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作業時間も作業ミスも、作業者のストレスも激減する「RPA導入」

中小企業の大きなテーマである「生産性向上」。この課題を解決するひとつの手段がRPAです。ところが、「どのような業務を効率化できるの?」「どのように導入すればいいの?」など疑問も少なくないはず。そこで、RPA導入効果や手順、留意すべき点について解説します。

(掲載日 2022/09/08)

RPA の特徴と導入による業務改善、及び実際の導入手順について

1.RPAの特徴


(1)RPAとは


RPAとは、Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の略で、定型的な業務をソフトウェアで自動化する技術のことです。主に、事務作業での効率化に向いており、例えば、ある所から入手したデータをPCに入力したり、あるいは集めたデータを取り纏めたりなど、定型的で定期的な作業を、非常に短時間で処理する技術です。


(2)RPAの導入効果


RPA導入による3大効果は、ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、以下の3つになります。

➀大幅な時間削減
筆者の経験からすると70~90%前後の時間が削減できました。

②正確な業務遂行(ミスが0)
業務の流れを記述した「シナリオ」というフロー図を作成し、それに正確に沿って実行します。

③作業者のストレス低減
定型的で定期的に行われる大量の作業から作業者を解放します。これにより、他の創造的な作業により思考を巡らせやすくなります。


(3)RPAの導入で効果が上がりやすい業務


一般的に言われていることでもありますが、以下のような業務において効果が上がりやすいと言えます。

➀定型的な業務
ある表のあるセルに数値を入力する、文書のあるエリアに文字を記入する等、決まりきった業務

➁定期的に行われる業務
毎日、毎週、毎月等、短期間に定期的に発生する業務

③電子化されている業務
社内システムや、Excel、Word等の市販ソフトにより処理している業務

④ルールが明確な業務
人間が都度判断しなくてよい、処理ルールが決まっている業務

上記➀~④のどれかに当てはまる業務が大量にある場合は、その導入効果は非常に大きくなります。


(4)難しくないRPAの開発・導入


RPA開発(「シナリオ」の作成)は、日々の定型業務に追われていてプログラミングをしたことが無い人でも取組みやすいという特徴があります。特に、上記③のような既に電子化されている業務であれば、マウスを動かしたりキーボード入力する動作が自動的に取込まれて、自動的にフロー図ができたり、そこに新たな機能を追加したりすることができます。紙に手で業務フロー図を書く感覚です。


2.RPAの導入事例と導入効果


実際に筆者が作成したRPAシナリオの導入事例と導入効果を紹介します。

図表1に、RPAシナリオを導入した社内業務例と導入効果(稼働削減率)を示します。なお、稼働削減率は、連携する社内システムや市販ソフトのレスポンス時間、社内外ネットワークの混雑状況、PCや社内外サーバーの性能により左右されますので、おおよその目安と思ってください。

筆者作成



3.RPAの導入状況


図表2に、RPAの2018年6月から2019年11月までの導入率の推移を示します。年商1,000億円以上の大手企業は27%から51%に伸びていますが、年商50億円以上1,000億円未満の中堅・中小企業は17%から25%に伸びるに留まっています。

RPAの導入効果が十分把握されていなかったり、プログラミングが必要で手間がかかると誤解されていたり、また、導入資金の不足が原因と思われます。

業種別では、金融業が59%と最も高い他それ以外でも導入率は高く、業種に関わらず普及が進んでいます。2019年1月に比べ11月には特に学校・医療福祉・流通業で導入率が伸びました。(出所:RPA国内利用動向調査2020(㈱MM総研)[2020/1/27])

出所:RPA国内利用動向調査2020(㈱MM総研)を基に作成[2020/1/27]


4.RPAの導入手順と留意点


ここでは、企業へのRPAの導入検討段階から導入対応段階を経て、導入後段階までにおける、対応手順と留意点について解説します。


(1)導入検討段階


①現状把握
現在業務の下記観点について、おおよそで結構ですので把握します。RPA販売・導入業者(以下、業者)から説明を受ける際に理解しやすくなると共に、導入がスムーズになります。

-所用時間と、週・月労働時間に占める割合、要員数
-週・月毎の回数
-定型/非定型業務の区別
-類似業務の他部署での有無
-現在の管理様式、帳票や業務手順書等(紙、ファイル)
-ミスが多い又は、ストレスが溜まりやすい部分

②業務の標準化
業務標準化*1とRPA導入は別のものです。部分的にでも標準化してからRPAを導入すると、導入効果もより高まりますので、標準化できるところがあれば、これを先に行うと有効です。

③RPAの選定
操作が簡単か、既存の社内システムやExcelやWord等の市販ソフトとの相性が良いか、価格は手頃か、保守体制はどうか等比較し、選定します。

業者に対しては、上記「①現状把握」で把握した内容を簡単に説明し、実際のPC操作等の業務状況を見せると共に、業者からはRPAの操作方法やデモも見せてもらい、どのくらいの時間短縮があるかと、ミスの減少・ストレスの解消状況も聞ければなお良いでしょう。また、ユーザマニュアルの類があれば見せてもらうと良いでしょう。


(2)導入対応段階


図表3に、筆者がRPA導入に際して実際に行っている手順の例を示します。

筆者作成


①RPAの「導入要望書」的なものに、「(1)①現状把握」の内容を含む以下の内容を記述する等して、業者に明確に伝えます。これと共に、今使っている管理表、帳票類、手順書等の紙又はファイルも提供します。

-INPUTデータ:提供元、形式、頻度等
-処理:INPUTデータの処理方法(PC等での処理も含む)
-OUTPUTデータ:提供先、形式、頻度等
-全作業に要する週・月当たり時間、要員、全業務に占める割合
-今使っているExcelやWord等の市販ソフトによる改善努力はしたか
-ミスが多い、ストレスが溜まりやすい部分

②作業手順を見える化した業務フロー(As-Isモデル*2)を業者に作成して頂き、現状認識に齟齬が無いかお互い確認することも必要です。

③これを基に問題点(改善点)を把握します。業者に検討を依頼しても良いでしょう。問題点がある場合は、To-Beモデル*3を作成してもらい、その中でシナリオ作成以外の手段で対応できる部分と、シナリオを作成する部分を峻別します。シナリオ化の範囲は、どの部分をシナリオ化すれば全体の効率が上がるか、人間の判断が多いところ(非定型業務)はどこか、を明確化することにより決定します。

④シナリオの完成度が60~70%の段階で業者に見せて頂き、実際に今行っている業務フロー(As-Isモデル)又は、問題点がある場合にそれを解決した業務フロー(To-Beモデル)と大きな差はないか確認します。

⑤問題がなければ、シナリオの残りの部分の作成を行って頂き、また問題がある部分は修正を施し完成して頂きます。完成後、実際にシナリオの実行を見せて頂き、時間を測定し、効果がどれだけあったかを確認します。

⑥業者に2頁ほどの簡単なユーザマニュアルを作成して頂きます。ここには、シナリオを実行する前に立ち上げておくべきAP(ExcelやWord等)や社内システム等どのような準備をしておくべきか、設定ファイルがある場合はどのような内容を記述するべきか、実行するシナリオを保存するフォルダに、どのようなファイルを保存するべきか等、人間が行うべき範囲と、RPAが実行する範囲を記述してもらうことが必要です。また、シナリオを社内で改造出来るように、保守マニュアルも用意して頂きます。これを基にした教育訓練もお願いすることも必要かもしれません。


(3)導入後の対応


導入後、以下の内容について、社内で行うことが想定されます。
・シナリオを実行する方法の、他の方への共有による利用者の拡大
・業務の効率向上を目指した部分的な標準化と、それによるシナリオの部分的な改造、又は業者への委託

業者への依頼内容としては以下が考えられ、これらは基本的には有償となると思われます。
・RPAの維持管理を、社内でも行うための教育訓練
・維持管理するための体制作り支援
・作業手順の変更やファイルの種類・形式等の変更時のシナリオ改造

RPAシナリオの作成は、手で業務フローを書く感覚で誰でも簡単に始められます。基本的な研修も開催されていますので受講をお勧めします。また、今やっている業務の全てがRPA化できるものではない事が留意点で、できるところから行おうと考えると気楽に始められます。

*1 業務標準化:特定の人ではなく誰が業務を行っても、同様な品質の成果物が得られるように、作業方法を統一して、業務の属人化を防ぐこと。
*2 As-Isモデル:現状のモデルのことで、ここでは現在行っている業務のフローのこと。
*3 To-Beモデル:あるべき姿のモデルのことで、ここでは改善後の業務フローのこと。

著者プロフィール

米倉早織<よねくら ときお>(米倉経営研究所 代表)

業務改善・経営革新(4年間で部門売上3倍)、AI/RPA適用分野検討・導入支援、事業方針/計画策定と実行管理(誤差1%の項目あり)、部門評価(KPI)設計、データ(労働生産性データ等)の解釈方法、「武経七書」を活かした経営戦略立案、高齢者・外国人・障がい者・LGBTQの課題対応、セキュリティ(守る資産と守り方を明確にした施策策定・実施)

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