展示会出展の成果を上げるアフターフォローのポイント
展示会に出展したけど、成果が得られなかった…。こんなコメントに共感する中小企業の経営者も多いのではないでしょうか。展示会の成果を上げるには出展期間中だけでなく、出展後の取り組みも重要です。はたして効果的なアフターフォローとは? 専門家がポイントを解説します。
(掲載日 2024/01/30)
展示会での出会いを「成果」に繋げる展示会フォローアップ術
1.展示会出展の目的と成功のポイント
最初に、展示会出展の目的について確認しましょう。展示会出展の目的は以下の3つです。(1)見込み客(リード)の獲得
展示会出展の最も重要な目的は見込み客の獲得です。見込み客の獲得方法には名刺交換、アンケート、商談カード等があります。見込み客をリードとも言います。
(2)商談の獲得
BtoBビジネス(企業が企業に対して商品やサービスを提供するビジネスモデル)の場合は、受注の前段階である商談数が展示会出展の成果を測る指標となります。
(3)受注または売上の獲得
BtoCビジネス(企業が一般消費者に商品やサービスを提供するビジネスモデル)のように展示会場で販売可能な商材を展示する場合は、受注数や売上を指標にします。
次に、展示会を成功させるためのポイントを確認しましょう。
(1)魅力的なブースを作る
多くの企業が出展する中で、来場者に足を止めてもらうためには魅力的なブース作りが欠かせません。
(2) わかりやすいコンテンツを提供する
ブースで動画を流したり、パンフレットを配布したりすることにより、来場者が商品・サービスのメリットをすぐに理解できるコンテンツを提供することが重要です。
(3) 効果的なアフターフォローを計画しておく
展示会に出展する際には、出展中のことはもちろん、展示会終了後の展開についても計画しておく必要があります。
(4)セールストークを統一する
説明員によって言っていることが違うのは言語道断です。説明方法も説明員の個性のうちですが、セールストークの内容(質・量)については予め文章化しリハーサルを行う等統一する必要があります。
2.展示会のアフターフォローの基本
展示会のアフターフォローのステップは、下図の通り、①見込み客(リード)のランク分け、②リスト化、③お礼メール・お礼状、④ランク別営業フォローです。
①見込み客(リード)のランク分け
会期中に収集した見込み客(リード)をランク分けします。ランク分けの例は、下図の通り、縦軸に購買力、横軸に関心度あるいは商品・サービスの適合性の評価軸を作り、4つの象限に見込み客(リード)を当てはめます。
ランク分けには様々な考え方があります。例えば購買力の小さいBランクより購買力の大きいCランクの方が、優先度が高いと思う人がいるかもしれません。しかし、中小企業が大手企業から受注するためには時間を要しますので、Bランクへのアプローチが優先すると考えます。Cランクはセミナー招待などによる関係構築から進めた方が良いでしょう。
②リスト化
ランク分けした見込み客(リード)情報をデータ入力しリスト化します。昨今では名刺管理システムを活用する方法や、データ入力会社に依頼する方法があります。なお、名刺管理システムの効果として顧客情報を社内で共有するとともに、システムによっては反社会勢力企業を簡易検索出来る機能もあるので有用です。
③お礼メール・お礼状
ランクに関わらず、全見込み客(リード)へお礼メールまたはお礼状を送ります。お礼メールであれば3営業日以内、お礼状であれば1週間以内が目安です。お礼メールやお礼状は、あくまでも「お礼」として送り、ここで営業はしないことが重要です。④ランク別営業フォロー
ランク別営業フォローの例は以下の通りです。・Aランク 営業訪問:仮説提案
・Bランク 営業訪問:ニーズ確認
・Cランク セミナー招待・季節の挨拶
・Dランク メルマガ配信による情報提供
3.展示会出展の「成果」を出すために必要なアフターフォロー計画
①展示会のスケジュールを立てる
展示会のアフターフォローは会期後の1か月程度を見てください。会期後の1か月を十分なアフターフォローに充てるには、計画的に展示会を実施しなければ、なかなかできないことです。展示会出展に必要な全体スケジュールの例は下図の通りです。
※筆者作成
たとえば、展示会出展を3か月後に計画した場合、2つの展示会を同時進行するとなると、下図のようになります。このようなスケジュールで、十分なアフターフォローの時間が取れるでしょうか。次の展示会の準備に追われて、せっかく収集した見込み客データが放置され、営業のタイミングを逃してしまうことが多いのではないでしょうか。複数の展示会を実施する場合は特に注意が必要です。
※筆者作成
②自社に適した展示会後のプロモーションは何かを考える
プロモーション(広義の販売促進)とは、人的販売、販売促進ツール(狭義の販売促進)、クチコミ、パブリシティ、広告という各手法を示します。具体的な内容は下表の通りです。この中から、自社に適した展示会後の プロモーションは何かを考えてみましょう。人的販売 | 経営者や従業員による営業活動、お店や展示会での商品説明、展示会出展、自社催事、体験会、工場見学など |
販売促進ツール | チラシ、カタログ、サンプル、クーポン、ポイントカード、懸賞、POP、ダイレクトメール、ホームページ、メールマガジン、お店の看板など |
クチコミ | 口伝えやインターネットなどによる、消費者同士のネットワークにより伝わる宣伝効果 |
パブリシティ | テレビ、ラジオ、新聞、インターネットなどのメディアに無料で取り上げてもらうもの |
広告 | テレビ、ラジオ、新聞、インターネットなどのメディアにお金を払って行う宣伝。協賛、スポンサードなど |
③展示会と顧客との関係性の醸成
下図は、縦軸に「顧客の量」、横軸に「顧客の質」を表し、顧客を、①自社(または商品・サービス)を知らない「潜在顧客」、②知ってはいるが購買に至っていない「見込み客」、③購買に至った「顧客」、④自社(または商品・サービス)をリピート購買してくれる「優良顧客」に分けたものです。ここに、前述(2)の展示会に適したプロモーション例を記載しました。「潜在顧客」は「自社(または商品・サービス)により課題を解決できるお客様」「自社(または商品・サービス)を知って欲しいお客様」です。展示会の会期前に、SNSやプレスリリース等のプロモーションを活用し、より多くの「潜在顧客」に“知ってもらう”ことが重要です。会期中は、より多くの人にパンフレットを渡したり、アンケートに答えてもらう等をして、見込み客を獲得します。会期後は、展示会で獲得した見込み客(リード)を、お礼メールや営業訪問等のプロモーション(広義の販売促進)を用いて関係を醸成します。
このように、顧客の各段階において、適切な情報提供やコミュニケーションを行うことで関係性を構築することが重要です。
さて、1社を受注するために、どれだけの見込み客(リード)を獲得すれば良いでしょうか。仮に、20社を営業アプローチして1社を受注する(受注率5%)と仮定します。では、この場合、20社の見込み客(リード)獲得のために何社にプロモーションする必要があるでしょうか。たとえば新規顧客へのダイレクトメールのレスポンス率が1%と仮定すると、2,000社にダイレクトメールを送る必要があります。
4.感動するアフターフォローと嫌われるアフターフォロー
先日、ある会合で出会った経営者から、翌々日に手書きの葉書が届きました。万年筆で書かれた宛名とメッセージ、葉書の裏面には従業員の笑顔の写真が並び「ありがとう」と印刷されています。メールのお礼状が当たり前となった今、このように手書きの葉書が届くと感動が大きく、その企業の名前は必ず記憶に残ると思います。一方で、嫌われるアフターフォローは以下が考えられますので気をつけてください。
・お礼メールで営業する
・Cランク・Dランクの見込み客に対して翌営業日に電話をする
・来訪して商品機能の説明を延々とする
・あれもこれも提案する
・専門用語を使う
・しゃべりすぎる
・競合他社の悪口を言う