自社を見つめ直し新たなステージへ -経営指導員の支えでモチベーションアップ-
企業名:ユニインターネットラボ株式会社 取材先ご担当者様:代表取締役 嶋田 きよの 様
当社は、大手企業や官公庁を含む優良クライアントを獲得してはいるものの、受注単価は徐々に下降し、新規顧客の獲得も難しい状況で、「年度が終わって締めてみないと黒字かどうか分からない」状態から…
企業概要
ユニインターネットラボ株式会社(代表取締役:嶋田きよの 社長)は、2000年の設立以来、ホームページ製作及びソフトウェア開発を行ってきた。
嶋田社長は、大学時代に起業を意識し始め、アパレル企業に入社後、ウェブデザインを担当する。時は1996年。ちょうど「Windows95」の普及が進み、日本でもインターネット時代が幕を開けた頃だ。最初はアパレル販売の手段としてインターネットに着目した嶋田社長は、やがてインターネットのポテンシャル自体に事業の可能性を見出し、2000年にホームページ製作会社を立ち上げた。これが現在の当社である。
ちょうどネットバブル時代であったことが幸いして、多くのホームページ制作案件を高単価で受注でき、間もなく従業員も12~3名に増えていった。
しかし、同業他社が次々に現れた後、ネットバブルが崩壊すると、競争関係は一気に激化する。当社は、大手企業や官公庁を含む優良クライアントを獲得してはいるものの、受注単価は徐々に下降し、新規顧客の獲得も難しい状況になっていった。また、「年度が終わって締めてみないと黒字かどうか分からない」という状況も生じていた。
企業の悩み
嶋田社長は、業界の競争関係が激化する中で、「スタッフと一緒に長くいい仕事をして、世の中に貢献したい」という理想と、単価が下降し新規開拓も思うようにいかない現状との狭間で、何とかしなければと思い、一人で悩み続けていた。
ちょうど、小規模企業共済の契約者貸付(払い込んだ掛金合計額の範囲内で、事業資金等の貸付けが受けられる制度)を利用して、運転資金の借入をしようと思い、その手続のために商工会議所での相談が必要と言われたことから、たまたま商工会議所へ相談に行った。2009年のことである。
導き出された課題
対応した商工会議所の経営指導員は偶然、嶋田社長と同じ女性であった。女性キャリアとして共感してもらえ、単に「借入に必要な手続」の相談のみで終わらずに、以後も嶋田社長にとって「見守り、応援してくれる存在」として、信頼関係ができていった。
受託業務での売上拡大が厳しい中、嶋田社長は、独自のCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を核にしたサービスを事業化することにより、安定的な売上を確保したいと考えていた。2011年、経営指導員との相談の中で、「この機会に、今後の事業展開の前に自社を見つめ直し、課題をはっきりさせて取り組んでみてはどうか」というアドバイスを受け、「経営力向上TOKYOプロジェクト」の企業診断を受けることになった。
この「経営力向上TOKYOプロジェクト」の企業診断では、まず経営者自らがチェックシートの項目について現状をチェックし、それをもとに中小企業診断士が経営者にインタビューを行ったうえ、当該企業の課題と解決策について提案を行う。
嶋田社長の依頼を受け、経営指導員がアサインしたのは、経験豊富な女性の中小企業診断士であった。中小企業診断士は、そもそもの経営理念や会社の使命について明確化と共有ができていないことを指摘し、まずはそこから着手するように勧めた。さらに、新サービスについて、マーケティング戦略策定の手順に沿って、顧客や差別化ポイントを明確化すること、続いて取り組み体制・スケジュール等を可視化した事業計画を作成することをアドバイスした。
提案した中小企業支援施策
経営指導員からは、中小企業診断士によって指摘された課題を解決するための具体的なサポートを受けるため、「専門家派遣」を活用するよう勧められた。また、支援により明確化された経営理念と戦略に沿った会社案内を作成して営業に役立てるため、「展示会等出展支援助成事業」についても紹介された。
- 専門家派遣(エキスパートバンク)
小規模事業者の皆さんがお持ちの経営課題に対応する登録エキスパート(専門家)を直接事業所に派遣し、具体的・実践的なアドバイスによって問題の解決に役立てていただくものです。
その後の状況
中小企業診断士は、経営指導員と密にコミュニケーションを取りながら、専門家派遣の機会をフル活用して、嶋田社長をサポートしていった。まず、課題の1つであった経営理念の明確化については、中小企業診断士の丁寧な質問により、自社の強みや目指すものを見つめ直すことができ、結果として、非常に伝わりやすい経営理念ができあがった。
考えた経営理念が本当によいものどうかは、自分だけではなかなか分からないもの。中小企業診断士は「それでは分かりづらい」とNGを出し、スタッフの要望をアンケートで把握する等、社内のコミュニケーションに配慮しながら練り上げていく過程について、必要なサポートを行った。
続いて、新サービスについても、競合分析やマーケティング戦略の策定を通じて、今考えているサービスが本当に強いものなのか、新サービスとして打ち出すためには何が必要かを、一緒に考えていった。嶋田社長は、「今までも独学で工夫はしているつもりでしたが、診断士の先生のアドバイスを聞きながら考えることによって、今までになく視野が広がりました」と語る。
さらに、事業計画作成については、今まで必要性は感じつつもつい後回しになっていたところ、中小企業診断士のサポートにより、初めて可視化して従業員と共有することができた。
また、専門家派遣による支援の中で明確化された、経営理念、自社の強みとそれを活かした顧客へのサービス、事業計画を踏まえ、経営指導員から紹介された「展示会等出展支援助成事業」を活用することにより、自社の会社案内を作成した。当社はウェブデザインを得意とするが、紙の会社案内を作るノウハウは、ウェブのそれとは異なるという。
この助成金を活用することで、専門のデザイナーとカメラマンを使うことができ、「お客様の声」などを交えたクオリティの高い会社案内を作ることができた。新しい会社案内は従来よりも訴求力が高く、面会した担当者が上司に見せた際にも関心を引くため、厳しい競争の中で新規顧客を開拓する際の有効なツールになっている。
今後に向けては、入金が年度末に偏りがちな官公庁からの受注に頼りすぎることなく、民間への営業を強化して収入を平均化すること、ネットショップ等のサービスを充実させて中小企業のウェブ活用に関するニーズに応えること、支援の中で明確化された経営理念に沿った人材の獲得・育成に向けて評価などの諸制度を整備することを、次の課題として位置付け、取り組んでいるところである。
企業様の声
正直なところ、実際に相談に行くまでは、「商工会議所は自分にとって関係ないところ、メリットのないところだ」と思っていました。しかし、実際に行ってみたら、親身になって話を聴き、応援してくださるコーチのような方に出会うことができました。
経営者というのは孤独で、業績が悪ければ様々な方に責められますが、よかったからといって誰にも褒めてもらえません。経営指導員の方は、私を見守り、声を掛け、励まし、モチベーションを上げて下さるので、とても有り難い存在です。
自社の今後に向けて、専門家にサポートをお願いしたい気持ちはありましたが、お金が掛かるので難しいと思っていました。経営指導員の方に、自社にふさわしい先生を紹介していただき、しかも無料で支援が受けられるというのは、非常に嬉しいです。これからも、商工会議所などの公的なサービスを活用させていただきながらノウハウを高め、より多くのお客様に自社のサービスを使っていただけるよう、頑張っていきます。
企業情報
企業名 | ユニインターネットラボ株式会社 |
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代表者 | 嶋田 きよの |
創業年 | 2000年 |
業種 | ホームページ製作及びソフトウェア開発 |
所在地 | (東京営業所)東京都中央区勝どき2-18-1-1339 |
事業PR | |
URL | http://www.unilab.co.jp/ |
平成24年5月8日
松林 栄一