クレーム対応の方法を定め、迅速、適切に記録に残し処理している
不満や苦情はチャンスになり得る
顧客の声は、企業を映し出す「鑑」です。顧客を話し手に回らせることによって、顧客の真のニーズを把握することができます。顧客の声のなかでも、特に不満や苦情(クレーム)は、中小企業にとってチャンスとなり得ます。不満や苦情が聞かれる時は、イノベーションの機会を示す兆候といってよいかもしれません。決して、その場しのぎの対応をしてはなりません。
多くの顧客は、不満があっても、苦情をいいません。苦情をいわず、その企業から去っていくのです。逆に、苦情をいう顧客は、今後ともその企業を利用し続けようと考えている顧客であることが少なくありません。
顧客の不満は、苦情というかたちで顕在化させることが有効です。そのためには、普段から、顧客満足保証の姿勢や交換、返金、修理などに対する方針を顧客に周知しておき、顧客が不満や苦情をできるだけいいやすくしておくことが重要です。また、コメントカード、フリーダイヤル、アンケート、Webページなどを活用して、苦情を聞く仕組みを構築しておくことも有効でしょう。
苦情への対処法
ただし、単に苦情を聞くだけでは不十分です。苦情への対応が不適切であれば、顧客の不満を増幅させ、悪い口コミの発生が促進されてしまいます。
一方、苦情へ適切に対処することができれば、それをきっかけとして、顧客との絆が、今まで以上に太くなります。苦情は、優良顧客を創造するチャンスにも、よい口コミを生み出すきっかけにもなり得るのです(下図参照)。
一般的に苦情への対応方法は、以下のステップで行うとよいといわれています。
- 謝罪 : 失敗を即座に認める
- 速やかな原状回復 : 例えば、故障している備品を直す・交換する
- 共感 : 顧客の置かれている状況に共感する
- 償いの証 : 顧客が受けたよくない経験を改善させる
- フォローアップ : 顧客の気持ちを鎮めることができたかを確認
Case Study
ピンチをチャンスに変える顧客対応法
L社はプリンター付き血圧計を何千台か販売したが、あわせて同製品の不具合の対応も3年間くらいやることになった。もちろん修理は無償で行い、きめ細かく対応した。医療業界では自社の製品ではないにもかかわらず、同社がこのように丁寧なアフターメンテナンスをしたことが高く評価された。そして、このメンテナンスによる評判がきっかけでエンドユーザー約2,000件との口座を開設することができた。血圧計が置かれている各施設を1件1件回って修理したことが信用につながったようだ。
(脱水機等製造・8人)
M社はトラブルがある度に顧客にクレームをつけられることがある。トラブルはシールメーカーの責任ではないことを示すため、シール業界の6~7社が集まり、共同で具体的な事例による免責集を作っている。
(機械用カーボン等製造・175人)
N社はクレームの共通化を図り、同じミスを二度とすることがないように全員が協力する。さらに、一連のクレーム対策活動のインセンティブとして、クレームがなかった場合、1営業日ごとに1万円を積立て、年2回従業員に配分する。ただし、クレームが1 回でもあったら積立金はゼロからやり直しになる。
(非鉄金属の加工・30人)
Step Up
クレーム情報を関連する従業員全てが共有し、顧客満足の向上に役立てている
「クレームは、企業にとっての無料のコンサルティングである」といわれます。クレームには、経営の改善のヒントが含まれています。従って、クレーム情報は、関連する従業員すべてが共有し、顧客満足の向上に役立てていくことが大切です。
そのためには、クレーム情報の収集システム(例えば、クレームメモの作成、顧客アンケートの実施など)や、クレーム情報の共有システム(例えば、会議でのクレーム情報共有など)を用意しておくことが不可欠です。