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昔ながらのレトロな雰囲気が懐かしく、そして新しい老舗喫茶店

企業名:有限会社茶房武蔵野文庫  取材先ご担当者様:代表取締役:日下茂氏

こだわりの「見える化」によるコロナ禍での販売促進

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言で休業を余儀なくされる等の大きな影響を受け、今までのやり方で経営を続けていくことは難しいと危機感が生まれたところであったが…

企業概要

有限会社茶房武蔵野文庫(代表取締役:日下茂氏)は、吉祥寺駅北口から徒歩5分に立地する喫茶店である。かつて早稲田大学近くにあり、学生や有名文芸家に愛されながら1984年に閉店した喫茶店「茶房早稲田文庫」のスタッフであった日下氏が、その雰囲気、味、看板を継承する形で創業した。
挽きたての本格コーヒーだけでなく、有名店の味を研究して生まれたオリジナルカレー、季節限定の焼き林檎等、当時と変わらない味が老若男女に愛されている。また、店内には引き継いだ蔵書や伝統工芸品も置かれており、趣のある唯一無二の落ち着いた雰囲気を醸し出している。創業以来、『一人ひとりのお客さまとの縁を大事にして、一つひとつの仕事に丁寧に向き合う』ことをモットーにしており、近年は常連客だけでなく、若い世代のファンも増えている。

企業の悩み

創業時から外部のアドバイスを受けることもなく、経営を行ってきたため、経営者的な視点が不足していると自覚していた。また、創業当時は近隣の競合店は少なかったが、近年は当店のある吉祥寺駅周辺の大手コーヒーチェーン店を含めた飲食店の競争が激しくなり、家賃も都内平均より高い立地のため、売上だけでなく利益の面でも厳しさが増していた。
そうした中、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言で休業を余儀なくされる等の大きな影響を受け、今までのやり方で経営を続けていくことは難しいと危機感が生まれた。
そこで、以前、中小企業診断士を養成する実習を受け入れた際に知り合った中小企業診断士に相談したところ、本プロジェクトの紹介があった。外部専門家のアドバイスを受けることで、経営感覚を磨き直して事業を改善しようと決意し、創業時から会員加入していた商工会議所を通じて本プロジェクトの申込みをした。

導き出された課題

チェックシートに基づいた経営診断の結果、導き出された主な課題は、①財務体質の改善、②売上確保のための具体策の実行の2点であった。
①財務体質については、従前より懸念材料であったため、消費増税に合わせたメニュー価格の見直しも行い収益改善を図っていたが、新型コロナウイルスの影響による見通しが立たない状況下で、当面の運転資金を捻出する必要性が生じていた。
②売上確保については、感染症対策を徹底しながら、新しい社会の生活様式に対応した店舗経営をすることが喫緊の課題となった。席の間引きにより実質的な席数が限られる中、店外販売や情報発信力の強化等、今まで以上に店舗が主体的に売上確保に向けて取り組むことが求められた。
日下氏は、これらの課題を解決するため、本プロジェクトのアシストコースで支援を受けることにした。

提案された解決策

専門家から具体的なアドバイスを受けながら、上記の解決に向けて取り組んだ。
まず初めに、感染症対策を実施した。アルコール消毒、席の間引き、パーテーションの設置等にいち早く取り組むことで、安心して来店いただける環境を整えた。次に、財務体質改善については、コロナ禍で売上見通しを立てることが難しい状況であったが、目標利益をあげるために必要な売上を曜日別(平日と土日)で設定し、日々の店舗運営を行うことを心掛けた。
そして、最も注力したのは、売上確保策である。主に4つの取り組みを行った。①ホームページの新設、②メニューブックの改定、③テイクアウト販売の案内チラシ作成、④店舗で使用している伝統工芸品の食器販売スペースの設置である。共通するポイントは、こだわりの「見える化」である。各媒体の特性を生かし、創業のきっかけや各メニューの特徴、食器の製法紹介等をより分かりやすく伝えるための創意工夫を重ねた。

提案した中小企業支援施策

その後の状況

新しい取り組みの実行にはハードルが高い面があるが、今回の支援で課題解決につながる具体的な提案を受けられたことで、スピード感をもって実行に移すことができた。
数字については、目標売上を設定し、達成には大変な努力が必要であると認識することで、経営への意識が大きく変わった。単純に売上に注力するだけでなく、店舗運営の効率化や回転率等を意識することも重要であると再認識した。
売上確保については、ホームページ制作を機にパソコン教室に申し込み、現在も毎週通ってパソコンの多様な機能の習熟に努めている。ホームページに掲載しているテイクアウト用のチラシを見て初めて来店するお客さまもいるため、反響が励みとなっている。前は文字だけであったメニュー表は、写真や特徴を記載することで、メインメニューのカレーセットの売上が増加するとともに、黄色で珍しいレモン風味のクリームソーダも注文が増える等、定番のカレー以外のメニューの人気も高まっている。展示コーナーを設けた陶器は、贈答中心で大きな売上には繋がっていないが、陶芸作家の紹介をすることで当店の食器へのこだわりが伝わる機会となっている。
コロナ禍での販売促進は一朝一夕にはいかないが、複数の取り組みによる相乗効果で確実に効果が出始めている。直近の新たな取り組みとしては、一日約7時間を費やしていた食器洗いについて、持続化補助金を利用して食洗器を導入し生産性向上を実現している。時間が生まれたスタッフをテイクアウトやデリバリーに配置し、店外販売のさらなる体制強化を図っている。

企業様の声

特に飲食店では新型コロナウイルスによる影響が大きかったので、支援を受けることができて助かったという気持ちが一番大きいです。そして、自分自身の経営への意識が変わりました。個人の視点ではなく、一企業として考えなければダメだと感じました。例えば、財務面では数字にもっと敏感でないといけないと気持ちを新たにしました。
商工会議所の方々と関わって感じたことは、思っていたよりも身近な存在で、小さなお店でも一企業としてしっかりと向き合っていただけるということです。体力的に厳しい面はありますが、吉祥寺になくてはならないお店として、お客さまの声を励みとして、愛されるお店であり続けられるように頑張っていきたいと思います。
(代表取締役:日下茂氏)

支援者の声

吉祥寺を代表するお店の支援に携わることができたのは、率直に嬉しい気持ちがありました。今回の支援では、コロナ禍における売上確保が大きな課題でしたが、日下社長を中心に当所のチームで検討した提案内容を積極的に取り入れて、次々に実践していただきました。老舗店のため、新しい取り組みにはハードルが高い面もあったと思いますが、持続的な経営への強い熱意を感じ、私どもも感動しました。チームで継続支援している中で、新たな課題も見えてきているため、今後も伴走型でフォローアップ支援に努めていきます。
当商工会議所では補助金・助成金をはじめ各種支援施策の活用に注力しています。普段ご利用のない会員企業の皆様も、お気軽にお問合せいただければと思います。
(武蔵野商工会議所:神林賢太氏)

企業情報

企業名 有限会社茶房武蔵野文庫
代表者 代表取締役:日下茂氏
創業年 1985年
業種 飲食業(喫茶店)
所在地 東京都武蔵野市吉祥寺本町2-13-4 井野ビル
事業PR
URL https://sabo-musashinobunko.jimdofree.com/


中小企業診断士 松木雄一

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