助成金・補助金等、経営力UPの経営情報が満載!

専門家コラム

専門家コラム
会員登録すると、
新規会員登録はこちら
お気に入りに追加 シェアツイートLINEはてぶ

SDGs(持続可能な開発目標)を事業に取り込もう!

最近よく聞く「SDGs」。スケールの大きなテーマですが、中小企業は身近にある社会課題を認識して解決できることが多く、その役割が大いに期待されています。SDGsとは? そして、SDGsを事業に取り込んで実践するためには・・・

(掲載日 2019/09/26)

SDGs(持続可能な開発目標)を事業に取り込もう!

 SDGs(エス・ディー・ジーズ)という言葉をよく耳にします。 Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称で、2015年に国連で採択されたアジェンダ(行動計画)です。2030年までに、持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現するため、17の目標と169のターゲットを掲げています。

1. SDGsとは?


 SDGsは、ミレニアム開発目標(MDGs)の後継といわれます。MDGsは、発展途上国の貧困・飢餓や初等教育などの課題について、到達すべき8つの目標を設定して先進国が関わっていくものでした。2000年に国連で採択されて2015年の期限までに一定の成果を挙げましたが、乳幼児死亡率などの目標は未達成のまま課題として残されました。
 そこで、2015年9月の国連サミットで、「地球上の誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現するため,2030年を期限とする17の目標(下図参照)がSDGsとして全会一致で採択されました。SDGsは発展途上国のみならず、先進国も取り組む普遍的なものであり、日本も外務省主導で積極的に取り組んでいます。

 出典 外務省JAPAN SDGs Action Platform



2.なぜSDGsが重要か


 SDGsの17の目標は、どれも一国や地方行政の力で簡単に実現できるものではありません。前述のMDGsの反省も踏まえて、SDGsは次の5つの特徴を持っています。

① 普遍性  先進国を含め全ての国、あらゆる団体が行動する
② 包摂性  人間としての尊厳と安全を追求し 「誰一人取り残さない」
③ 参画型  全てのステークホルダー(利害関係者)が役割を担う
④ 統合性  社会・経済・環境に統合的に取り組む
⑤ 透明性  定期的にフォローアップし公表する

 この特徴こそが、SDGsが単なる「行動規範」ではなく、世界的規模で国・NGO・企業・学校等あらゆる団体が、持続可能な社会の実現という世界中の人間にとって重要な目標に向かい、実際に行動することを可能にしているのです。

 わが国でも2018年12月に『SDGsアクションプラン2019』 が閣議決定され、豊かで活力のある社会を実現するため、世界の国づくりと人づくりに貢献していくことになりました。 具体的には、「日本のSDGsモデル」に基づき、8つの優先分野に取り組んでいます。

3.企業とSDGs


 世界的な行動規範となったSDGsですが、まだ社会貢献やCSR(企業の社会的責任)の枠内で考える経営者も多いようです。企業としては、SDGsをリスクと機会の2つの側面から考えねばなりません。

[リスク]  企業の事業活動は、環境・労働・人権などSDGsの目標と深く関わっており、対応が不十分なら、消費者・従業員・取引先・地域社会などステークホルダーとの関係が悪化し、事業継続リスクに直面します。これは最近の様々な企業不祥事件からも明らかでしょう。もはや企業のサスティナビリティ(持続可能性)とSDGsは切り離せないのです。
[機 会]  SDGsの目標実現のためには、様々な分野で投資と開発が必要となります。専門委員会の報告書*では、60のビジネス領域を見出しています(次表)。そして潜在的なマーケットとして、「SDGsによってもたらされる市場機会の価値は年間最高12兆ドル」、「2030年までに世界で創出される雇用は約3億8千万人」という試算もあります。SDGsは大きなビジネスチャンスでもあるのです。

*ビジネスと持続可能な開発委員会(BSDC):世界200社以上のCEOが主導するビジネス組織「持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)」の下部組織。2015年、WBCSDは企業がSDGsに取り組む際のツール「SDG Compass」を、国連グローバル・コンパクトやGRI (Global Reporting Initiative:サステナビリティ報告書の理解促進と作成をサポートするNGO)と共に策定している。BSDCの報告書『より良きビジネスより良き世界』は2017年のダボス会議で発表された。

 出典 ビジネスと持続可能な開発委員会 『より良きビジネスより良き世界』 報告書 2017年1月
 

 さらに、最近の資本市場においては、財務状況だけでなく ESG(環境・社会・統治)を考慮した投資判断が主流になりつつあります。かつては企業の社会的責任と経済的利益とは相反するといわれていましたが、今やESGを重視する企業が長期的に持続可能でビジネスチャンスも捉えており、投資対象としてより適格だという見方が一般的です。欧州では機関投資家を中心にESGを考慮した投資が資産残高の約半分を占めるようになりました。
 このような流れの中で、SDGsを実践する企業はまさに社会的責任を果たし持続可能な企業として選好され、資本市場において優位性を確保しています。結果的に、SDGsはその評価基準を提供し、ESG投資のコミュニケーションツールとなっています。


4.中小企業こそSDGs


 企業にとってSDGsが重要だと言っても、それは大企業の話だと思われるかもしれません。しかし、中小企業こそ身近にある社会課題を認識し解決できることが多く、SDGsにおいてその役割は大いに期待されています。中小企業にとっても、SDGsはサスティナビリティ実現を担保するものであり、新たな成長のチャンスでもあります。
SDGsの取組みによって広がる可能性とメリットは次の通りです。

①企業イメージ向上  SDGsの取組みのアピールは、「この企業は信用できる」、「この企業で働きたい」などの好印象を生み、企業イメージが向上します。
②社会貢献  SDGsに盛り込まれた社会の課題に対応することで、社会への貢献、地域の信頼獲得につながります。
③事業機会  取組みをきっかけに、新規事業の創出、新規取引先の獲得、協働先の発掘、地域との連携など、イノベーションや協働関係構築につながります。
④企業戦略  企業間競争が激しい中、今後はSDGs対応が取引条件となる可能性もあり、持続可能な経営の戦略となります。


5.SDGsへの取り組み方


 最後にSDGsへの取り組み方を考えてみましょう。
 まず、SDGsは各企業に全ての項目への取組みを求めている訳ではありません。それぞれの企業に適したゴールとターゲットを選定し、自ら目標(未来ビジョン)と実現の目標年度を定めて実践すればよいのです。自分たちに何ができるか、何が課題の解決に効果的なのか、焦点を絞り込んで実践することが大切です。
 そして、現在からできることを積み上げるのではなく、2030年に自分たちの「あるべき姿」をイメージして、そこから逆に今何をすべきか、今後どう行動すべきかを考えて目標化していきます。この手法は「バック・キャスティング」と呼ばれ、SDGs実践における重要な考え方です。

 中小企業をイメージした、社内でのSDGsの取組みの手順は次の通りです。

 環境省 『全ての企業が持続的に発展するために -持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド-』
 平成30 年6月 の資料をもとに筆者作成



 SDGsは今後さらに世界中に広まり、企業の対応も重要になります。企業経営において、負担ではなく持続可能な成長のチャンスと前向きに捉え、日常の業務に取り込んでいきましょう。
 2030年はそれほど遠い未来ではありません。

著者プロフィール

吉本 準一(吉本経営オフィス)

中小企業診断士/証券アナリスト/日本経営診断学会理事
メガバンクと関連会社に約40年勤務し、千数百名の社長さんから、融資・運用・経営・営業・総務・人事など多岐に亘る相談を受ける。現在も、経営の根幹に係る経営戦略、事業承継から、内部管理、人材育成等の実践現場まで、経営者の皆さんと共に活動中。

< 専門家コラムTOP

pagetop