飲食業を応援する食品サンプル作り「あなたのお腹、すかせます」

企業概要

佐藤サンプル（代表：佐藤泰啓氏）は1925年創業、食品サンプルを製造販売する企業である。浅草の合羽橋に実店舗を構え、埼玉県に製造部を持つ。
ロウ製の食品サンプルから事業を始め、 現在はプラスチック樹脂原料と耐光性の高い塗料の組み合せで製造し、強い日差しを受けるショーケースのような環境でも長期間使用できる食品サンプルを提供している。食品サンプル業界では老舗で、現代表が3代目である。「サトウサンプル」のブランド名で「あなたのお腹、すかせます」をキャッチフレーズにして、実店舗とオンラインで販売している。

企業の悩み

2019年に消費税が増税されたことにより、主要な顧客である飲食店が影響を受け、当社の事業者向け売上は低下した。さらに2020年以降、コロナウィルス感染拡大により内外観光客が激減し、実店舗での個人客向け売上も低迷した。当社は、オンライン販売サイト（以下、ECサイト）を設け、当社商品の品質を訴求し知名度を上げることにより販売増加に繋げようとした。しかし、期待したアクセス数や反応を得ることができなかった。
そうした厳しい状況のなか、専門家の経営診断と助言を受けることができる本プロジェクトを、取引している信用金庫から紹介された。

導き出された課題

専門家による経営診断で導き出された課題は、①売上向上のための事業の見直し、②プロモーション向上のためのECサイト改善と活用、③事業者向け販売を強化するための営業活動の実施の3点である。
これらの課題を踏まえ、3つの改善策が提案された。①ターゲット顧客を事業者と個人客に分けて各々の事業を見直すこと、②潜在顧客をECサイトへ流入させるためにSNSを活用すること、③展示会などで食品サンプル活用シーンをアピールすることである。

提案された解決策

アシストコースとフォローアップコースを利用して、専門家から具体的な助言を受けながら改善策を実施した。まず、店舗の展示方法の改善である。実店舗内のショーウィンドウをテーマ別に分け、食品サンプルを説明するエリア、季節商品を打ち出すエリア、当社の技術力を訴求するエリアに分け、さらに来店客の目線での見やすさを工夫改善した。実店舗で来店客の体験を重視する取り組みを行う一方で、それをSNSやECサイトで発信して広く宣伝するよう助言が行われた。
次にECサイトの改善である。専門家の助言を受ける前には、3つのECサイトがあったが目的や分類が不明確であった。そこで、ECサイト別にターゲット顧客を明確化し、コンテンツも絞り込むことが助言された。事業者向けECサイトを1つ、個人客向けECサイトを1つと目的と対象を明確化し、全部で2つに集約した。事業者向けECサイトでは食品サンプル用途を訴求し、個人客向けECサイトでは販売商品を絞り込むとともに売れ筋商品を定量的に把握するようにした。そして、潜在顧客をECサイトへ誘導するための情報発信として、SNSを毎日投稿するようにした。また、ECサイトのQRコードを記載したショップカードを来店者に渡し、ECサイトへの誘導を図る取り組みも行われている。

提案した中小企業支援施策

• アシストコース（中小企業活力向上プロジェクトネクスト）
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その後の状況

佐藤代表が実感している最大の変化は「お客様の視点に立った経営方針が確立されたこと」である。以前は、高品質の商品を作れば売れるだろうという「作り手の視点」に立っていた。例えば、サンマの食品サンプルが初秋に品切れとなり、補充のための製造が旬を過ぎた初冬に行われて、売れ残ってしまうこともあった。現在では、お客様の視点での取り組みが行われている。月見団子の食品サンプルが好事例で、季節を先取りして8月からSNSで情報発信を開始するとともに、月見団子の食品サンプルをあらかじめ作り溜めしておくことで、お月見の当月（9月）に品切れが起きないよう工夫して売上を確保した。
専門家の助言を受けるまでは、作り手の視点で「見せたい商品」を実店舗で展示し、ECサイトに掲載していた。いまは「来店客が見たいであろう商品を展示する」、「潜在顧客が知りたいであろう情報を発信する」ことを強く意識している。
こうした経営方針の確立と取り組みにより、実店舗における入店率や買い上げ率が上昇した。また、SNSで毎日投稿していること、次の季節を先取りした情報発信と当社の親しみやすさを訴求していることで、ECサイトへのアクセス数が増加している。

企業様の声

消費税の増税に続き、コロナウィルス感染拡大で売上が低迷し、経営上の不安が大きくなっていました。専門家からの助言と具体的な実行支援を受けたことで、前向きな気持ちで経営改善策に着手できました。以前は手探り状態だったEC サイトも、専門家の助言を踏まえて自信を持って取り組むことができています。ECサイトに対するアクセスの分析をするなど、経営情報の「見える化」も進んでいます。
未だ着手していない改善策を一つひとつ実行に移し、事業者向けと個人客向け各々の売上、実店舗とECサイト各々の売上をバランスよく伸ばして、事業を成長軌道に乗せたいと考えています。
（代表：佐藤泰啓氏）

経営指導員の声

当社はアシストコースとフォローアップコースを利用されました。専門家の助言をうまく活用され、実店舗とECサイトの両方で経営改善に取り組まれて、コロナ禍という難しい状況のなか経営を見事に立て直されました。佐藤代表は、熱い想いで「サトウサンプル」の伝統を繋いでいらっしゃいます。当社のさらなる発展に向けて、東京商工会議所として引き続きサポートさせていただきたいと思います。
（東京商工会議所：永尾拓也氏）

企業情報

中小企業診断士　福田智浩