行動を起こすことで見えてきた、新たな販路
企業名:アースアンドライフ株式会社 取材先ご担当者様:代表取締役:大浦政秀氏
消費者には綺麗な環境で育った安全な肉を食べる権利がある、との思いで全世界からオーガニック&ナチュラルな食肉を取り寄せて事業を続けるものの、当社の食肉の価値がなかなか思うように伝わらず、売上は停滞して苦しんでいた…
企業概要
アースアンドライフ株式会社(代表取締役:大浦政秀氏)は、中央区銀座で食肉や食肉加工品の輸入・卸売などを行っている。大浦氏は、食品会社でこだわりの生鮮食品のバイヤーとして長年の経験を積んできた。この経験を活かし、「抗生物質や添加物などを使用しない、安心安全な食べ物を家庭に届けたい」との思いから、1993 年に起業。これまで自身が手掛けてこなかった牛肉に的を絞った。以降、牛肉を中心として、豚肉や鶏肉などオーガニック&ナチュラルな食肉を欧米やオセアニアから輸入し、飲食店や高級スーパーなどに卸している。
企業の悩み
起業当時はまだオーガニックという概念が国内に普及していない時代だったが、元勤務先の食品会社が当社の扱う食肉のコンセプトに理解を示し、取り扱いを開始してくれることとなった。その後、10年ほどは順調に売上を伸ばしていったが、2000年代初頭にBSE問題が発生し、一気に売上は底に落ちた。そのような中でも、確かな品質の商品だからと取引を継続してくれた得意先もあり、何とか危機を乗り越えることができた。とはいえ、自社ではコントロールできない事象によって経営に大打撃を受ける経験は、もう二度としたくない。
また、当社で取り扱う食肉には、抗生物質などを使用しない「オーガニック&ナチュラル」であるという付加価値がある。しかしながら、バイヤーには「安くないと売れない」と言われ、発育促進のために大量の抗生物質を投与された食肉との価格競争に巻き込まれてしまっている。
消費者には綺麗な環境で育った安全な肉を食べる権利がある、との思いで全世界からオーガニック&ナチュラルな食肉を取り寄せて事業を続けるものの、当社の食肉の価値がなかなか思うように伝わらず、売上は停滞して苦しんでいた。そのような中、これまでのBtoB中心からBtoC にもビジネスを拡大することで、消費者に直接思いを伝えつつ利益も向上させたいと考え、専門家の意見を得るため本プロジェクトの利用に至った。
導き出された課題
経営診断の結果、以下の3つの課題が示された。1つめは顧客の見直しである。顧客別にどれくらい利益が出ているのか、まずは現状を正確に把握することが求められた。2つめは新たな販路開拓である。顧客の見直しとともに、当社の食肉に対する考えに賛同してくれる新規顧客を開拓する必要がある。3つめは販売促進体制の確立である。当社の取り扱う商品の良さを十分にかつ広く知ってもらうために、ホームページやパンフレットの拡充も求められた。
この中で、社長がまず取り組むべきだと考えたのは、ホームページの拡充であった。以前から作成してはいたものの、熱の入ったものとは言い難く、ネット販売のシステムも不十分であった。今後BtoC ビジネスを展開するうえで、ネット販売システムの再構築は欠かせないものであった。
提案した中小企業支援施策
経営診断の結果を受け、導き出された課題の解決に向けて、成長アシストコースを利用して取り組むこととなった。
今回の支援で最も効果があったのは、試食会の開催であった。社長のオーガニック&ナチュラルに対する豊富な知識、食と環境への思いを直接顧客に語りかける場を持つことを助言され、実施したものである。
そしてもう1 つ、BtoCビジネスの強化として取り組んでいるのが、ネット販売システムの再構築である。これまでのシステムでは「1kgの牛肉」として販売してきた。しかし実際には1.1kgの塊もあれば980gの塊もあり、これは顧客からのクレームに繋がるのではないかと懸念していた。専門家からのアドバイスで、グラム販売に対応できるシステムがあることを知り、このシステムが、試食会で興味を持ったお客様が購入できる受け皿として機能することも期待している。
さらに、新・展示会等出展支援事業についても紹介があり、成長アシストコースの終了後に利用することを考えている。
その後の状況
一番の成果は、試食会をきっかけに、新たにスポーツジムから取引を希望されたことである。これまでの取引形態からは思いもよらないところに販売先があると知ることができ、今後の可能性についても期待を膨らませている。現在スポーツクラブ関係で2社との契約が成立しており、今後も健康を意識する層への販売展開に力を入れていこうと前向きに検討し始めている。また、再構築に着手したネット販売システムも、リリースまであとわずかというところまで来ている。
企業様の声
経営者というのは常に孤独なもので、悩みがあっても誰にでも相談できるものではなく、誰かに尋ねたところで簡単には情報を教えてもらえるものでもありません。しかし、今回の支援では大変親身になって意見をいただくことができました。支援者の方は「こうしなさい」と解を示すのではなく、「私だったらこうします」と道筋を示していただけたのが一番嬉しかったです。支援を受ける中で、スポーツジムという新しい顧客が見えて来ました。また、インターネット販売についても再スタートの目処が立って来ました。当社は起業以来、次世代を担う子供達に綺麗な環境と安全な食べ物を届けたいとの想いで事業を行って参りました。今後は、インターネット販売のシステムを利用して、子育て中の方々に直接メッセージを伝えながら販売していきたいと考えています。
経営指導員の声
当社の一番の課題として利益率の向上が挙げられました。そこで、新分野としてBtoC を開拓するべく、支援を開始しました。これまで利益率の管理体制はなく、BtoCに関するノウハウもない状況でしたが、代表者、およびその右腕である社員が非常に精力的に業務を進めるタイプだったことが、支援を進める上で非常に助かりました。特に大浦氏は、人脈とアイデアに優れています。
一方で、その人脈やアイデアを使って新しい事業をどのように具現化するかは計画的でない面もあり、中期計画策定後はアイデアの実行スキームとその進捗確認を中心に支援しました。結果、取扱製品のインターネット販売も形ができ、専任者を採用して運営しはじめたところです。また、利益率に対応した顧客管理や案件判断の意識もつき、大手チェーンなどに依存する体質を改善し始めています。
(コーディネーター:佐川博樹氏)
企業情報
企業名 | アースアンドライフ株式会社 |
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代表者 | 大浦政秀 |
創業年 | 1993 |
業種 | 卸売業(食肉、食肉加工品、健康食品、飲料用原料) |
所在地 | 東京都中央区銀座1-14-5 銀座ウィングビル1F |
事業PR | |
URL | http://www.earthandlife.co.jp/ |
中小企業診断士 荒井由紀子