社員一人ひとりの状況に応じた人材育成・マナーの向上(しつけ教育)に取り組んでいる
しつけの前提となる5S活動
5Sは、整理、整頓、清掃、清潔そしてしつけのローマ字表記の頭文字のSを取ったものですが、製造現場では基本中の基本です。
工場のどこに障害があるかはなかなか見え難いものです。どこにムダがあり、渋滞があるのかを見えるようにすることが、工場改善の第一歩ですが、そのための道具が「5S」とか「目でみる管理」であって、それが改善のための前提条件となっています。
5S活動といって、仕事中に頻繁に清掃をすることでムダをわかりにくくしてしまうケースが見受けられます。これでは工場はきれいになりますが、工程内不良率や不良在庫の様子がみえなくなり、改善にもまったく手をつけないことになってしまいます。また、改善活動の目的は安全活動だけに限定されていて、肝心の工場のスリム化や効率化を二の次にしてしまっているなど、費用対効果を考えない改善活動ではほとんど意味がありません。そのように改善活動のマンネリ化が進んでしまった企業では、トップの確固とした意識改革からスタートする必要があります。そのままの状態で、自動化(機械化)を行うと、大きなムダを固定化することになってしまうからです。5Sや目で見る管理によって、常に改善活動を行い、生産ラインのスムーズな流れを実現してから適切な自動化・機械化に取り組まないと、せっかくの自動化が生産性の向上面で不十分なものになってしまいます。工程間にどのような仕掛品があるのか、作業の進捗状況がどのようであるかを把握することが難しくなってしまうのです。
自然に実践できるしつけが重要
現場作業者も管理・監督者も、同じ土俵に立って、同じ価値観と同じ尺度で現場を見て、全員が知恵を出し合って改善をするのが「目で見る管理」です。誰が見ても生産が遅れているとか、どのような品質不良が出ているのかがわかる仕組みをつくり出すところにそのポイントがあります。見えなければ改善は難しいのです。5Sとは、
- 整理:いるものと、いらないものをハッキリ分けて、いらないものを捨てる。
- 整頓:いるものを使いやすいようにきちんと置き、誰にでもわかるように明示する。
- 清掃:つねに清掃をし、きれいにする。
- 清潔:整理、整頓、清掃の3Sを維持する。
- しつけ:決められたことを、いつも正しく守るよう習慣付ける。
のことですが、この中で最も重要なのは「しつけ」です。命令によって服従させることでなく、従業員全員が5Sの重要性を心から理解し、自然に実践できることです。そのために、継続的にしつけ教育を行い、普段の業務で気をつけることを具体的に従業員に伝えていくことが必要となります。
従業員のしつけがよくできている工場では、現場を見学させていただくと、生産ラインもすっきりしていますし、工具置き場がきれいに整理されているほか、掲示物も見やすい場所に整然と張られていて、見学通路もすっきりしています。そして、明るい挨拶の声が聞こえてきます。
Case Study
しつけは教育の第一歩、おろそかにするな
D社では、「感謝鏡」を全従業員に配って、感謝の気持ちのよい笑顔ができているかチェックさせている。毎朝、鏡をのぞき込んで表情が固まっていないかよい笑顔になっているかチェックしている。
また、同社は主要な仕入先(外注先)を集めて、正月に感謝の集いをやっている。その会では同社の幹部が仕入先に対して接待させてもらうという趣向で、同社の主任以上10人が40人の顧客を接待する。その場を通じて従業員と仕入先との人間関係ができてくる。同社の従業員は、最初勝手がわからず震えていたこともあるという。外注相手が父ちゃん母ちゃんだけの企業であっても同社のパートナーとしてきちんと接待しなくてはいけない。従業員には出席の際に気をつけるべきことを「心得」にまとめて手渡している。今でも新しくその会に出る者には「心得」を渡している。その「心得」では次のようなことを列記して、宴会中に従業員に実践させている。「①平素の協力に対しての感謝」、「②同社従業員と仕入先経営者の職種不問の人間関係樹立」、「③明日からの実務面で厳しさを意識する」、など。
(電子機器用部品製造・50人)
Step Up
お客様に対して全従業員が挨拶できている
生産現場だけでなく事務部門も含めて、訪問者に対して、全従業員から挨拶されると気持ちがよいものです。普段から従業員同士でも、挨拶をしていないとこれを実行することは難しいです。コミュニケーションは挨拶から始まります。しっかり挨拶ができない職場では「ほうれんそう(報告、相談、連絡)」もしっかりなされていないことが多いのです。
自律的に動くことと、勝手にやることをはき違えていては、仕事が成り立ちません。どんな仕事でも組織のなかで働いているのですから、チームで成果を出すことが求められます。その時にコミュニケーションが不十分で情報漏れがあり、対応に遅れて問題を大きくしてしまうということはよくあることです。結局、基本は挨拶から始まるのです。