SDGコンパスで会社を変革 持続可能な経営への「5つのステップ」
SDGsを経営に取り入れることは、中小企業においてもメリットがあります。しかし、どのように取り入れればよいか、わからない方も多いはずです。そこでSDGコンパスの活用をおすすめします。SDGコンパスで示された5つのステップを踏み、サステナブルな経営に挑戦してみませんか。
(掲載日 2024/08/30)
SDGコンパスで経営革新! 新たなチャレンジとしてのSDGs
はじめに
みなさんご存じのとおり、SDGsは「誰ひとり取り残さない」という理念のもと、「サステナブルな世界」を実現するために、2030年までに達成することを世界が決めた17の目標です。そしてキーワードのひとつが「われわれの世界を変革する」です。SDGsを、みなさんの会社を変革する、新たなチャレンジの指針(コンパス)として活用しましょう。チャレンジの必要性
会社が生き残っていくためにはチャレンジし続けることが必要です。環境は常に変化しており、製品・サービスのライフサイクルも短くなっています。このような状況では、同じことをしているだけではビジネスも人材も先細りになってしまいます。
しかし、方向を定めず、やみくもにチャレンジすることはリスクも伴います。
環境をとらえるコンパスとしてのSDGs
経営者は、環境の変化を鋭敏に感じ取り、未来の会社像を描いていかなければなりません。環境には、取引先、競争相手、労働市場など、ビジネスに直接関係するものから、日本や世界の情勢、地球環境のように、広く大きなものまであります。
さまざまな変化を読み取り、重点的にチャレンジしていくテーマを選ぶためには、道筋を示してくれるコンパスが必要です。
SDGsの目標は、世界の英知が地球規模で考えたものであり、優れたコンパスになるのです。
環境省は、SDGsを大きくとらえるための「木の図」を描いています(図-1)。17の目標を、環境、社会、経済という三層構造でとらえることにより、会社経営が、地球環境および社会基盤という土台の上に成り立っていることが分かります。
世の中の動きを大きくとらえ、会社の未来を描くために、この木の全体をより高いところから俯瞰してください。
資金繰り、人手不足、価格転嫁、物流問題などの問題を抱えているとき、世界情勢や環境のことを考えている余裕はないと思われることでしょう。
しかし、いま、政府や大企業が取り組んでいることは、さまざまな政策や取引関係を通じてすべての企業に広がっていきます。
受け身の姿勢で待つのではなく、10年後、20年後の会社をイメージし、それを実現するためのチャレンジに、いますぐ取りかかりましょう。
ビジネス環境が複雑になり、未来を予測することがむずかしくなっています。そのようなときこそ、地球の未来のためにつくられたSDGsが、進むべき方向を示してくれるのです。
SDGコンパスの活用
SDGsを経営に活かす方法を示したものに「SDGコンパス」があります。これは、GRI*1、国連グローバル・コンパクト(UNGC)*2、wbcsd*3がつくったガイドラインであり、企業が経営戦略とSDGsを整合させ、SDGsに貢献していくための指針を示したものです。*1 GRI…サステナビリティに関する国際基準と情報公開の枠組み作成を目的とした国際的NPO
*2 国連グローバル・コンパクト(UNGC)…国連と民間が協力して持続可能な成長を実現するための枠組み
*3 wbcsd…持続可能な開発のための世界経済人会議
SDGコンパスは、5つのステップからなっています。(図-2)
ステップ1 SDGsを理解する
ステップ2 優先課題を設定する
ステップ3 目標を設定する
ステップ4 経営へ統合する
ステップ5 報告とコミュニケーションを行う
ステップ1を、経営環境を大きくとらえることと考えると、一般的な経営革新の方法に通じるものがあります。
すなわち、環境を把握したうえで経営上の優先課題を決定し、チャレンジすべき目標を設定してPDCAサイクル*4を回し、結果を社内外にアピールするというステップになります。
各ステップでは、次のことを実行します。これ以降は、「SDGコンパス SDGsの企業行動指針(日本語訳)」を参考に説明します。
*4 PDCAサイクル…計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、対策・改善(Action)という4つのステップから成るマネジメントサイクル
ステップ1 SDGsを理解する
はじめに、SDGsについて知り、会社にとってのチャンスと責任を理解します。SDGsを理解して、さまざまな活動に取り組むことにより、新たな事業のチャンスを見出し、リスクを減らすことができるようになります。
SDGsを、経営戦略を考えるときのコンパスとして活用し、売上アップ、新市場開拓などのしくみをつくることが大切です。
一方、すべての会社は、関連法令を遵守し、人権を尊重するなどの基本的な責任を負っていることも理解しなければなりません。
ステップ2 優先課題を決定する
SDGsの目標に対する影響の大きさにより、優先して取り組む課題を決めます。このとき、会社のビジネスに直接かかわる部分だけではなく、原材料の供給から、製品の販売、使用、廃棄にいたるまでのバリューチェーン全体を考えることが大切です。
影響を評価する際は、資源のリサイクルなどのプラス面だけではなく、原材料調達において不法に森林を伐採していないかなどのマイナス面も考慮してください。
そのうえで、プラス面を伸ばし、マイナス面を解消するためにチャレンジする課題を決定します。
ステップ3 目標を設定する
優先課題を決めたあとは、目標を設定します。目標には、達成期限と達成基準を明記しておきましょう。このとき大切なことは、現状からではなく、経営者が描いている理想の姿から逆算して考えることです。
「ムーンショット」と「バックキャスティング」という言葉が、このような考え方を表しています。
アメリカのジョン・F・ケネディ大統領は1961年にアポロ計画を発表し、1960年代に人類を月に着陸させると宣言しました。そして、1969年にアポロ11号が月面着陸に成功したのです。このように、困難だがチャレンジしがいのある壮大な計画のことをムーンショットと呼ぶようになりました。
ムーンショットが実現した未来から逆算(バックキャスト)して、いまどのようなイノベーションが必要なのかを考える思考法がバックキャスティングです。
ステップ4 経営へ統合する
「経営へ統合する」とは、ステップ3で設定した目標を、経営のPDCAサイクルに取り込んでいくことです。PDCAサイクルをまわして目標を達成するためには、経営者がリーダーシップを発揮することが不可欠です。
優先課題や目標は、調達部門、製造部門など、限られた部門のみに関係することかもしれません。しかし、関係部門だけが活動するのでは、ムーンショットのような夢のある計画を実現することはできません。
したがい、全社一丸となって取り組んでいくように、経営者として強力なリーダーシップを発揮してください。大きなことを成し遂げるためには、すべてのメンバーが同じ目標に向かって進んでいくことが必要です。
ステップ5 報告とコミュニケーションを行う
SDGsを新たなチャレンジに活かしていること、それにより成し遂げたことを、社内外の関係者にアピールすることが大切です。どんなに素晴らしいチャレンジをしていても、それを公表しなければ理解してもらえないからです。積極的にアピールすることにより、取引先や金融機関だけではなく、政府・自治体、就活中の学生に働きかけることができます。自社の取り組みをアピールすることにより、従業員のモチベーションを高めることもできます。自社のチャレンジが社会課題の解決に貢献していることを知れば、そこで働くことの意義を感じられるようになります。
ステップ5の後に、これまでの取り組みを振り返り、ステップ2に戻って次の課題にチャレンジしていきます。
まとめ
SDGsのゴールは、われわれの世界を変革し、サステナブルな世界を実現することです。それを、新たなチャレンジにより会社を変革し、成長させていくためのコンパスとして活用しましょう。
「SDGコンパス」のステップを踏むことによって、SDGsを会社経営に活かし、大きな夢の実現に向かってチャレンジしてください。