助成金・補助金等、経営力UPの経営情報が満載!

専門家コラム

専門家コラム
会員登録すると、
新規会員登録はこちら
お気に入りに追加 シェアツイートLINEはてぶ

事業計画を効果的に機能させる進捗管理4つのポイント

事業計画を“作って終わり”にしていませんか? それでは宝の持ち腐れです。時間と労力をかけて策定した事業計画を成果に結びつけるには、計画通りに進んでいるか「進捗管理」を行うことがとても重要です。今回は進捗管理で押さえておきたい4つのポイントをご紹介いたします。

(掲載日 2024/12/25)

事業計画は進捗管理こそ重要です

皆さま、事業計画は策定済みですか?

事業計画とは“事業部門ごとに具体的な事業活動の実行プランを策定するもの”ですが、本コラムでは企業全体の指針を策定する経営計画も含めたより広い概念でお話しさせていただきます。

事業計画ってなに?どうやって策定するの?と思われた方は、過去の専門家コラムをご参考になさってください。



事業計画を策定済みの方の中には、銀行借入時や補助金申請時等に必要に迫られ策定し、策定後は机の中にしまわれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

事業計画は策定に相応の時間を要します。

そのような事業計画をただ作って終わりにしてしまうのは非常にもったいないです。

本コラムでは、事業計画を有効に機能させるために必須の観点である「進捗管理」について、4つのポイントをお話しさせていただきます。


ポイント1:PDCAサイクルのCが単なる振り返りで終わっていませんか?

進捗管理と言えばやはりPDCAサイクルを回すことが基本です。

皆さまはこのPDCAサイクルを上手に回せていますか?

※筆者作成


P・D・C・A、どれも重要な要素ですが、本コラムではCに焦点を当てます。

事業計画を策定済みであれば、当然ながら計画(P)は策定済みとなりますので、同計画を着実に実行(D)します。

その後、計画対比での実績の検証(C)を行い、計画未達の場合には改善(A)を行っていることと思います。

一見しますと何も支障がないように見えますが、策定した事業計画が本当に機能しているかどうかを分けるポイントは検証の質です。

単純化した例を挙げてみます。

A・B・Cの3店舗展開の小売店にて、3店舗合計で売上1億円という計画を立てたとします。
実行した結果、売上は9千万円どまりとなり、「計画対比1千万円の未達」という検証結果を得ました。

さて、それでは同検証結果から来年度こそ売上1億円を達成できる改善策を考えてくださいと言われた場合、皆さまでしたらどのように検討されますか?

・・・おそらく検証材料が足りないと思われるのではないでしょうか。

たとえば、A・B・Cのどの店舗に問題があるかがわかりません。

年間を通じて不調だったのか、特定の時期のみ不調だったのかもわかりません。

売上を客数×客単価に分解した場合に、客数に問題があったのか、客単価に問題があったのかもわかりません。

策定した事業計画を有効に機能させるためには、計画未達の際にどのような改善行動によって軌道修正を図るかが肝になります。

その改善行動の効果を最大化するためには、検証過程こそが最も重要です。

PDCAサイクルのCは「振り返り」ではなく「検証」です。

「計画対比1千万円の未達」程度の情報量では単なる振り返りにしかなっておらず、有効な改善策の検討にはつながりません。

当たり前のことをお話ししたように聞こえるかもしれませんが、取り組みの実行に比べ管理はおろそかにされがちです。

ましてや業務ご多忙の中で、皆さまがたはじっくりと検証する時間を確保できているでしょうか。

私のこれまでの支援経験上、Cが振り返りにとどまり、Aが「来年度は目標必達に向けて努力する」という精神論で終わってしまうPDCAサイクルを多数見てきました。

本コラムをお読みの皆さまには、ぜひもう一段レベルの高い経営を行っていただくためにも、検証を意識してPDCAサイクルを回すことをおすすめします。


ポイント2:KPIを設定してみませんか?

皆さま、KPIという言葉をお聞きになられたことはございますか?

KPIとはKey Performance Indicatorの略で「重要業績評価指標」を意味します。

わかりづらいですので、単純化した例を挙げてみます。

小売業で売上1億円という事業目標を立てたとします。

売上を客数×客単価に分解する場合、この企業では客単価は時期によらずほとんど一定であると仮定しましょう。
そうしますと、客数の増減が売上1億円達成には重要な要素となります。

この場合の客数がKPIとなります。

KPIを設定することにより、施策実行者はより身近な目標をもって行動することができますし、管理者も、目標に対する現在の進捗や成果の達成度合いが見えやすくなります。

※筆者作成

※筆者作成


注意点としまして、KPIは計測できる指標を設定することが基本です。

計測できないと進捗管理における検証が曖昧なものになってしまいます。

複数のKPIを設定することに問題はありませんが、あまりに複数になりますと管理が複雑になりますのでおすすめできません。

また、KPIを達成しても目標を達成できない場合は、目標達成のための重要な指標が他にある可能性が高いですので見直しが必要です。


ポイント3:進捗管理は経営層が主体となって行いましょう

皆さまは事業計画の進捗管理にどの程度関与されてますか?

なぜ経営層の関与が必要なのかは、事業への裁量をほとんど持たない一般社員が主体となって進捗管理を行う場合を考えるとわかりやすいです。

例えば、社長が中心となって事業計画を策定しましたが、その後の進捗管理は事業部門に一任していたとします。

さらに事業部門でも、部門長が特定の一般社員任せにしていたとします。

この一般社員が一生懸命にPDCAサイクルを回そうとしてもおそらくうまくいきません。

なぜならば一般社員の裁量・マンパワーでは、社内外に対し実行し得る改善策が限られるからです。

ボトムアップはもちろん大事ですが、会社の行く末を左右する事業計画の進捗管理は社長をはじめとする経営層のトップダウンで行うことが望ましいです。

ある程度規模の大きい会社ですと、経営層で進捗会議を行い、その分科会的な位置付けで担当者会議を行うという手段も取り得ますのでご参考までに。

また、社長をはじめ多忙な経営層の関与を担保するために、事業計画策定時点で向こう1年間の進捗管理日をあらかじめスケジューリングしておくことをおすすめします。

事業計画の進捗管理は、関係する部門が一堂に会する会議形式で行われることが一般的です。

同会議開催日を都度調整しますと、先約や業務多忙を理由に欠席することが頻発します。

すると、次第に会議の存在意義が薄れはじめ、最終的には「計画対比1千万円の未達」レベルの簡単な振り返りに終始し、中身の伴わない進捗管理に成り下がってしまいます。

そうならないためにも、事前に進捗管理日を決めておくことが重要です。

それでもやむを得ない事情により欠席する場合には、必ず出席者と同レベルで進捗を理解している代役者を立てるルールを徹底し、会議の有効性を担保するようにしてください。

事業計画の進捗管理は経営者主導で実施することがポイントです



ポイント4:進捗管理は最低でも月に一度は行いましょう

皆さまは事業計画の進捗管理をどのくらいの頻度で行っていますか?

計画期間の長さによって一概には言えませんが、一般的には月次で行うことが望ましいとされています。

極端な例ではありますが、1年間の事業計画に対し半年経過後に1回のみ進捗管理を行う場合、残り半年では取り得る改善策の選択肢が狭まってしまいます。

四半期ではどうでしょうか。

季節性のない事業でしたら一定程度の効果が期待できるかもしれませんが、多くの企業の場合、改善策を検討する頃には環境が変わっているという可能性が高いです。

月次よりも頻度を上げる場合も考えてみましょう。

週次、日次と頻度を上げるほどに当然ですが管理者の負担は大きくなります。
一方、取り組みの進捗という観点では、1日や1週間で状況が大きく進展するものはそこまで多くないのではないでしょうか。

上記より、軌道修正の実現性や管理負荷・効果の大小に鑑みますと、やはり月次での進捗管理を基本に考えることがよさそうです。

ですがあくまで一般論ですので、自社での最適な進捗管理の頻度を試行錯誤されるのもよいと思います。

また、基本の頻度は月次ですが、社長の参加は四半期に一度のみ等メリハリをつけた進捗管理方法をご検討されるのもいいかもしれません。


まとめ

・改善行動の効果を最大化するためにはPDCAサイクルのC(検証)こそ重要
・進捗管理にあたり、KPIの設定は非常に有効
・進捗管理は経営者や部門長等の事業権限を持つ方の関与が必須
・月次での進捗管理が望ましい

本コラムが、事業計画の効果的な進捗管理につながりますと幸いです。

著者プロフィール

入山 亮平(中小企業診断士)

14年間の銀行業務経験により培った財務・経営分析と事業計画策定・管理支援、資金調達支援に強み。第一次産業に明るいことも特徴。また、事業承継や繁忙期等の一時的な人材確保にも知見を有する。現在は行政の補助事業に運営側から関与し補助金申請支援への理解を深めている。

< 専門家コラムTOP

pagetop