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創業期の重要課題「資金調達」成功のポイントとは?

創業期は設備投資や店舗賃料など、なにかと入用になるものです。実際に創業時の課題に「資金調達」と答える事業者が少なくありません。円滑な資金調達は事業遂行のアドバンテージになります。そこで、創業支援の実績が豊富な専門家が創業期の資金調達のポイントを解説します。

(掲載日 2023/08/25)

創業期に知っておきたいお金と事業計画書の話

1.創業期に必要な資金とは


これから創業しようとしている皆さんは、いろいろな準備をされていることと思います。既に創業された方は、準備は十分されていたでしょうか。私自身、準備万端とは言えなかったのですが、一つだけそれなりに準備したことがあります。それは当面の生活資金の確保で、何年か前から少しずつ積み立てていました。

2022年7月の東京商工会議所 新事業・イノベーション創出委員会による「創業・スタートアップ実態調査」報告書において、創業前の課題では「資金調達」が最も多く、創業後の課題では「販路開拓」が最も多かったとされています。創業前には53.3%の方が「資金調達」が課題と回答しており、ほぼ半数が重要なことと捉えていることが窺えます。

創業時に必要な資金は、主に3つになります。①開業資金、②運転資金、③生活費です。

まず、①開業資金は、その名の通り最初に必要となる資金です。例えば、機械設備の導入費、店舗や事務所を借りる際の保証金、事務所の机やパソコン等の備品購入費など、多岐にわたります。

次に、②運転資金です。こちらは事業にかかる原価や経費にあたるものです。例として、仕入代金や人件費、光熱費、通信費、広告宣伝費があります。毎月、事業を進める際に必要になるお金とお考えください。

最後に、③生活費は創業者自身の生活にかかる費用です。これは①開業資金と②運転資金とは性質が異なり、直接事業とは関わりがないため、自己資金を準備することが大切です。

創業期にかかる費用(生活費を含む)を把握しておくことは、事業を円滑に進める上で欠かせません



2.資金の調達方法について


調達方法は主に3つと考えられます。

一つ目は自己資金です。例えば創業融資を利用する際にも自己資金が3分の1程度求められることがあります。創業に向けて長期にわたり積み立てたお金であれば、融資の審査においても目標に向け準備した証として見なされます。

二つ目は、金融機関での融資です。こちらは政府系金融機関である日本政策金融公庫の創業融資や、自治体等の創業向け融資制度を利用した民間金融機関の融資があります。

三つ目は、出資です。ベンチャーキャピタルや、個人投資家からの資金等があります。こちらは出資者に対して、株式等の見返りを提供することになりますが、出資割合には注意が必要です。どちらかというと、スタートアップ企業のように急成長を目指す場合に利用することが多いです。

以上に加えて、機動的な運用はできませんが、補助金も資金調達の一つと言えるでしょう。国や自治体が募集するものの中には、創業前でも応募できる補助金があります。しかしながら、原則として「後払い」ですから、まず自己負担が必要です。また審査もありますし、申請者全てが受け取れるわけではありません。申請から補助金の給付まではかなり時間がかかりますので、計画的な活用が求められます。

補助金は原則「後払い」が一般的です。まずは全額支払う必要がある点にご注意ください



3.融資の流れと審査のポイント


いざ、融資を申し込もうとなっても、どこに行けば良いか迷われるかもしれません。ポイントを絞って説明します。

①いつ申し込むか?


借りるのなら創業前1か月~3か月前頃が目途と考えますが、創業融資制度の要件を金融機関に確認すると良いでしょう。ある程度の事業概要が固まり、店舗や事務所の場所の目途が立った時点が望ましいです。初めての融資は審査に時間がかかるので、1カ月程度は見ておいてください。また、創業融資では決算書を提出できないため、事業計画書を提出する必要があります。事業計画書の記載内容が審査されますので、内容は十分検討してください。

②どこに申し込むか?


中小企業者が事業資金の融資を低利で受けられるように、区や市等の自治体で金融機関に対して融資をあっせんする制度を実施しているところもあります。まずは事業を行う予定の区や市町村に制度があるかどうか、ホームページや事業者向けの担当部署の窓口にて確認することをお勧めします。

なお、上記の制度の利用にかかわらず、融資自体は金融機関が行います。区や市の低利融資がない場合でも、都道府県でも創業融資制度を実施しています。迷ったら事務所近くの地域金融機関(地方銀行や、信用金庫、信用組合等)に相談してみてください。信用金庫や信用組合は営業地域が限られており、地域内の小規模事業者との取引も多く、地域で創業する事業者との接点も比較的多いと思われます。

他には、前述のとおり、日本政策金融公庫でも創業融資を多く取り扱っています。こちらは店舗ごとに担当する業務区域が決まっていますので、事務所予定地の担当店舗はどこかをホームページや電話にて確認のうえご相談ください。

③審査の視点


審査において金融機関が重視することは、自己資金、創業の動機、事業に関する経験やスキル、売上(顧客)の見通し等が挙げられます。また、飲食店や小売店などは店舗の立地が集客に大きな影響がありますので、店舗候補の目途をつけてから相談をしてください。融資が難しいケースとしては、当該事業の経験がない場合や、自己資金がほとんどない場合が考えられます。いずれも創業までに準備しておくことをご検討ください。

なお、創業融資の申込みでは創業計画書(事業計画書)を提出します。内容としては、①創業の動機、②経営者の略歴等、③取扱商品・サービス、④取引先・取引関係等、⑤従業員、⑥お借入の状況、⑦必要な資金と調達方法、⑧事業の見通し(月平均)、⑨自由記述欄(日本政策金融公庫 国民生活事業「創業計画書」から抜粋)となっています。ホームページからダウンロードできますので、融資を利用するかどうかにかかわらず、事業の計画として作成してみるのも良いでしょう。

創業融資を利用する際は、事業計画書の内容が重要です。経験やスキルの棚卸や将来の見通しを入念に検討しましょう



4.補助金申請と活用のポイント


経営相談窓口では、「創業時に使える補助金はありますか?」との相談を受けることがあります。場合によっては該当するものもありますが、基本的に補助金は「後払い」ですので、まずは自己資金を用意する必要があります。そして、「審査」もあるので、全ての事業者がもらえるものではないこと、また、既に支払ってしまった経費は原則、補助金の対象にはならないことにご注意ください。あくまでも、未来の「事業計画」を策定して、それが認められたら交付されることになります。

補助金は、国や自治体等から公募されますが、補助金ごとに目的や対象、申請時期等それぞれ異なります。上手く目的やスケジュールが合えばとても役に立つのですが、「補助金」の名のとおり、「事業を補助」する資金とお考えください。


5.「事業計画書」はなぜ大切か


「事業計画書」はどんな時に必要になるでしょうか。例えば、お金を借りる時、出資を受ける時、新たな取引を始める時、補助金を申請する時など、相手側に事業を説明する手段として提示する場合が考えられます。

とは言え、「事業計画書」はすべて同じ内容というわけではなく、提示する相手によって多少異なります。例えば、金融機関から融資を受ける際は、「この事業者は毎月ちゃんと返済を続けることができる」と思われるような根拠を示すことが大切ですし、もしビジネスプランコンテストに応募する際は、既に世の中にある事業よりも、何かしらの新規性が選考基準として求められる場合があるので、ビジネスとしての新しさを強調するとよいかもしれません。

補助金の申請においても、「事業計画書」を策定することがほとんどです。枚数はA4サイズのワード文書で10枚前後でしょうか。補助金は、公募開始から締切まで2カ月前後のものが多いですが、事業に忙しい経営者の皆さんが、それだけの文書を初めて作成する場合は時間がかかるかもしれません。ですので、創業前にどんな形式でも構わないので「事業計画書」を作ってみて、誰かに見てもらうことをお勧めします。公的機関の経営相談では、中小企業診断士等の専門家がブラッシュアップのお手伝いをしているところがありますので、ぜひ一度ご相談ください。

事業計画の質を高めるには第三者のアドバイスが有効です

著者プロフィール

山崎 文(リエゾンコンサルティング代表)

地方銀行にて主に店舗での融資・外国為替業務に従事する。2007年に中小企業診断士登録後、首都圏の中小企業支援センター職員として創業支援、ビジネスプランコンテスト審査・運営、女性起業家支援や事業承継支援等の経営支援業務に従事。独立開業後は、創業支援や国・自治体等の施策活用支援、中小企業の経営改善支援等を行っている。

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