただくよう経営者にはお願いしています。ITに関することは、やってみないと判断できないことが多く、3歩進んで2歩どころか3歩下がらなければいけなくなることも多々あります。トライ&エラーを繰り返して結果を出す世界だということをご理解いただき、できればプロジェクトに関わっていない他のメンバーにもそれを伝えておくことをお勧めしています。既存の仕事とプロジェクトの仕事のリソース配分は、その会社の状況や導入するシステムの大きさなどによっても変わってきますが、周りの人から「あの人たち、何をやっているのかわからない」と思われてしまうと、後々協力を得ることが難しくなり、結果的に導入システムを運用する際の妨げになってしまいます。
プロジェクトチームを中心として、会社全体がワンチームになる、そんなイメージを持っていただくことがまず大切なポイントです。特に古くからの手法が根付いている企業ほど、変革には困難を伴います。「組織や企業文化・風土を変革」するには経営者の覚悟も求められることを忘れないようにしてください。
(後編へ続く)