「日本とタイをつなぐ場所」を作る
企業名:タイアヨタヤレストラン 取材先ご担当者様:オーナー:土屋知子氏
売上向上のために男性客を増やしたいと考えていたが、どのように増やせばいいかわからない。店内の空調設備に問題が起こり始め、こちらにも対応しなければならず、資金的な問題も…
企業概要
タイアヨタヤレストラン(オーナー:土屋知子氏)は、飲食店で活気あふれる立川駅南口に位置するタイ料理レストランだ。
土屋さんがタイ出身のご主人と結婚し、「日本とタイをつなぐ場所を作りたい」という思いで創業を決意。実家が食堂だったというご主人がタイ料理レストラン数カ所で修行をしたのち、2013年12月にレストランをオープンした。ご主人とタイ人シェフの2名が料理を作り、タイ人3名、日本人1名のアルバイトとともにオーナーがホールに立つ。夫婦で始めたお店は、5年で女性客の絶えない人気店となった。
企業の悩み
当店の悩みは大きく2点あった。1点目は、店内の空調設備に問題が起こり始めたことである。もともと日本料理の店舗だった物件を居抜きでオープンした当店の設備は、タイ料理店にそぐわない細いダクトの換気扇を利用していた。タイ料理は日本料理と比べると脂分が多い。創業から日を経るにつれ、細いダクトでは吸いが悪くなり、換気が滞り始めた。タイ料理は香辛料を多く使うため、換気が滞ると居心地が悪くなる。店内の空調をよくすることで居心地の良いお店にしたい一方で、土屋氏は資金調達の手段に悩んでいた。
2点目は売上の伸びである。多くのタイ料理店がそうであるように、当店の客層の7割は女性である。一方、男性客のほうがより多くの料理を注文してくれるため客単価も高く、店内の滞在時間が短いために回転率も良い。このことをわかっていた土屋氏は、売上向上のために男性客を増やしたいと考えていたが、どのように増やせばいいかわからないでいた。
このような悩みを抱えたオーナーは、立川商工会議所の青色申告会合同経営相談会に足を運んだ。相談の中では、設備修繕にも利用できる小規模事業者持続化補助金と、専門家による経営診断を受けられる本プロジェクトを紹介された。
導き出された課題
専門家による経営診断の結果、下記のような課題があがった。①蓄積されたままになっているPOSデータの分析・活用、②メニュー構成の検討による客単価の向上、③アンケートなどの顧客の声を吸い上げる仕組み作り、④シェフ2名の長時間労働の短縮、⑤整理整頓をはじめとした5Sの徹底、の 5点である。
当初検討していた客層の拡大は、専門家との対話の結果、男性にターゲットを合わせるのは難しいと判断された。まずは集客のターゲットを女性客に絞り、そこから男女の組を増やすことで売上の向上を図る方向性が導き出された。具体的には、女性客を増やすためのメニュー表の改訂や、来店客の少ない時間を埋めるためのハッピーアワー(空いている時間に飲み物を低価格で提供するサービスタイム)等、マーケティング的な観点から課題と施策の提言がおこなわれた。
提案した中小企業支援施策
上記の課題解決に向け、本プロジェクトの改善支援コースを利用して、まずは専門家の指導のもと、POSデータから客単価や来店人数の分析をおこなった。それまで何となくでしか把握していなかった売上状況を可視化し、そこからメニュー表の改訂もおこなった。4ページで構成されたランチメニューは当初、低価格のメニューが表紙から前方に並び、単価が高くオーナーのおすすめでもあるスペシャルセットは最後のページにあり、注文数が伸びなかった。しかし、このスペシャルセットは一度注文したお客様の満足度が高く、リピート率が高かった。このメニューの並び順が客単価向上の鍵であると判断したオーナーと専門家は、一番単価の高いセットを表紙に持ってくるなどの工夫をした。
労務についても、シフトの見直しを行った。現状の業務について2名のシェフが必要かを再検討し、最低限の人数で回せるように変えたことで、改善のきっかけになった。
そして、当初の懸案であった換気扇については、商工会議所の担当者と相談しながら、専門家による経営診断の内容を申請書に盛り込み、小規模事業者持続化補助金を申請。無事採択され、換気扇のモーターを大きくして換気性能を高めることができた。
その後の状況
POSデータの分析やランチメニュー表の改訂により、スペシャルランチセットの注文数が増えた結果、ランチの客単価を100円上げることに成功した。また、今回第三者の専門家の意見を聞いたことで、客観的な目線で店を俯瞰できるようになり、店舗のどこを改善していくべきかについて、家族や従業員と話せるようになった。今年度も引き続き専門家のアドバイスを受けながら、顧客アンケートを実施し、さらなる改善に向けて取り組んでいる。
企業様の声
専門家の方からの客観的な意見を聞けたことでお店の課題が明確になり、「次回までにこれをやろう」と計画的にお店を改善していくことができました。また、「工夫してもっと良くしよう」と思うようになり、私たちの意識が変わるきっかけになったのもよかったです。
今回のプロジェクトで「日本とタイをつなぐ場を作りたい」という創業当時の夢を思い出しました。そして客観的にお店を見たときに、お店を介してたくさんのタイ人や日本人がつながっていて、すでに思い描いていた形になっていると気づき、嬉しく思っています。引き続きご支援いただきながら経営基盤を作って、2年後までにもう1店舗増やすという目標を目指したいと思います。
経営指導員の声
きっかけは青色申告会合同経営相談会でした。ご相談をお受けする中で、継続的な支援による経営基盤強化が必要だと考え、本プロジェクトの経営診断を勧め、ご支援をさせていただきました。
日本とタイをつなぐ場づくりという経営理念のもと、飲食店激戦区の立川駅周辺で、本場のタイ料理とサービスで他店との差別化を図り、一生懸命店舗運営をされています。オーナーの日々の努力をもっとご支援させていただくために、今後も有益と思われる情報をご提供し、共に経営力向上を図っていきたいと考えております。
(立川商工会議所:芝田達矢氏)
企業情報
企業名 | タイアヨタヤレストラン |
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代表者 | 土屋知子 |
創業年 | 2013 |
業種 | 飲食業(タイ料理店) |
所在地 | 東京都立川市柴崎町2-2-5 あすなろTビル2階 |
事業PR | |
URL | https://thaiayothaya.owst.jp/ |
中小企業診断士 中嶋亜美