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中小企業にイノベーションは起こせるか

中小企業にはイノベーションは関係ないと思っていませんか? しかし、中小企業だからこそできる理由があるのです。中小企業が取るべきイノベーション戦略とは・・・

(掲載日 2018/11/20)

中小企業にイノベーションは起こせるか~プロダクトアウトとマーケットイン

●イノベーションとは

今回のテーマはイノベーションについてです。

イノベーションとは、新しいアイデアから社会的意義のある新しい価値を創造し、社会に貢献することを指します。

昔は、イノベーションの代表例に日本製品が数多くありました。今はどうでしょうか?



イノベーションは、ラディカル・イノベーション(非連続的で断続的変化。従来の技術とは連続しない、抜本的な技術革新のこと。)とインクリメンタル・イノベーション(連続的で漸進的変化。従来技術の延長線上で部分改良を重ねる技術革新のこと。)の2種類に分類できると言われています。

例えば、馬車が主流だった時代に自動車を開発するのはラディカル・イノベーションで、電気自動車やハイブリッドカーを開発するのはインクリメンタル・イノベーションです。


マーケティングの視点ではマーケットインの製品開発が当たり前になってきていますが、御社の開発はいかがでしょうか。

本当に顧客の声がすべてなのでしょうか。

マーケットインからは人々の創造の範囲でしか開発ができず、革新的な製品は生まれません。いわばインクリメンタル・イノベーションしか起こせないのです。

それに対して、プロダクトアウトは開発者の考えを優先した開発で、市場があるかどうかわからないラディカルな製品を生み出す可能性を秘めています。

●ものづくり大国ニッポンは健在か

日本はものづくり大国と言われて久しいですね。

日本企業は、昔はラディカル・イノベーションにより新しい技術・製品を次々に生み出し、その後インクリメンタル・イノベーションを繰り返し、ものづくりの世界で存在感を示してきました。

このように、新しい技術・製品が成功すると、その技術を改善・改良するという合理的な判断を行います。それにより、さらに次世代の技術・製品への取り組みが遅れ、ラディカル・イノベーションが起きにくい状況に陥るのです。まさに日本がこの状態にあるのかもしれません。

さらに、インクリメンタル・イノベーションを履き違え、消費者に求められていない機能まで追加していくことで製品のガラパゴス化が進み、競争力の低下につながったのではないでしょうか。
携帯電話やテレビなど、例を挙げればきりがありません。


特に、日本の大企業では改良型の研究開発が9割を占め、基礎研究等の新技術開発に割く割合は1割程度と言われており、ラディカル・イノベーションは生まれにくい環境になっていることも要因のひとつです。

日本人は改良・改善が得意ですが、既存技術の改良・改善の延長線上には革新的な技術は生まれないのです。



この傾向は、国際競争力を示すランキングなどにも表れています。

WEF「国際競争力指標」イノベーションランキングでは2008-9年4位から2017-18年8位、IMD「世界競争力年鑑」のランキングでは1992年1位から2018年25位にまで落としています。

それに対して、アメリカはどうでしょうか。
WEF国際競争力指標のイノベーションランキングでは2008-9年1位で2017-18年2位。
IMD「世界競争力年鑑」のランキングでは1992年2位から2018年1位とほぼ変わらない地位を保っています。

WEF「国際競争力指標」は各国の生産性の決定要因となる競争力を評価しているもので、12の柱項目についてスコアリングしています。このうちの1つがイノベーションで、この順位をイノベーションランキングと呼んでいます。

また、IMD「世界競争力年鑑」は、経済状況、政府効率性、ビジネス効率性、インフラの4つの分類で調査を行い、ランキングにしています。競争力の源泉が多岐に渡ることを考えると、参考になるデータではないでしょうか。

また、企業の時価総額ランキングトップ50では、1992年には日本企業が10社ランクインしていましたが、2018年ではトヨタ自動車1社のみになってしまいました。

このように、日本の研究開発投資額は18.9兆円、対GDP比率で3.55%(2015年)。

アメリカは研究開発投資額5,029億ドル、対GDP比率2.79%ですから、投資の割に競争力につながっていないのが現状なのです。

●イノベーションの担い手は誰か

イノベーションが起きにくい日本のなかでも期待されているのが中小企業の存在です。


中小企業は組織が小さい分だけ素早く柔軟に動くことができます。

経営者がトップダウンで製品開発を進めることができるため、大企業ではなしえないような面白いアイデアが製品化される可能性が高く、下図でもわかるとおりニッチな市場ほど中小企業がイノベーションの担い手になっていることが多いのです。

ニッチな分野であれば、市場性の観点からも大手企業が参入する可能性は低く、中小企業でも十分に市場で戦えるでしょう。

今後も中小企業によるラディカル・イノベーションを期待したいですね。

●まとめ

中小企業だからイノベーションは起こせない、なんて考えているあなた。日本の競争力を高めるには中小企業の新技術・新製品が欠かせません。これまでの技術・製品の改良も大切ですが、直感や思いつきによるプロダクトアウトのものづくりがラディカル・イノベーションにつながるかもしれません。

著者プロフィール

木下 綾子(株式会社ステラコンサルティング 代表取締役/中小企業診断士)

電機メーカーで開発に従事した後、中小企業診断士として独立。中小製造業の支援を中心に行い、4年で20社以上の経営改善計画策定実績あり。その他、医工連携を中心に公的支援でも活動中。

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