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ダイバーシティで経営力の向上を!

働き方改革関連法の施行を目前に控え、ダイバーシティ経営に関する注目も高まってきています。多様な人材を活かすダイバーシティ経営の方法とは・・・

(掲載日 2019/02/06)

多様な人材を活かすダイバーシティ経営

 経済産業省は、経済のグローバル化や少子高齢化が進む中で、企業競争力の強化を図るためには、女性、外国人、高齢者、障がい者を含め、一人ひとりが多様な能力を最大限に発揮して価値創造に参画していくダイバーシティ経営の推進が、必要かつ有効な戦略としています。

※参考:経済産業省「新・ダイバーシティ経営企業100選」WEBサイト
http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/


 ダイバーシティ経営とは、「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげていく経営」のことです。この「多様な人材」とは、性別、年齢、障がいの有無などの多様性だけではなく、キャリア、働き方などの多様性も含みます。

 しかし、推進する一方で、実態は中央省庁においても障がい者雇用率の水増し が起こり、中小企業では多様な人材の活用は売上につながるのか、対応ができるのかと躊躇する経営者もいます。

 今回は、女性、高齢者や障がい者の雇用を経営力向上に繋げている企業の一例について報告します。


高齢者の活躍推進

 エビヌマ株式会社 (東京都葛飾区)は、創業1967年の文具事務用品商社で、オフィス用品の販売からオフィスのトータルコーディネートまでワンストップで行っています。

 高齢者雇用に関しては、定年(60歳)はありますが希望すれば継続雇用を行っています。現在は60歳以上3名、70歳以上1名の従業員が働いています。

 同社における高齢者雇用のメリットとしては、1) 業務に慣れていてノウハウがある、2) 長年働いているので会社と従業員の信頼関係がある等があります。
 雇用される従業員のメリットは、1) 社風を理解して、他の従業員との関係もできている慣れた職場で働ける、2) 知識、経験を活かせる等があります。

 勤務形態としては、高齢者が年齢の若い上司の下で働くのではなく、それぞれ業務が分かれています。給与に関しては、定年時の最終賃金を継続支給できるように設定しています。
 働きやすい環境を整えているのは、同社の経営方針である「地域社会の発展向上に貢献する」に即しており、地域の雇用創出に貢献しています。

 経済産業省の新・ダイバーシティ経営企業100選では、高齢者雇用で大事な点として、高齢者側では、若手との円滑なコミュニケーションを大事にする人柄が重要とされています。会社側は、高齢者が働きやすい職場作り(機械の配置や業務の難易度を配慮)、多能工化による柔軟な職場体制の整備、若手に引き継ぐ場の創出などが行われています。


障がい者の活躍推進

 障がい者の社会参加を推進している企業をご紹介します。

 合同会社楽膳(福島県福島市)は、障がいの有無に関係なく誰もが使いやすい会津漆器を作っています。開発や生産工程のどこかで必ず障がいを持つ仲間が関わっていて、商品の購入が施設の収入増加につながり、障がい者の社会参加と地場産業の活性化を目指しています。運営で心がけているのは、障がいのある人、ない人それぞれの得意・不得意を補いながら自分らしさを発揮できるようにすることです。


 株式会社LORANS.は、カフェ併設のフラワーショップを運営(3店のうち原宿店は就労継続支援A型※として運営)しており、社会貢献活動を長続きさせていくことを念頭に事業を行っています。障がい者は、働きたいという思いを持っていても、現状は雇用された際に単純作業に従事したり、賃金が安い等の課題がありますが、同社ではやりがいを持って働く仕事を提供しています
※就労継続支援A型:指定を受けた事業所は障害者と雇用契約を結び、就労の機会を提供する(B型は雇用契約を結ばない)。事業所での作業により能力や知識の向上を図り、一般就労に向けた支援を行う。

 業務は花束の製作、生花の手入れ、接客、カフェの仕込み業務などのチームに分かれており、各業務を経験しながら各自が得意なことを担当するようにしています。また、チームは福祉に精通している従業員がまとめています。
 雇用のポイントとしては、採用時に人柄を重視しています。人柄がいい人、社風に合う人であれば、採用後に問題が起こりづらいです。また、働いてみないとわからないこともあるため、試用期間を設けており、その後に正式採用としています。障がい者に対しては、責任感を持って働くことを伝えています。また、「配慮はしても優遇はしない」という接し方をしています。

 障がい者雇用における企業側の課題としては、常用雇用45.5名に1名の障害者法定雇用率(2.2%)が達成できず、平成29年には、全体の50%を占める未達成企業が、罰則金293億円(約146,000人分)を支払っています。同社は、こうした状況の中、障がい者雇用の推進のため国家戦略特区の“障がい者雇用”の活用を予定しています。
 国家戦略特区の“障がい者雇用”とは、有限責任事業組合(LLP)を発足することで、複数企業が連携して障がい者雇用の推進に取り組むことができる特例のことです。例えば連携する事業出資者になると、障がい者の不足雇用数分の仕事確保のためにLLPに定期業務発注を行い、その結果、障がい者の直接給与と働く幸せの創出に寄与します。
※参考:内閣府・国家戦略特区WEBサイト
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/menu.html#koyou



 長年、就労継続支援A型で障がい者の自立支援事業を行っている株式会社咲(熊本県熊本市)代表取締役の早咲京子氏は、「健常者も障がい者も皆同じで、できること、できないことがある。各自の個性を尊重する社会を築かないといけない。」と述べています。


女性の活躍推進

 仕事と家庭の両立を支援するために柔軟な勤務体制として、時短制度、フレックスタイム制、在宅勤務制度などを整備している企業が増えています。
 また、女性が活躍する場の創出として、責任ある業務を任せたり、プロジェクトに参画をさせることで、能力を発揮させています。
 さらに、急な休みや勤務時間の制約の対応として、1つの業務をチームで対応をすることやチームの1人ひとりが各種の業務を対応できるようにする(多能工化する)ことで、代理が対応できる体制を整えています。このような体制は、女性のための施策のみならず、一般的に業務が人についていて、その人がいないと進捗がわからないという状況(属人化)の改善、および近年に利用が進んでいる「専門スキルのある人材を時間単位で雇用する」場合に有効な体制となります。

 女性の活躍を推進している企業は、組織全体の業務効率化や女性の視点を活かした製品・サービスの創出などが行われています。


ダイバーシティ経営の推進

 誰もが働きやすい環境を整え、個々の人材に配慮した業務を提供することで、各自の能力を最大限に発揮することができます。ダイバーシティ経営を行うことで企業にとってもイノベーションが生み出され、価値創造につながっています。
 自社ですぐに大きな変革はできない場合でも、意識を持って改善していくことで、変化して成果を出すことができます。


著者プロフィール

高田 直美(直支援事務所 代表)

中小企業診断士/環境省主催「willlab」メンター/ベンチャー育成支援事業 専門家/南伊豆町商工会 専門家委員/ビジネス相談員/地域創業アドバイザー
企業にて、マーケティング、戦略、研修等に携わる。中小企業診断士として、経営支援、研修講師、執筆、各種申請支援等を行う。

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