受託型からオリジナル商品へシフト -販路開拓の助成金活用で一歩踏み出す-
企業名:株式会社Sparks & Company 取材先ご担当者様:代表取締役社長 萩原 和彦 様
受託業務に加えて、自社オリジナルの製品・サービスの充実を図り、より安定して収益を上げられる企業に進化することが課題であるが…
企業概要
株式会社Sparks & Company(代表取締役:萩原 和彦 社長)は、大手メディア企業で新規事業開発部門の役員を務めていた萩原氏が、前職の同僚と2008年5月に創立した企業である。前職企業は新規事業としてネットによる映像配信部門を起ち上げたが、折からの出版不況が重なり、結果的に撤退という経営判断がなされた。その際、萩原氏らは、インターネットや映像を活かしたプロモーションに関するノウハウを活かして起業する道を選んだのである。
当社の強みとして、前職時代の人脈を活かし、クライアントから先進的なニーズを先取りできること、Webマーケティングやコンテンツ、システム、アプリケーションなどの開発経験が豊富なスタッフや人脈を有すること、マーケティングから制作まで一貫したクライアント支援ができることなどが挙げられる。
こうした強みを活かして、設立より現在に至るまで、様々な大手企業から、インターネットや映像、システムを使った企画やプロモーションを受注してきた。クライアントの業界は、家電、IT、住宅、教育、製薬など多岐に渡る。得意先から仕事のクオリティについて高い評価と信頼を得ており、財務的にもこれまで無借金経営を続けている。
今後に向けては、受託業務に加えて、自社オリジナルの製品・サービスの充実を図り、より安定して収益を上げられる企業に進化することが課題である。そのため、2010年からはスマートフォン用アプリ、さらに2011年からはより表現力の高いタブレット型端末にも着目し、デジタルカタログのソリューション、及びこれをより有効に活用できるアプリケーションとシステムの開発・販売に注力している。
企業の悩み
当社は大手のクライアントを多数有するが、大手企業からのプロモーション関連の受託案件だけでは、外的影響を受けやすく安定した企業運営の面では難しい面があるという。萩原氏はこう語る。
「リーマンショック、超円高、東日本大震災後の『自粛』ムード、タイの洪水影響による新製品発売先送りなど、経済環境は大きく変化しています。これらの変化によって、大手企業のプロモーション計画は大幅に変更されるため、プロモーション関連の受託案件の受注にはどうしても波が出てしまうのです。」
企業の受託業務から、徐々に自社オリジナルの製品・サービスにシフトすることで、安定して収益を上げられる企業に変わっていきたい。しかし、そのための開発とプロモーションの費用を、今の売上規模と不安定な経済環境下で捻出するのは厳しい。悩んだ萩原氏は、2011年3月、商工会議所支部へ相談に訪れた。
導き出された課題
対応した経営指導員は、さっそく当社の支援に動き出した。現状の整理と経営の方向性見極めに資することから、「経営力向上TOKYOプロジェクト」の企業診断を勧め、以前から信頼している中小企業診断士と打合せをしたうえ、当社に同行した。
中小企業診断士は、萩原氏の相談内容を踏まえつつ、客観的に当社の課題抽出を行った。中長期的な課題として、①システム開発・新商品開発の計画的実施、②固定的人件費の見直し、③一般経費の効率的使用の3点を通じての内部留保充実が挙げられた。
提案した中小企業支援施策
診断結果を受け、経営指導員と中小企業診断士が相談した結果、当面の課題である自社オリジナルの製品・サービスの展開について、確実に軌道に乗せるため、助成金などの施策を活用して展示会に出展するようアドバイスがなされた。
- 専門家派遣(エキスパートバンク)
小規模事業者の皆さんがお持ちの経営課題に対応する登録エキスパート(専門家)を直接事業所に派遣し、具体的・実践的なアドバイスによって問題の解決に役立てていただくものです。 - 経営革新計画の承認
新たな事業活動を行う経営革新計画の承認を受けると、日本政策金融公庫の特別貸付制度など多様な支援を受けられます。
その後の状況
2011年7月、「展示会等出展支援助成事業」を利用して、「電子出版EXPO」に出展した。当社のスタッフはイベント等の経験が豊富だが、ブース作り、機材の手配や輸送まで自分たちでするのは初めてで、戸惑いもあった。しかし、助成金の交付決定により、スタッフに「応援していただいている」という意識が芽生え、高いモチベーションで出展を成し遂げた。
結果として、300を超える多様な分野の企業と名刺交換をすることができ、その後個別フォローで商談と契約に結びついた例も多数あった。次の段階としては、展示会で出会った見込客からの様々な要望に単純に応えるのではなく、一歩先の潜在ニーズをソリューションに高めて提示していくことが望ましい。
そこで、当社では、競合他社に先駆けて、よりプレゼンテーション効果の高いVR(360°可視化)、映像を組み込んだコンテンツと閲覧するためのビュワーを組み合わせ、更にクラウドコンピューティングを活用した配信管理システムを確立し、新規顧客の獲得を狙うこととした。経営指導員からは、この新たなビジネスを計画的に実現させるための仕組みづくりに役立ち、展示会出展費用の助成を受けられる「市場開拓助成事業」も利用できることから、「経営革新計画」の申請を勧められた。
萩原氏は、経営革新計画を申請すると決めたものの、書類の項目がやや漠然としたものに感じられ、作成負担が大きいと感じた。また、「付加価値額」など、普段意識したことのない経営指標に戸惑いもあった。そこで、経営指導員はエキスパートバンク(専門家派遣)を活用し、前回と同じ中小企業診断士に、経営革新計画作成の支援を要請した。中小企業診断士は、ITの専門用語をかみ砕いた表現にする、事業の仕組みを図示するなどのアドバイスを行い、萩原氏をサポート。経営指導員も、何度となく当社に足を運び、最後は一緒に都庁へ行って担当者への説明に同席するなど、熱心な支援を行った。
これらの支援が功を奏し、2011年12月、無事に経営革新計画の承認を受けることができた。2012年5月には、上述の「市場開拓助成事業」を活用して、「Web & モバイルマーケティングEXPO」に出展し、期間中毎日多数の来場者が当社のブースに立ち寄った。現在は、新たなサービスを軌道に載せるべく、この展示会で獲得した見込客との商談に取り組んでいるところである。
企業様の声
当社を担当していただいている経営指導員の方は、行動が素早く、きめ細かいサポートをして下さるので、とてもありがたいです。相談に行く前は、商工会議所をもっと暗くて事務的なところと想像していて(笑)、よい意味で期待を裏切られました。
経営革新計画の対象である、タブレット端末とクラウドを使った電子カタログには、「より説明しやすく伝わりやすい」「更新や期限の管理が簡単」など、紙のカタログにはない多くのメリットがあります。今後はこの仕組みを積極的に展開し、「仕組み」である配信管理システムとコンテンツの両方を作れる強みを活かして、事業基盤の強化を図っていきます。
展示会出展支援など、中小企業支援施策を活用させていただきましたが、プログラミングができるエンジニアやコンテンツ制作スタッフ等の人材の確保など、実務的な側面での支援施策が充実してくると、いっそうありがたいです。
企業情報
企業名 | 株式会社Sparks & Company |
---|---|
代表者 | 萩原 和彦 |
創業年 | 2008年 |
業種 | システム開発、アプリ-ケーション開発、コンテンツ企画制作、広告代理 |
所在地 | 東京都千代田区神田多町 2-11 第19岡崎ビル7F |
事業PR | |
URL | http://spks.co.jp/ |
平成24年5月22日
松林 栄一