商品の製造方法や業務のやり方など、秘密にすべきノウハウを管理する仕組みがある
ノウハウは営業秘密として管理
製品を解析することで他社による特許侵害を検出しにくい技術、つまり「ノウハウ」は、一般に特許出願するよりも営業秘密として保護するほうが有効です。商品の製造方法や業務のやり方などがその典型です。そして、それら
のノウハウが裁判所において「営業秘密」として認められるには、以下のようなレベルの管理を行う必要があります(下図)。
①営業秘密の特定:
何が営業秘密であるのか、文章・図式などにより特定しておく必要があります。秘密にすべき対象がわからないことには、管理ができませんので当然です。営業秘密の範囲の決定方法、営業秘密を特定する場合の書式など、一定のルールのもとに営業秘密の特定を行う必要があります。
②秘密情報であることの明示:
①により文書などで特定した営業秘密に対して「マル秘」印を押すなど、記録されている情報が営業秘密であることが、アクセスした者に明確にわかるように表示してあることが必要です。電子データの形式で特定されている場合も同様です。秘密であることの表示方法、秘密の程度に応じた表示のバリエーションなど、一定のルールのもとに秘密であることの表示を行う必要があります。
③物理的に適切な管理:
①で特定した営業秘密が、アクセス権限を持つ従業員以外に知られることなく管理できるように、物理的に適切な状態で秘密に管理されていることが必要です。営業秘密が文書などにより特定されている場合には、施錠可能な書庫に収納し、鍵へのアクセスには制限をかけることがこれに該当します。電子データで特定されている場合には、ID、パスワードによるアクセス制限、サーバーのセキュリティシステムの整備などが求められます。
④営業秘密管理のルール整備:
以上の営業秘密の管理を適切に行えるよう、統一的な営業秘密管理規程を作成し、その規程に基づく管理を行っていくことが求められます。
Case Study
Step Up
(1)営業秘密として管理すべき技術・情報を従業員に周知している
営業秘密が裁判などで法的保護の対象として認められるためには、情報にアクセスできる従業員に関する管理体制を整えておくことが重要です。営業秘密として管理すべき技術・情報を従業員に周知徹底するには、以下の対応が考えられます。
- 契約・規則(従業員規則に秘密保持条項を設けておく)
- 定期研修などによる意識向上
- セキュリティ委員会など、秘密管理のための組織体制の構築
(2)営業秘密を管理するための具体的な手段(マル秘印、パスワード設定など)を整えている
営業秘密が裁判などで法的保護の対象として認められるためには、営業秘密を管理する具体的な手段を整えておくことも重要です。アクセス権限を持つ従業員を特定したうえで、以下のような具体的なアクセス制限手段を整えておくことが考えられます。
- 営業秘密が文書などにより特定されている場合
施錠可能な書庫に収納し、鍵へのアクセスには制限をかけるなど。 - 電子データで特定されている場合
ID、パスワードによるアクセス制限、サーバーのセキュリティシステムの整備など。
(3)営業秘密として保護したい技術・情報の先使用権を確保している
自社が営業秘密として管理していた技術を他社が特許として取得することに備える必要があります。それが「先使用権」です。他社が特許として出願する前からその技術を利用していた(または利用の準備をしていた)ことを証明できる証拠によって先使用権の存在を立証できれば、他社が特許として取得しても、その技術は自社で継続して利用することができます。例えば、先使用権が存在することを立証するために公証制度を用いている企業は少なくないようです。