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「面白いから、ものづくりに関わる」地域の工業を支える町工場

企業名:有限会社オクギ製作所  取材先ご担当者様:取締役:和氣直道氏

暗黙知を形式知に変える情報共有が事業承継成功のカギ

ワイヤーカット放電加工の技術に特化した金属製品製造企業で、2018年に後継者候補であるご子息が入社したことから、事業承継の準備を意識するようになったが、何から始めればいいのか…

企業概要

有限会社オクギ製作所(代表取締役:和氣幸博氏、以下社長という)は、ワイヤーカット放電加工の技術に特化し、様々な業界のメーカー向けに、鉄・アルミ合金・銅合金・金・銀・プラチナなどの金属加工を手掛ける金属製品製造企業である。
当社では、半導体用の測定機器、天体望遠鏡、内視鏡などの微細部品の製造を多く手掛けている。ワイヤーカット放電による加工中は、加工物を常に冷却する必要があるため、加工液が必要となる。当社では、この加工液に油を採用した機械も保有している。この方式の採用によって、放電ギャップの抑制による高い加工精度や、加工物の錆防止などの品質面において、顧客に価値を提供している。

企業の悩み

これまで当社の主力事業は、自動車のスピードメーター部に利用される指向性液晶フィルムのプレス加工であった。この事業は、最終製品を商社に納品するビジネスモデルであるためプレス事業としては利益率が高く、先発参入のメリットにより金型製造も一時当社が独占していた。しかし近年では、光源がLEDへと変わったことからフィルム自体が不要になってきたため、市場は縮小する傾向にあった。
市場縮小の変化を感じとっていた当社は、ワイヤーカット放電加工を活用した微細加工を次の主力事業として見据えていた。後発参入で受注を得るためには、他社より低価格で受注する価格競争が必要となる。当社では、価格競争を回避したいと思っていたが、そのための対策に苦慮していた。
また、2018年に後継者候補であるご子息(取締役:和氣直道氏、以下取締役という)が入社したことから、事業承継の準備を意識するようになったが、何から始めればいいのか決められずに悩んでいた。
社長は、当社の現状を分析し課題を抽出してもらうため、かねてより商工会の経営指導員から勧められていた本プロジェクトの経営診断を利用することにした。

導き出された課題

中小企業診断士による経営診断の結果、以下の課題を導き出した。①新規事業の販路拡大のために、詳細なマーケティング戦略を作成すること、②経営ノウハウに関する事業承継計画を立案し、スケジュール管理を行なうこと、③今後の設備投資に備えて、財務健全性を示すための資金繰り管理を強化すること、④生産性向上のため、従業員の個々の意識を高める仕組みを構築することの4点である。
これらの課題に対し、後継者候補と共に取り組むことが重要であると助言を受け、具体策の立案とその実行に着手するため、本プロジェクトのアシストコースに申し込んだ。

提案された解決策

専門家から具体的なアドバイスを受けながら、課題解決に向けて取り組んだ。
まずは、経営理念や行動指針を作成し、従業員への浸透を徹底することで、各人が迷うことなく業務に取り組める体制を整えた。次に、経営ビジョンと経営計画を策定し、重点戦略へと落とし込むことで、「自社のあるべき姿」を具体的にイメージできるようにまとめている。
技術力の訴求中心であった展示会出展を新規顧客開拓・新規市場リサーチの場として捉え、社長1人の営業から、取締役との共同による営業へとシフトチェンジすることで営業体制の強化を図った。加えて、新規営業先のリスト化と実行管理方式の整理により、受注や引き合いの状況を可視化するなどのPDCAを実行する基盤を整えている。
また、原価計算システムの運用を始め、システムによる利益管理を可能にし、取引先、製品、案件ごとなどの利益分析への活用を図った。さらに、見積の精度向上と標準化により、全社的に収益が改善する仕組みの構築にも取り組んでいる。
当社に役立つ中小企業施策として、エキスパートバンク、小規模事業者持続化補助金、販路拡大助成事業などの紹介があった。当社では、この中から一番重要だと位置付ける販路拡大助成事業に申請し、交付決定を受けている。

提案した中小企業支援施策

その後の状況

実行支援の結果、当社が最も変化を実感しているのは、情報の共有が進んだことである。
本プロジェクトをきっかけに、展示会ごとに交換した名刺、会話の内容、フォローアップの状況を記載したファイルを作成するようになり、営業状況が一目瞭然となった。結果、展示会の種別ごとに求められているニーズや、受注に至るために必要な情報が分析できるようになっている。
また、取締役が前職のWebエンジニアのノウハウを活用して作成した独自見積システムによって、製品を生産するための工数やコストを予測できるようになった。同システム開発も、本プロジェクトで原価管理の手法や、迅速かつ正確な見積りの作成方法を学んだことで実現できた。予測の精度を高めるためには、製造実績データの蓄積が必要となるが、当社ではこのシステムを作業日報として、実績を入力することが標準ルールとなるまでに至っている。

企業様の声

これまでは、製造現場以外の営業面・財務面などのあらゆる情報が、社長の頭の中だけにあったのですが、情報共有の手法を教えていただいたおかげで、少しずつ形式知化されてきています。特に当社のように個別受注生産がメインの製造業では、精緻な見積りは、利益を最大化するための命綱のようなものです。私が事業を承継するにあたり一番高いハードルだと思っていましたが、少しずつ形が見えてきたので安心しています。現在では、月次で、顧客ごと、製品ごとに利益分析ができるようになっています。当社の事業特性が、
ワイヤーカット放電加工による高付加価値型の金属加工なので、売上ではなく利益を管理する必要があるというのも教えていただき、その重要性も理解できました。今後は、利益分析だけではなく、設備投資に備えた資金繰り健全性の向上まで実行していきたいと思っています。
(取締役:和氣直道氏)

経営指導員の声

当社は、高い技術力でニッチな市場を開拓していくことができる、東久留米市の中でも、ひときわ光る企業だと思っています。こういった企業が、次世代まで生き残っていけるよう事業承継が円滑に進んでほしい。また、本プロジェクトによって得た知識を生かして、経営者のノウハウを引き継ぐ手法を確立し、事業承継の先進事例となっていただきたいです。当社が事業承継のモデル企業となることで、地域の工業発展にも繋がります。当社は、それだけのポテンシャルを秘めた事業者だと考えています。そういった期待も込めて、引き続きサポートさせていただきたいと思います。
(東久留米市商工会:関根悟氏)

企業情報

企業名 有限会社オクギ製作所
代表者 代表取締役:和氣幸博氏
創業年 1951年
業種 製造業(金属製品製造業)
所在地 東京都東久留米市八幡町3-14-27
事業PR
URL https://okugiss.jp/


中小企業診断士 松永俊樹

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