人や車の流れを治療する“トラフィックドクター”~施策とWeb活用で販路開拓~
企業名:株式会社道路計画 取材先ご担当者様:代表取締役 土井 元治 様
実際に渋滞や事故が多く発生する地点で撮影した動画を独自のソフトウェアで解析・可視化し、科学的に改善案を導き、さらに効果予測のシミュレーションを含めて提案している当社が、その業務経験から「高所から動画撮影すると、広範囲にわたる物や人の動きを正確に把握でき、精度の高い分析ができる」として開発した。それは……
企業概要
株式会社道路計画(代表取締役:土井元治社長)は、昭和56年、同業種の他社で経験と人脈を蓄積した現会長により設立され、渋滞や事故など道路交通に関する問題の発生原因分析と改善のアドバイスを行う技術コンサルタント業を営んでいる。
当社の強みは、基本的に下請けを使わず、高度な技術的知見を備えた自社エンジニアが、原因の特定から改善策の策定・提案まで一貫してサービスを提供することである。一連の高品質なサービスは高く評価され、国土交通省や各高速道路会社をはじめとする多数の道路管理者に採用されている。
当社の代表的な業務は、実際に渋滞や事故が多く発生する地点で撮影した動画を独自のソフトウェアで解析・可視化し、科学的に改善案を導き、さらに効果予測のシミュレーションを含めて提案することである。その業務経験から「高所から動画撮影すると、広範囲にわたる物や人の動きを正確に把握でき、精度の高い分析ができる」という気付きを得た当社は、高所撮影用機材「ビューポール」の開発に成功した。この「ビューポール」は、その新規性が評価されて特許を取得するとともに、国土交通省新技術システム「NETIS」にも登録されている。
企業の悩み
当社設立から数年間は、ちょうど公共事業が拡大し、道路の新規建設が多く行われた時期であったため、当社は追い風に乗って順調に業績を伸ばした。しかし、財政赤字問題に端を発する公共事業削減や構造改革によって官需の先行きに不透明感が増し、平成11年以降、建設コンサルタント業務の市場規模はほぼ右肩下がりで推移していった。
そもそも、「物や人の流れをより良くする」というニーズは、既存事業の範囲には限定されないはずだ。そう考えた当社は、民需への展開を企図し、公的機関の施策を活用するなどして、鉄道会社やショッピングセンター設置会社などへのテストマーケティングを行った。しかし、これらの民間企業は自ら費用を負担して周辺の渋滞対策に取り組むわけではない点など制約が多く、民需への展開は必ずしもスムーズに進んではいなかった。今回、高所撮影用機材「ビューポール」のレンタル事業を通じてさらなる販路開拓を進めるべく、商工会議所の経営指導員を通じて本プロジェクトの企業診断を利用することとなった。
導き出された課題
中小企業診断士によるヒアリングの中で、「ビューポール」のレンタルについて地域によるばらつきが大きく、九州地方では件数が多いものの、関東・東北・北陸地方では少ないことがわかった。そこで、公的機関のお墨付きを得るなどして知名度を高めつつ、まだ実績の少ない地域の自治体や同業者などに働きかけていくという提案を受けた。
また、営業に多くの人員をあてることは現実的でなく、販路開拓をインターネットに負うところが大きい一方で、Webからの問い合わせ数は十分とは言えなかった。このため、ホームページの内容を「顧客の悩みをどのように解決する存在か」がよくわかるように改善し、適宜SEO対策を行って、ターゲットとなる顧客の誘導を図るようアドバイスされた。
さらには、これまでに蓄積されたクライアントとの信頼関係を維持して足場を固めつつ、中長期的課題として新しい収益源にも取り組む必要性が指摘された。「動画の撮影と解析によるお悩み解決」という切り口でアプローチできる先としては、道路以外の交通機関、物流拠点、工場などが考えられる。
提案した中小企業支援施策
中小企業診断士からは以下の支援施策の紹介を受けた。経験豊富で人脈もある企業OB人材のサポートを受けられる点で「ニューマーケット開拓支援事業」が有効と考えられたが、これを利用するためには東京都などから技術力を有するという評価を得ておく必要がある。当社の場合、中小企業の新規性の高い優れた新商品等を認定する「東京都トライアル発注認定制度」に応募済みであったため、その認定を待っての利用となる。
また、経営指導員からは、エキスパートバンクによる専門家派遣を活用し、ホームページの改善を中心として継続的にアドバイスを得ていくことが推奨された。
エキスパートバンク(専門家派遣) 東京商工会議所
年度内に3回まで無料で専門家の支援を得られる。当社の場合、本プロジェクトの企業診断を担当した中小企業診断士に、引き続きサポートを受けることとなった。
ニューマーケット開拓支援事業 東京都中小企業振興公社
商社やメーカーなどで経験を積んだビジネスナビゲータが販路開拓を支援する。売れる製品・技術にするためのアドバイスや、具体的な取引マッチングを行う。。
その後の状況
当社ホームページの統計からは、滞在時間10秒以下のユーザが77%を占めており、当社の「道路計画」という名称が「道路整備の計画などについて知りたい人」等にミスヒットしている状況がうかがえた。他方、当社には「道路計画」という名称で蓄積された長年の信用があり、社名を変更することはリスクを伴う。そこで、エキスパートから、販売拡大を図りたい「ビューポール」のレンタルを軸に据えたソリューションサイトを立ち上げ、適切なキーワードでリスティング広告を行って標的顧客を誘引するという提案がなされた。ホームページの統計を定期的に確認し、キーワードの見直しや表示される時間帯などを調整して広告費を有効活用することも併せてアドバイスされた。
このソリューションサイト「交通調査ドットコム」は7月末に完成し、リスティング広告からの誘導で数件の問い合わせがあった。ホームページの統計を定期的に検証し、当社と関係の深そうなユーザ層にクリックされているキーワードに絞り込む取り組みも続いている。時間が経つにつれ、オーガニック検索での表示順位も上昇しており、一定の成果が出ている。
ホームページの内容面では、本来は製品を導入して問題解決に至った事例や顧客の声などを載せるのが効果的である。しかし、当社の場合は発注者との守秘義務契約により具体的な事例を公開できない点が悩ましい。この点、エキスパートからは、標的顧客に具体的に問題解決のイメージを湧かせるため、イラスト等を使った解決までのストーリー紹介、大学教授など専門家からの推薦コメントなどの掲載を充実させていくようアドバイスがあった。当社では、これらを今後徐々に充実させていく意向である。
一方、8月には「東京都トライアル発注認定制度」の認定を無事に取得でき、これを受けて「ニューマーケット開拓支援事業」による支援も開始された。エキスパートから、拡大したい売り先を明確化して優先順位を付けたうえでマッチングをお願いするようにというアドバイスがあり、これを受けてビジネスナビゲータによる支援が続いている。
企業様の声
当社はここ数年間、安定した経営を続けてはいるものの、将来を見据えて受注先をさらに拡大したい。当社には解析ソフトウェアの作成からデータ処理、さらには改善策の提案まで行える優秀な技術者が揃っており、技術力には自信がある。一方で、長年公的な受注がメインで受け身の営業スタイルが多かったことから、自社を効果的にアピールすることは苦手としている。
今回の企業診断とそれに続くエキスパート派遣の中で、お客様の視点に立ち、自社がどんな悩みをどうやって解決できる存在なのかを具体的に伝えていくことの重要性が、よく分かった。今後もホームページの改善を続けていくとともに、「東京都トライアル発注認定制度」や「ニューマーケット開拓支援事業」などの支援施策を活用して、高所撮影用機材「ビューポール」を全国へ広めていきたいと考えている。
企業情報
企業名 | 株式会社道路計画 |
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代表者 | 土井 元治 |
創業年 | 昭和56年2月 |
業種 | 建設コンサルタント |
所在地 | 東京都豊島区東池袋2-13-14 マルヤス機械ビル5階 |
事業PR | 交通調査ドットコム http://www.kotsu-chosa.com |
URL | http://www.doro.co.jp |
平成25年12月3日
松林 栄一