3 人材・組織
後継者が親族以外であっても遺留分の特例を利用できるようになる、中小企業経営承継円滑化法の改正をご存じですか?
- 当社は、30年前に私が設立し、自動車関連のパーツやアクセサリの卸売業を営んでいます。
設立以来、商品の仕入れ先や販売先と長い時間を掛けて信頼関係を築いてきて、近年の事業成績は比較的順調に推移しています。
私には息子はおらず、娘が2人います。長女の配偶者が事業を継ぎたいと言っており、現在彼は専務として活躍しています。
私の引退時には、会社の株式や事業に関連する資産を長女の配偶者に譲りたいのですが、次女の存在も考慮しなければなりません。
実際に相続が発生した際に、次女が遺留分減殺請求権を行使して株式が分散することを避けるには、どうしたらよいでしょうか。 - 中小企業の円滑な事業承継については、近年国でも重要課題として取り組んでいます。
平成27年の通常国会で、中小企業経営承継円滑化法の改正案が成立し、2015年8月28日に公布されました(施行は公布から1年以内)。
改正法が施行されると、ご相談のようにお子さんの配偶者など親族以外の第三者への事業承継について、民法の遺留分に関する特例が利用できるようになりますので、利用なさってはいかがでしょうか。
この制度は、所定の手続(経済産業大臣の確認と家庭裁判所の許可)を経た場合、以下の遺留分に係る民法の特例を認めるものです。
(1) 贈与株式等を遺留分算定基礎財産から除外できる。
これにより、自社株式の相続による散逸を防止できます。
(2) 贈与株式等の評価額をあらかじめ固定できる。
これにより、後継者の努力で企業価値を高めた分を他の相続人に渡さずに、自社に残すことができます。
今回の改正以前も、この遺留分に関する特例の制度はありましたが、後継者が旧代表者の推定相続人であることが必要とされていました。
しかし、近年ではお子さん等の親族が事業を承継する例が減少し、従業員やお子さんの配偶者等、第三者が事業を継承する例が増えています。
そこで、今回の改正案では、親族外承継についても、上記の民法の遺留分に関する特例の範囲に含めることとされたわけです。
具体的な手続の流れ等につきましては、公的機関の相談窓口にてご確認ください。
・東京商工会議所 ビジネスサポートデスク
http://www.tokyo-cci.or.jp/soudan/bsd/
・東京都中小企業振興公社 事業承継個別相談窓口
http://www.tokyo-kosha.or.jp/support/revival/soudan.html
詳しくは下記リンク先のホームページをご覧ください。
http://www.meti.go.jp/press/2014/03/20150327001/20150327001.html