児童の個別学習支援のパイオニアが差別化を図る
企業名:株式会社リップルズ 取材先ご担当者様:代表取締役:金子晴恵氏
教室事業は仕入がほとんどなく、月謝が先に入金されるため、黒字だった今までは資金繰りをそれほど気にしなくてもよかったが、気がつくと今後の資金繰りが懸念される状況に…
企業概要
株式会社リップルズ(代表取締役:金子晴恵氏)は、西荻窪で2つの学習支援教室を営んでいる。発達の偏りや学習につまずきのある児童を対象に学習支援を行う「アンダンテ西荻教育研究所」(2002年開業)と、言語・コミュニケーションや心理・感情の発達を促すことを目的として児童発達支援を行う福祉施設「アンダンテプリモ」(2016年開業)である。創業以来、発達障害児等に対する学習支援のパイオニアとして、地域や行政にも太いパイプを持っている。
大手のような画一的なプリント学習によるプログラムを提供するのではなく、児童の特性やニーズに応じたプログラムを提供することを大切にしている。
企業の悩み
「アンダンテ西荻教育研究所」を創業した当時は、近隣に競合他社がなく、生徒獲得もしやすく、黒字で推移していた。しかし、近年、大手などの競合他社が増えてきたことにより、当社の生徒数は減少し、3期連続の赤字に陥ってしまった。教室事業は仕入がほとんどなく、月謝が先に入金されるため、黒字だった今までは資金繰りをそれほど気にしなくてもよかったが、気がつくと今後の資金繰りが懸念される状況になっていた。
金子氏は、経営以外にも、担当児童への指導、親の対応、行政機関や保育園との連携・調整、従業員の教育など、やるべきことが多岐にわたり多忙だった。しかも、自身もプライベートでは未就学児を抱えており、業務時間に限りがあるため、抜本的な見直しに手をつけられない上、苦手意識のある資金繰りについては後回しにしてしまっていたのだ。
金子氏は、当時、決算書を見た父から「このままではいずれ資金ショートする」と指摘されたことで、大きな危機感を感じたものの、資金繰りや経営の立て直しについてはどこからどう手をつけたらよいかがわからなかった。改善は待ったなし、しかし、割ける時間は限られている。
そこで、本プロジェクトの経営診断チェックを受け、専門家に支援をお願いすることにした。
導き出された課題
金子氏が記載した「中小企業活力向上チェックシート」の内容を踏まえて、教育事業に知見を持つ中小企業診断士が経営診断を実施した。
経営診断の結果、①赤字経営からの脱却、②事業計画の進捗管理と差異管理の実施、③資金管理体制の構築、の3つを今後の課題として抽出し、まず手を付けるべきは①赤字経営からの脱却となった。
赤字原因を把握するために、会場別の損益状況の確認と勘定科目別に売上に対する経費率の分析を行ったところ、新規事業の「アンダンテプリモ」は黒字となっており、既存事業の「アンダンテ西荻教育研究所」の売上高人件費比率の高さが赤字原因であることが判明した。そこで、「アンダンテ西荻教育研究所」のコスト削減を図るとともに、新メニュー開発により生徒数増加を図り、売上増加を目指すことにした。
提案した中小企業支援施策
当社の希望により、本プロジェクトのアシストコースを利用して、専門家から具体的なアドバイスを受けながら、上記の課題解決に向けて取り組んでいくことになった。
メンバー全員が稼働時間内にどのような業務に従事しているかを「見える化」して分析を行ったところ、在籍減により指導従事時間と指導以外の業務に従事している時間のバランスが悪くなり、収益低下を招いていることが判明した。そこで、従業員と現状の認識合わせを行った上で勤務時間の見直しを行うともに、教室間の往来を極力減らすことでコストを削減した。
一方、新メニュー開発の第一弾として、学ぶスキルとモチベーションの向上を目指す「ぶれいんクラブ」を新設。第二弾として補助金を使って、読むことに困難があるお子さんのための支援プログラム「読み力アップコース」を新設した。それらは、金子氏が専門家と話すことで改めて気がついた、一人ひとりの学びの特性に配慮した個別の学習支援を専門とする当社の強みを活かす事業である。長年の知見を活かした、より専門的な、他社には無い新しいメニューを提供することで、差別化を図った。
他にも、福祉事業である「アンダンテプリモ」については、人材配置の見直しで有資格者の稼働を増やすことが可能となり、厚労省が定める報酬加算基準を満たすことで単価アップを実現した。
その後の状況
様々な取組みにより、生徒数も増加し、2019年9月期は黒字転換に留まらず、V字回復と呼べるまで回復した。その他、資金管理に関しても、銀行口座を集約して残高を把握しやすくするところから取り組み始めている。
また現在、2教室を統合できる物件を探しており、さらに業務効率化を進める予定だ。また、来年度より新規メニューも開始する予定で、さらなる売上増加に向けて着々と準備を進めている。
企業様の声
今までビジネス書は読んでいましたが、精神論が多く、当社の事業においては何を指標に管理し、どのように計画を立てればいいのかがわかりませんでした。しかし、教育事業に豊富な知見のある伊東先生に、当社の理念や想いを理解していただいたうえで、教室運営に必要な知識や考え方を教えていただけたことで、当社の事業に自分であてはめて、様々なことに気付くことができました。そのおかげで、見事に黒字転換できただけでなく、今後の経営に役立つ知識を得られたことに、とても感謝しています。
当社は、児童のナビゲータとして、時には背中を押す存在として、児童の多様な学びのお手伝いをこれからも続けていきたいです。
経営指導員の声
担当の伊東先生は、金子社長のことを「事業に関する多大な知見とアイデアに溢れ、1つの気づきからいくつもの行動を素早く起こすことができる経営センスのある方」と表現なさっていました。今回の支援がきっかけとなり、見事V字回復をなされましたが、それは企業様が持つもともとの強みと、聡明な金子社長の実行力や教育への情熱が、専門家によってうまく引き出されたからだと感じます。
これからも引き続き、お手伝いできれば幸いです。
(東京商工会議所:細田理未氏)
企業情報
企業名 | 株式会社リップルズ |
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代表者 | 金子晴恵 |
創業年 | 2002 |
業種 | サービス業(教育、学習支援業) |
所在地 | 東京都杉並区西荻北3-20-7 第2 保谷ビル201 号室 |
事業PR | |
URL | https://www.andante-nishiogi.com/ |
中小企業診断士 那須美紗子