一社偏重から戦略的な顧客開拓へと舵を切る ~商工会の後押しで前に動き出す~
企業名:株式会社曙製作所 取材先ご担当者様:代表取締役 田宮 茂 様
一社偏重ではメーカーの取り組み動向に左右されることが多く、「下請代金支払遅延等防止法」を順守するための取り組みが、逆に当社を苦しめている。このままの状況は回避しなければならず、最新のレーザー溶接機を導入して当社の特徴を際立たせた上で、新規取引先の開拓を模索していたが……
企業概要
株式会社曙製作所(代表取締役:田宮茂 社長)は、現社長の父が創業した従業員数27名の金属加工業である。先代の創業者は新潟県の出身で、福生で終戦を迎えた。戦後10年たったら自分自身で仕事をしたいとの思いを強く抱き、昭和29年5月に創業。飛行機関連の仕事をしていたところから金属加工技術を磨き、自動車関連の引き合いをきっかけに、交通関連、電力関連、重機関連の金属加工の受注を引き受け、成長を重ねてきた。
平成5年に現社長に経営がバトンタッチされた。先代の「お世話になっている取引先と金融機関には忠誠をつくせ」との言葉を受け、現社長も大手メーカーの一次下請けの仕事に注力してきた。そのため、当社の売上のほとんどは大手メーカー1社に依存している状態である。そのような状況のなか、リーマンショックによる景気悪化、大手企業のコンプライアンスへの過度な取り組みにより、当社への「物言わぬ納期要請」が厳しくなり、残業を余儀なくされる状況で、収支も厳しくなってきた。
企業の悩み
一社偏重ではメーカーの取り組み動向に左右されることが多く、「下請代金支払遅延等防止法」を順守するための取り組みが、逆に当社を苦しめている。月内に納品し、伝票処理が間に合わなければ、たとえ当社の責任であってもメーカーとしては支払い遅延と捉えかねないからである。そのため、対応できなければ一次下請けの取引が解消され、二次下請けに甘んじなければならない恐れも生じる。今はなんとか残業により対処しているが、このままの状況は回避しなければならず、最新のレーザー溶接機を導入して当社の特徴を際立たせた上で、新規取引先の開拓を模索していたところである。
そのような状況の中で、地元の祭りなどで付き合いのあった商工会の経営指導員に経緯を相談したところ、当事業の企業診断を勧められ、一度受診してみることとなった。
導き出された課題
中小企業診断士による企業診断の結果、「一社偏重は回避すべきだが、売上減少の回避策として新規開拓というのは対処療法的になりがちである」との指摘を受けた。将来のあるべき姿を見据え、将来像と現状のギャップを埋めるための取り組みの必要性を示唆された。具体的には、3C分析による顧客、自社、競合をしっかりと分析すること。特にターゲット顧客を明確にし、納期要求と技術要求の2軸で顧客層をセグメント分けし、狙いを定める重要性を説かれた。そのうえで、具体的に販促ツールを開発、特にホームページを主力ツールとして構築していくことの必要性についてアドバイスされた。
また、従業員数27名という規模は、トップのリーダーシップ型経営から、組織型経営に移行するタイミングでもあり、ちょうど現社長の事業承継も見据えなければならないタイミングであるところから、人材育成と組織構築も課題としてあげられた。
提案された解決策
中小企業診断士からは以下の支援施策の紹介を受けた。特に展示会等出展支援助成事業に関しては、地元の異業種交流展には興味を持ちつつも、日々の忙しさの中で参加を躊躇していたところに、経営指導員からの後押しとサポートをもらい、実際に展示会出展へと結びつけることができたことはよかった。経営革新計画については、後継者を中心に進めていく必要があり、事業承継を見据えた社内の組織体制の構築も求められるため、これからの取り組みとして考えている。
また、経営指導員からは「都立産業技術研究センター」の紹介も受け、最新レーザー設備による製品強度試験などの協力をお願いする道筋も見えた。
提案した中小企業支援施策
中小企業診断士からは以下の支援施策の紹介を受けた。特に展示会等出展支援助成事業に関しては、地元の異業種交流展には興味を持ちつつも、日々の忙しさの中で参加を躊躇していたところに、経営指導員からの後押しとサポートをもらい、実際に展示会出展へと結びつけることができたことはよかった。経営革新計画については、後継者を中心に進めていく必要があり、事業承継を見据えた社内の組織体制の構築も求められるため、これからの取り組みとして考えている。
また、経営指導員からは「都立産業技術研究センター」の紹介も受け、最新レーザー設備による製品強度試験などの協力をお願いする道筋も見えた。
展示会等出展支援助成事業
展示会への出展、カタログや会社案内の作成にあたり、最大100万円、助成率2/3で助成金を受けられる制度。地元の異業種交流展への出展の際に利用。
経営革新計画の承認
新たな製品や役務を開発し事業に取り組む企業に対して、その有効性を東京都が審査し承認する制度。承認を受けた企業は税制優遇や低利子融資などの特典を得られる。
販路開拓コーディネート事業
新商品(新製品・新技術・新サービス)を持つ企業の、マーケティング企画の策定及び首都圏・近畿圏におけるテストマーケティング活動を支援し、新たな市場開拓の土台作りをお手伝いする事業。
その後の状況
一社偏重の危機感を感じ、最新のレーザー溶接機等も導入して差別化を図り、新規顧客開拓を進めようとは思っていたものの、日々の業務のなかでやるべきことも多く、何から手をつけていったらよいかわからなかった。しかし、商工会の経営指導員に相談をし、今回の企業診断を受けたことにより、自身の考えが診断報告書として書類上に整理されて「見える化」され、改めて様々な点に気づきを得ることができた。短期実行計画書により改善しなければならない点も具体的に見え、当社の進むべき方向と、具体的な取り組み手順などの優先順位も明確になった。
数値的な成果が表れるのは、しばらくしてからであるが、展示会への出展やホームページの制作など、具体的な取り組みが前に進み出したことは大きな成果である。
企業様の声
今までも課題に取り組む機会はあったと思うが、忙しいことを理由に取り組んでこなかった。今回の企業診断を通じて、客観的に自社を見ていただき、ズバッと問題点と課題を指摘頂いたことで、取り組みの重要性を改めて感じることができてよかった。
展示会への出展については、今まで一度も出展したことはなかったが、経営指導員が背中を押してくれたことで、今回初めて出展することができ、前に進むことができた。出ると決めたら、忙しいということは言い訳にならず、動かざるを得ない。こういう状況ができたことは結果的によかったと思っている。商工会の支援はまさに「かゆい所に手が届く支援である」と実感した。
また、地元企業のネットワーク作り、連携への種まきは、事業承継前の自分自身の仕事だと改めて認識しなおした。
一方で、やるべきことは明確になり、そのための支援策もご紹介いただいたが、施策の活用については二の足を踏んでいるのも事実である。施策の利用に向けた事務処理などの手間の問題のほか、助成金等に頼るのではなく本来の企業努力で何とかするのが本来の企業の姿だとも思っている。ただ、今回のように商工会の経営指導員からの各種施策の紹介や、中小企業診断士の専門家としてのアドバイスを通じて、商工会や専門家派遣の事業などは有効に活用しながら、経営改善に取り組んでいきたいと認識を新たにした。
企業情報
企業名 | 株式会社曙製作所 |
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代表者 | 田宮 茂 |
創業年 | 昭和29年 |
業種 | 金属加工業 |
所在地 | 東京都昭島市武蔵野2丁目10番29号 |
事業PR | |
URL | http://www.akb.co.jp/ |
平成25年12月5日
山口 亨