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人手不足時代の人材育成を考える!

カクテルグラス型の人口構成という言葉を聞いたことはありますでしょうか? 人材不足が深刻化する新しい時代では、これまでとは異なる人材育成が求められます。新しいカクテルグラス型時代の人材育成とは・・・

(掲載日 2019/03/20)

カクテルグラス型時代の人材育成

人手不足の傾向


 平成の時代を経て日本の人口構成は大きく変容しました。総務省統計局ホームページに掲載のある国勢調査をもとにした我が国の人口ピラミッド(平成29年10月1日現在)を見ると、65~70歳の年代と40~45歳の年代の人口が多くなり、15歳未満の年代が少ないタテに細長い星型の形をしていることがわかります(下図左)。 今後の15~64歳の生産年齢人口の減少が予想されています。

過去を見て、これから予想されること


 人口ピラミッドというと、若年者が多く年齢が上昇するにつれて細い形を示す富士山のような「ピラミッド型」がイメージされますが、これは前回の東京オリンピックの頃です。
 「少子高齢化」のことばが聞かれるようになってから長く、平成の初めの頃には、働き盛りの40歳代が膨らんで15歳未満の年代が少ない「釣り鐘型」(上図右)、そして、21世紀に入ってからは、現在のような「星形」へと変遷がみられます。

 国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(出生中位・死亡中位)」をもとに、最も高齢化が進んでいるとされる秋田県の2040年の人口ピラミッドの形を見ると、高齢者の人口が多く、年代が下がるほど人口が減少する「カクテルグラス型」の形になると予想されています。秋田県では、2010年は、1人の高齢者(65歳以上)に対して1.8人の若者(20~64歳)が存在している状況が、2040年には、1人の高齢者に対して1.0人の若者が存在する社会になると予想されています。この傾向は、東京圏でも予想されています。

 これからは、「最近の若手は…」などとグチをこぼす対象の若手労働者が数人しか存在せず、気づけば中高年ばかりの職場も珍しくなくなることが予想されます。仮に定年延長などで対応するとしても、高齢者の退職や健康面・体力面の制約を考えると今後はますます人手不足が進みます 。

(出典)中小企業白書2014年版



生産性向上に向けた政府の取組み


 厚生労働省と中小企業庁が公表している『働き方改革リーフレット』では、働き方改革関連法の主な内容として次のようなことが示されています。

1.時間外労働の上限規制 
時間外労働の上限を、月45時間、年360時間を原則とする。

2.年5日の年次有給休暇の確実な取得
有休休暇付与日数が10日以上の全労働者に、毎年5日、年次有給休暇を取得させる

3.雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
同一企業内では、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与など の個々の待遇ごとに不合理な待遇差を禁止

 制度上のしくみは、順次、整っていくことが予想されます。これらに加え、実際の働く場面では、社会経験を積んだ方、若者、女性の社会参加、そして彼らのモチベーションを上げることがますます必要になってきます。これらの視点から、産業カウンセラーとしての自身の経験も踏まえて、カクテルグラス型時代での生産性を上げるポイントをあげてみます。


年上の部下との関係


 再雇用やシニアの採用で、年上の方が自分の部下になるケースがより増加します。

1) 業務上の指示のしかた
 業務上の指示とはいえ、年上の方に対しての言葉ですので、礼儀が大切です。
 「〇〇してください」ではなく、「〇〇お願いします」というような言い方をします。
 これまでの長年の経験からくるプライドを保つようにしましょう。

2) 基本的な接し方
 業務目標の達成のために、「力を貸してください」と頼ってください。
 再雇用やシニアで採用をされる方は、経験や知識を買われています。得意分野が必ずありますので、その力を業務目標達成に活かしましょう。

3) 承認を欠かさない
 プライドも経験も知識もある年上の部下ですが、努力したことは認めてほしいのは若者と何ら変わりません。しっかりと承認します。この時の注意点は、何について承認しているかを明確にして「〇〇の△△についてありがとうございます」などと伝えましょう。



若者の採用と育成


 若者の人口が減少し、タテの人間関係や競争を好まない割合の増加が見込まれます。

1) 人間関係づくり
 若者世代には、2つのアプローチをします。まず、同年代同士が交流する共通の場を設けます。週に1回、月に1回でもOKです。少しだけ先輩の従業員が積極的に「お世話係」として声を掛けます。次に、比較的小規模な企業であれば、経営者との座談会や、日報を通じた意見交換も有効です。単に、飲み会を設定しても一過性で終わることがあります。

2) 競争で刺激
 同級生の数も少なく、競争をする機会が少ないことが若者の特徴のひとつです。そこで、あえて職場では競争を仕掛けます。内容は、営業目標でも、技術の向上などでも、比較的数値化できるものが適しています。このときに注意したいのが、実力差が大きい場合、最初からあきらめてしまい、妬みや嫉妬になる可能性がありますので、実力が同じくらいの者同士を競わせます。もちろん、結果は具体的に承認します。

3) 叱るときのポイント
 しっかりと仕事に向き合わずに失敗をした場合、感情で怒るのではなく冷静に叱ります。このとき、集団の中で叱るのではなく個室に呼んで叱るのが基本です。なぜ、失敗が起こったのかの原因、どうすればよかったのかの改善策を考えさせるなど、多く話させるようにしましょう。そして、最後に期待していることを確実に伝えます

4) ずっと失敗しない若者は…△
 技能習得を求められる職場のひとつに、ものづくり現場があります。ものづくり現場では、技術が未熟なうちには失敗は付きものです。しかしながら、ときには目立った失敗をせずに仕事をこなしている従業員がいることがあります。こんな時は要注意。慣れた技術をもとにした仕事に特化して、新たな技術の習得を怠っている場合が考えられます。失敗は会社にとってマイナスです。でも、長い目で見ると、成長の糧になることも少なくありません。チャレンジを促しましょう。

女性の活躍


1) 居場所づくり
 1人でポツンと過ごす女性は非常に少ないため、居場所づくりが肝心です。女性が多い職場ならともかく、男性従業員に比べ女性従業員の割合が少ない職場では、女性従業員ががんばっていても見過ごされしまうこともあります。男性の上司でも、結果はもちろん、途中経過を聞いて、いっしょに考える姿勢を示してください。問いかけをするときは、回答しやすいよう「〇〇はどんな感じかな」などとオープンに聞いてください。

2) 「ありがとう」はときどきカタチに
 仕事がうまくいった、一生懸命こなしてくれた等の後には、「ありがとう」がほしいもの。きちんと言葉にしましょう。もちろん、ときどきで結構ですので、ほんの気持ちの“プチスイーツ”があると、喜んでもらえますよ。




メンタルヘルス


1) 早めの発見が肝心
 病気や睡眠不足などの身体的要因、不安や悩みなど心理的な要因、そして人間関係がうまくいかない、仕事が忙しいなどの社会的要因などにより引き起こされますが、休養を必要とするほどになると、本人にも職場にも大きなマイナスです。周囲が早めに気づいて対応したいものです。

2) 兆しのサイン
 メンタルに大きな影響を及ぼしそうなとき、仕事で次のようなサインがみられます。

・弱気になる
・失敗が多くなる
・能率が落ちる
・やる気が低下する

 それぞれの頭文字をとって、「よ・し・の・や」と覚えてくと思い出しやすくなります。



まとめ


 生産性を上げるには、これまで通り、明確な目標、リーダーシップ、円滑なコミュニケーションなどが必要です。さらに、人手不足が見込まれる「カクテルグラス型」時代に生産性を上げ続ける職場をつくるには、これまでとは異なる考え方も取り入れ、職場に関わるメンバーが、継続して+αの力を出していけることがより重要になってきています。

 特に、知名度の点などで大企業に比べて人材確保が困難な中小企業では、家族的で親密なコミュニケーションが自社の特徴を際立たせるチカラになります。仲間のことを思った声掛けで、企業のチカラを強くしてください。

参考資料のホームページ

国立社会保障・人口問題研究所
http://www.ipss.go.jp/site-ad/TopPageData/PopPyramid2017_J.html
(人口構成の変遷がわかる)

2014年版 中小企業白書 103ページ 2-2-15図
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H26/PDF/05Hakusyo_part2_chap2_web.pdf

働き方改革リーフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/000474498.pdf

厚生労働省 みんなのメンタルヘルス
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/first/index.html

著者プロフィール

鳩貝 暢夫(あすたす経営企画)

中小企業診断士 産業カウンセラー キャリアコンサルタント
2001年に中小企業診断士登録。勤務していた企業での業務経験を活かし、製造業、飲食業、IT関連、サービス業等の経営革新計画作成支援、ものづくり関連の補助金等の支援、働き方改革・人材育成支援、6次産業化支援、ベンチャー企業への業務改善支援などを行っている。

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