助成金・補助金等、経営力UPの経営情報が満載!

オンライン経営力自己診断

経営診断・分析事例
会員登録すると、
新規会員登録はこちら
お気に入りに追加 シェアツイートLINEはてぶ

伝統工芸品の木目込人形を世界に発信

企業名:株式会社田辺  取材先ご担当者様:代表取締役:田辺靖幸氏

インターネット活用により海外販路を開拓

外国人が店舗を訪れるケースが増えてきているが、当社には英語を話せるスタッフがおらず、十分な対応ができずにいる。また、外国人の来店をリピートにつなげるにはどうすればよいか…

企業概要

株式会社田辺(代表取締役:田辺靖幸氏)は、台東区浅草橋で伝統工芸品の木目込人形の材料を販売している。木目込人形とは、粘土等で作られた人形に、衣服模様の筋彫りを入れ、その筋彫りに布の端を押し込み、まるで衣装を着ているように仕立てた人形のことである。

田辺氏は1951年創業の老舗店の三代目である。先代が急逝したため、準備ができないまま2011年に事業を承継した。

創業当時は木目込人形の完成品を提供していたが、現在はその材料である土台と布を販売している。木目込人形の材料を販売する企業として、木目込人形作成教室の先生やその教室の生徒等の愛好家から支持されている。

企業の悩み

木目込人形は50年ほど前にブームとなった。現在も愛好家が趣味として木目込人形の作成をおこなっているが、メインターゲットである顧客は70~80代と、高齢化により年々顧客が減少している。また、布の仕入先の経営者も高齢化が進み、後継者が見つからない企業が多く、いずれは仕入れが困難になる可能性が高い。現在は仕入先にお願いして事業を継続してもらっているが、今後いつまで経営を続けられるかわからない状況である。これは当社だけの問題ではなく、業界全体の問題でもある。

一方で、近年は海外からの観光客の増加により、外国人が店舗を訪れるケースが増えてきている。しかし、当社には英語を話せるスタッフがおらず、十分な対応ができずにいる。また、外国人の来店をリピートにつなげるにはどのような取り組みをしていけばよいかが、当社の悩みであった。

販路拡大のため、ギフトショーへの出展を検討していたところ、新・展示会等出展支援助成事業の助成金申請には、本プロジェクトの経営診断を受けることが必要とわかり、申し込むに至った。

導き出された課題

経営診断で洗い出された重要課題は、顧客の高齢化による顧客数の減少に対応するため、新規顧客を獲得することであった。近年店舗を訪れる外国人観光客が増えてきたことで、外国人のニーズがあることは感じていたため、海外販路の拡大を最優先課題として、今後の対策を検討していくこととなった。

もう一つ、インバウンドの増加を事業機会に結びつけるために、店舗を訪れる外国人観光客にとってより満足度の高まる施策を検討・実施し、自国に帰った後もリピーターとして注文してもらうことも課題と位置づけられた。

このように、利用のきっかけは助成金であったが、この時に受けた経営診断をきっかけとして、上記の課題を解決するため、成長アシストコースを受けることに決めた。

提案した中小企業支援施策

田辺氏は普段、経営の悩みを人に話す機会があまりなかったが、成長アシストコースの中で専門家と話し合いを重ねることで、課題を整理しながら解決に取り組むことができた。

海外向けの販路開拓方法については、Etsyという手芸専門のECサイトの活用を検討した。どういうニーズがあるかわからなかったが、ニーズをつかむためにも、まずはEtsyに出品してみることになった。実際に出品し始めたところ、すぐに反応があった。その反応を分析したところ、在庫を多く有する布の反応が良いことがわかったため、布を中心に出品し始めた。

さらに自社Webサイトの英語版コンテンツの充実も図った。コンテンツの作成にはクラウドソーシングを使うことや、翻訳会社に委託する等、具体的な方法が専門家から提案された。

店舗を訪れる外国人観光客に対しては、英語での接客が難しいため、英語の案内パネルを掲示することになった。これについても専門家の支援を受けながら具体的な原稿を作成することができたため、速やかにパネルを掲示することができた。

店舗にはEtsyの案内も掲示しており、来店した外国人観光客のリピート注文につなげている。

その後の状況

成長アシストコースの支援終了後も、海外販路の拡大に積極的に取り組んでいる。現在は、“Tanabe Doll”という名前でEtsyに出品している。Etsyでの反応は上々であり、少しずつ売上が増加している。Etsyの口コミでは良い評価が投稿され、メールでメッセージが届くことも多い。海外の顧客とのやり取りはすべて英語のため苦戦したが、翻訳サイトを活用しながら対応している。

また、顧客の声が多く集まってきたため、ニーズの収集ができつつある。今後は、ニーズに合わせたコンテンツを用意していきたいと田辺氏は考えている。

今後は、事業計画を社員と共有し、現在は田辺氏のみで対応している配送等の業務についても、事業が軌道に乗った段階で、全員で取り組むようにする予定である。

さらには、Etsyへの出品で手応えを感じたため、国内向けに自社Webサイトでの販売も強化する予定である。

企業様の声

人に話して課題をまとめるということは、すごく効率がいいと思いました。いろいろ一人で考えていると悩みは無数に出てきますが、人に話すことで自分が何に悩んでいるかをはっきりさせることができ、解決に取り組むための優先順位をつけることができました。

成長アシストコースの支援では、具体的にいろいろな手法を教えていただいて、実際に始められたことも良かったです。1、2回面談をしてアドバイスされただけでは、なかなか時間が取れず実行に移せなかったと思います。しかし、今回は面談の回数が多く、具体的に対策を検討しながら行動することができました。これからも自分の頭を整理するために、今考えていることを様々な人に話していきたいと思います。成長アシストコースを利用できて最高でした。

経営指導員の声

田辺社長の第一印象は「寡黙な方」でした。しかし、支援の過程でお話をうかがうと、少子高齢化の中、木目込人形ユーザーの減少や材料製造職人の廃業等、販売・仕入の両面に危機感を持ち、ご自分なりの方向性を描いておられました。成長アシストコースの支援で当社の進むべき道が整理され、現在、田辺社長自身がインバウンド向けWebサイトやECサイトに取り組み、実績を出し始めておられます。今後も社員の理解を深め、一丸となって業績向上に取り組んでいかれることを期待しております。
(経営指導員:山下昌敏氏)

企業情報

企業名 株式会社田辺
代表者 田辺靖幸
創業年 1951
業種 小売業(木目込人形材料)
所在地 東京都台東区浅草橋1-18-10
アックビル3階
事業PR
URL https://kimekomi.co.jp/


中小企業診断士 野竿健悟

一覧ページに戻る

< 経営診断・分析事例TOP

pagetop