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社員が笑顔で成長する「ほめる人材育成術」<後編>

近年、人材育成の新しい手法として、「ほめる人材育成」が注目を集めています。前編では、主に「ほめる人材育成術」の必要性や成功事例などについてご説明しましたが、後編では、より具体的なほめ方について、ご紹介します。

(掲載日 2021/10/19)

社員が笑顔で成長する「ほめる人材育成術」<後編>

■どんな言葉でほめれば良いか


 ほめることが大切だということはわかったが、これまであまりほめたことがないので、どんな言葉でほめれば良いかよくわからない、という方も多いと思います。そこで、ほめる際の具体的な言葉についてご説明します。

 心から出てくる言葉であれば、どんな言葉でも良いのですが、困ったら「3つのS」を使ってみてください。つまり、「すごい!」「さすが!」「すばらしい!」(いずれも頭文字がSの言葉)です。その他にも「頼りにしてる」「期待してる」「うまい」「役に立った」など、いろいろありますが、実は、これ以外に、もっとも効果的な言葉があるのです。それが「ありがとう」です。

 これは、社員の行動の価値を認め、ねぎらう言葉であり、とてもストレートに伝わる言葉です。ところが、この言葉がなかなか出てこない上司の方が多いのです。なぜなのでしょうか。それは、心のどこかに「あたりまえ」という感情があるからです。社員がやってくれた仕事に対して、それくらいはできてあたりまえだと思ってしまうのです。そして、そう思っているうちは、「ありがとう」の言葉は出にくいものです。しかし、この世の中に「あたりまえ」のことなど、何ひとつないと思ってください。自分にとっては、あたりまえのことでも、やっている人間からすれば、精一杯頑張ってやっているのです。そして、いったん「ありがとう」という言葉を使い始めると、自然に「笑顔」がついてきます。これを続けることで、社員の心のコップは上向きになっていくのです。


■ヨコでなく、タテでほめる


 もうひとつ、ほめる時のテクニックとして、「ヨコでなく、タテでほめる」というものがあります。これは、社員を他の社員と比べるのではなく、その社員の過去と現在を比べるという方法です。他の社員と比べてしまうと、どうしてもほめるところがみつからない社員がでてきてしまうものです。しかし、その本人の過去と比べれば、何かしら成長しているところが見つかるものです。このように、社員の良いところを見つけてほめることが、すべてのきっかけとなるのです。

■アドバイスの数を絞る


 社員の良いところを見つけてほめることで、「自分のことを見てくれている」そして「認めてくれた」と感じてもらいましょう。心のコップが上向きになったら、あとはアドバイスをしていけば良いのです。ただし、ここでも、注意していただきたいことがあります。それは、一度にたくさんのアドバイスを詰め込まないようにすることです。アドバイスは1つか2つに絞りましょう。そして、そのアドバイスによって、成長したら、またほめて、次のアドバイスに移るようにしてください。


■小さい目標を設定する


 社員の成長を促すために、手の届かなそうな高い目標を設定するケースをよくみかけます。しかし、ほめる人材育成術では、むしろ、確実にクリアできそうな小さい目標を段階的に設定し、それをクリアするたびにほめて、成功体験を重ねていくようにすると良いでしょう。こうすれば、ほめる機会も増えますし、目標を次々にクリアすることで、本人の自信にもつながります。斎藤秀樹氏の著書『Good Team 成果を出し続けるチームの創り方』にも「小さな成功体験と喜びを積み重ねることによって実績の伴った自信が形作られて」いくとあります (1)。コップが上向きになったあとも、このような目標を設定することで、「ほめる」を継続していきましょう。

■ほめることで、自分の心も整う


 この「ほめる」という行為は、もちろん相手の成長を促す効果もありますが、他人をほめるクセをつけていくと、自分のことも客観的にほめることができるようになってきます。これによって、自分にも自信が出てきますし、何より心が安定してきます。


■その人なりの事情を考える


 そうは言っても、なかなかほめるところが見つからない、むしろ悪いところばかりが目につく社員もいることでしょう。そういう場合は、そのような社員の目に見える行動には、その行動を起こさせる、その人なりの「事情」があると思うようにしてみてください。頭ごなしに怒るのではなく、なぜそのような行動をとってしまうのか、社員の悩みを聞いてあげてください。それが解決しないまま、いくら怒ってみたところで、社員の反発を招くだけで、心のコップはますます下を向いてしまいます。

■第三者を経由してほめる


 これまでに社員をあまりほめた経験がなく、直接ほめるのはどうも照れくさいという方や、急にほめ始めることで、かえって不審に思われてしまうのでないかと心配される方もいるのではないでしょうか。そのような場合に効果的なのが、第三者を経由してほめるという方法です。例えば、Aさんをほめたい場合に、Aさんに面と向かってほめるのではなく、Aさんと親しくしているBさんに対して、さりげなくAさんのことをほめるのです。そうすれば、BさんからAさんにその内容が伝わり、結果的に直接ほめなくても同じような効果が期待できます。いや、むしろ、直接ではない分、お世辞でないことがAさんにもわかり、かえって嬉しくなるものです。ほめるのが苦手な方は、ぜひ試してみてください。


■第三者に良いところを聞く


 社員をほめるために良いところを探しているが、どうしても見つからない時もあるでしょう。そのような場合は、その社員のことをよく知っている別の社員に聞いてみる方法をお勧めします。例えば、Aさんの良いところが見つからないのであれば、Aさんと仲のよいBさんや、Aさんと業務上やりとりをする機会の多いCさんに、Aさんの良いところを聞いてみるのです。Aさんのことを良く知っていますから、皆さまには見えていない良いところにもきっと気がついているはずです。このようにして、Aさんの良いところを聞けば聞くほど、いかに普段から自分がAさんのことをしっかり見てあげられていなかったかを痛感することでしょう。社員をほめるということは、それだけ社員のことをしっかり見てあげるということにほかなりません。


■プライベートの話をする


 それでも、良いところが見つからない社員がいた場合には、ぜひその社員とプライベートの話をしてみてください。仕事をしている時はパッとしない人でも、プライベートでは趣味やボランティアなど、いきいきと輝いていたりすることがあります。そのような中から、その社員の良いところが見つかることもあるでしょう。その良さを仕事でも活かせるように工夫してあげることで、社員は仕事でもいきいきと輝き始めるかもしれません。とは言っても、唐突にプライベートの話をしようとするとかえって嫌がられる場合もあります。休み時間や飲み会の席などで、さりげなくタイミングをみて話しかけるなど、気遣いも忘れないようにしてください。


■「ほめる」ことは、人間関係の構築


 ほめることによる効果は、仕事だけでなく、実はプライベートでも同様の効果を生み出します。なぜならば、それは、より良い「人間関係」を構築するのに、とても効果的だからです。ぜひ、ご家族やご友人にも試してみてください。きっと、これまでにない関係が築けると思います。


■「ほめる人材育成術」で成功した経営者の言葉


 最後に、社員をほめることで成功したある企業の経営者が語った言葉をご紹介します。今回ご紹介した「ほめる人材育成術」の本質をとらえた素晴らしい言葉です。
「できたから、ほめるのではない。ほめるから、できるようになる」


みなさまも、今日から「ほめる人材育成術」を実践し、会社の貴重な財産である社員の力を伸ばして、経営力のさらなる向上に努めていただければと思います。



注:本コラムは、人材育成の新しい手法として「ほめる人材育成」の普及に力をいれている「一般社団法人 日本ほめる達人協会」のセミナーの内容を、了承を得て参考に執筆させていただきました。

<参考文献>
(1) 斎藤秀樹『Good Team 成果を出し続けるチームの創り方』(日経BP、2020)、223-225ページ

著者プロフィール

小林 雅彦(みやびコンサルティングオフィス 代表)

1965年生まれ。東京都在住。大手通信会社で30年以上の勤務経験を持つ。2020年5月に中小企業診断士に登録し、「みやびコンサルティングオフィス」を開業。飲食業を中心としたマーケティング、新規事業開発、人材育成、IT導入支援を専門とする。中小企業の経営者に寄り添う支援スタイルが信条。一般社団法人 日本ほめる達人協会「ほめる達人検定」3級。

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