生産性の向上に期待がかかるRPAとは?
最近RPAという言葉をよく聞くようになりました。しかし、まだまだRPAに関する誤解も多いようです。生産性の向上につながるというRPAですが、そもそもRPAとは何なのか? そして、どのように導入を図ればよいのか?・・・
(掲載日 2019/02/28)
RPAによる効率化
1. 深刻化する人手不足のなか、業務の効率化が必要に
厚生労働省が発表した2018年12月の有効求人倍率は、1.63倍でした。仕事の数を、仕事を求める人数で割ったこの値は、大きいほど人手不足の状態であることを示しており、現在の倍率は、1974年1月以来となる約44年ぶりの高い水準が続いています。今後も、少子高齢化にともない、ますます生産年齢人口が減少するので、人手不足の継続が懸念されます。
一方、労働者の育児や介護との両立など生活スタイルの多様化を受けて、企業には、働き方改革が求められており、従業員の長時間労働の是正が企業の課題となっています。
このように、人手不足は今後ますますの深刻化が懸念されており、少ない労働時間で業務をこなすためには、生産性の向上が必要となります。
しかし、公益財団法人日本生産性本部がOECDのデータベースなどをもとに毎年分析・検証し、公表している「労働生産性の国際比較 2018」によると、2017年の日本の時間当たりの労働生産性はOECDに加盟している36カ国中20位に止まっており、主要先進7カ国に絞ると最下位の状況が長年にわたり続いています。
2. RPAとは
そこで、事務処理の生産性を向上する方法として、「Robotic Process Automation」の頭文字をとったRPAが注目を集めています。
RPAには「Robotic」という言葉が含まれていますが、人型ロボットや産業用ロボットのようなハードウェアのロボットではなく、ソフトウェアのロボットによるパソコン操作の自動化を意味します。
RPAは、デジタルレイバー(コンピューターによる仮想的な労働者)とも呼ばれ、教育のコスト削減や離職のリスクがある人間に代わる業務の担い手となることが期待されています。
RPAの導入により、従来は人手に依存していた下記のような操作を自動化できます。
例えば、
(1) データの収集
(2) 販売管理システムに蓄積されたデータを経理システムに入力するなど、ウェブやERPソフト(統合業務基幹システム)などの操作
(3) システムから出力されたデータの表計算ソフト用ファイルへの格納
(4) メール送信などの定型的なパソコン操作
などです。
とくに、日次や週次、月次など定期的な業務や、多くの登録を繰り返す業務、複数のアプリケーションをまたいで実施する業務 、人手による作業ではミスが発生しやすい複雑な業務に対し、RPAの能力が発揮されます。
また、RPAは基本的に、データの流れや問題解決の手順を示したフローチャートを基に作るので、導入にあたっては、高度なプログラミングの知識は不要です。そのため、明確な処理手順がマニュアルなどに記されているような場合には、情報システム部ではなく、経理・財務部や人事部、総務部などの業務部門が主導しRPAの導入を行った事例も多くあります。
3. RPAのメリットと懸念点
導入のメリットとして、業務処理が高速化することで処理時間が短縮できます。さらに、休憩時間や休暇が不要なので、24時間365日の稼働が可能となる一方で、疲労等に起因する人為的なミスも撲滅できます。
したがって、RPAの稼働により、創造性が必要となる業務や中核事業に人員を割り当てられるようになるので、より付加価値の高い成果が上げられるようになるのです。
今後、AIとの連動により、定型業務のみならず、自然言語解析や画像解析、音声解析などの非定型業務もRPAで代替できることが期待できます。さらに、統計データを用いた分析を組み込めれば、RPAが人間より短時間で的確な判断を下すこともできるようになります。
一方、懸念点としては、業務システムなどの仕様変更により、RPAが誤作動するリスクがあります。たとえば、業務システムなどがバージョンアップすることにより、画面内の入力欄の配置や順番、さらには名称が変更されることが考えられます。それにともない、適切にRPAも変更を加えなければ、誤動作や使用不可になってしまいかねないので、RPAのメンテナンスは必須と言えます。また、RPAが稼働するコンピューターのシステム障害などにより、RPAが稼働できなかった場合のリカバリー対策は欠かせません。
また、プログラミング開発による作りこみと比較して、RPAによるシステム構築は容易とはいえ、構築にあたっては一定のITリテラシーが必要となります。
4. RPAの導入手順例
導入にあたっては、まず、現在の業務を整理し、自動化できる業務を見極めることが重要となります。その見極めにあたっては、導入可能性の評価が必要であり、とくに重要な処理に対しては、机上検証のみならず、可能ならば使用を予定する実際のRPAソフトを用いたシミュレーションにより実現可能性を検証することが望ましいです。
RPAの種類としては、「WinActor」「UiPath」「BizRobo!」「Automation Anywhere」「Blue Prism」などがあります。有料のRPAソフトのなかにも、一定期間、無料で使用できる評価版が用意されているソフトがあります。その検証結果を踏まえて、採算性の検証や導入計画の策定、体制の構築を実施し、導入の展開を図ります。
当初は、最小限の部分に導入を図り、業務の運用が始まったら、適用範囲の拡大を検討するのが効果的です。
5. 中小企業にもRPA導入の検討を
RPAは、2015年頃から欧米で注目され始めました。近年では、日本でも、大企業を中心としてRPAなどによるITを用いた業務の効率化が積極的に展開されており、大手金融機関の間接部門などでRPAを活用した成果も報告されています。
しかし、2018年月8月に中小企業基盤整備機構が発表した、「IT導入に関するアンケート調査報告書」によると、中小企業の過半数がITによる生産性向上を行っていません。同機構は、もし、現状の生産性のまま就業者数が減少すると、2016年に522兆円だった国内総生産(GDP)は、2030年には約60兆円減の465兆円になってしまうと試算しています。
ただし、同調査によると、ITを未導入の企業の54%が、ITの有効性を理解しており、ITを活用することで業務効率化・生産性向上ができると思っています。
RPAは構築のための多くの情報をインターネットなどで収集することができます。また、自社のみでは構築が難しいようであれば、ソフトウェアを扱う企業やITコンサルタント、中小企業診断士などへのご依頼を検討してはいかがでしょうか。
中小企業の皆様にも、業務の生産性の効率化のために、是非、RPAなどによるIT導入のご検討をいただきたく思います。