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1 戦略・経営者(市場・競合の把握・SWOT分析・戦略的経営行動)

自社の事業領域(対象顧客・商品・提供方法・技術などの組み合わせ)は明確になっている

「誰に」、「何を」、「どのように」提供していくのか

 企業がカバーする事業の領域を「事業ドメイン」と呼びます。最もわかりやすいのは、例えば電鉄会社なら「電車による輸送サービス」といったような、どのような商品やサービスを提供するのかという商品軸による定義です。ただ、これは現在の事業を説明するにはわかりやすいものの、他社との差別化のあり方や、今後の事業展開の方向性は明確ではありません。

 そこで最近では、商品やサービスを誰に提供するのかという「①顧客軸」、どのような技術やノウハウをもとに商品やサービスを提供するのかという「②技術軸」、どのような機能や顧客にとっての価値を提供するのかという「③機能軸」の3つの切り口によって事業ドメインを規定することが多くなりました(下表参照)。単独の軸だけではなく、複数の軸で定義するケースもあります。事業ドメインをきちんと定義することで、企業は資源を集中すべき分野を明確にできます。逆に対象としない事業領域も明確になることから、無謀な多角化への牽制にもなります。さらには、対外的に企業イメージを印象づけるツールと考えることもできます。言い換えれば、より強い自社ブランドを構築していくことにもつながるといえるでしょう。

事業ドメインは狭すぎず広すぎず。全社で共有

 事業ドメインは企業の存在意義と発展の方向性を決定づけるものですから、将来に向けて成長性のあるものを選んでいく必要があります。あまり広すぎると方向性が曖昧になりますが、狭すぎると企業が伸びる余地が少なくなります。例えば、多くの電鉄会社は、「電車による輸送サービス」という狭い事業ドメインではなく、「沿線住民へのトータルサービス」という「①顧客軸」のやや広い事業ドメインを選択することで、沿線を中心とした百貨店、遊園地、不動産開発への参入を進めて成長していったといえます。

 事業ドメインは従業員にも浸透させることが大切です。自社がなぜそのような事業ドメインを選択するのかということを十分に説明し、経営者と従業員が同じ方向性をもって行動することで、企業の経営資源を最大限に生かすことができるのです。

Case Study

うまい商売ができる自社の生存領域を定めろ

 ライセンス・ビジネスが多いため、できるだけ上流に近いところでビジネスをやる方針を徹底するというJ 社。3次元サラウンドのサウンドシステムをコア事業とする同社は、例えば半導体メーカーなど上流に位置する企業との協業を進める。そうすれば半導体メーカーが同社のサウンドシステムを組み込んだ半導体をどんどん売ってくれるからだ。また、大手のソフトウェア会社と組めば数千人の営業マンが製品を広めてくれる。外部の力をうまく活用する作戦だ。さらにコンテンツにサウンドシステムが組み込まれれば、ロイヤルティービジネスも可能になる。
(3Dオーディオシステム開発・23人)

時代を読み、新しいマーケットに陣取れ

 他社の先を行く設備投資で順調な成長を遂げてきたK社は、これまで、住宅設備やオートバイ、音響機器など時代に応じて主力分野を変えてきた。現在のメインである携帯電話の装飾プラスチックめっきでは、国内の全メーカーと取引し、シェアは60%以上にもなる。
(めっき技術開発・92人)

 L社はターゲットをそれまでの小中学生から高校・大学・OL に引き上げた。そして製品は一時的なヒットを狙わず、定番的に売れる物を指向した。新しい製品群にはキャラクターを用いずに、花や季節の柄などテーマのくくりを変えて、商品のライフサイクルが短くても半年から1年へと長くなるように計画する。市場、製品に続いて流通チャネルもアッパーマーケットへのシフトを行った。
(文房具製造/販売・136人)

Step Up

(1)環境の変化に応じて、自社の事業領域を柔軟に見直している

 企業を取り巻く環境は変化しますから、事業ドメインもそれに合ったものに変えていかなくてはなりません。もし仮に鉄道事業のみにこだわった事業ドメインを維持していれば、電鉄会社の多くは今ほど成長していなかったでしょう。ただし、あまりに頻繁な変更は、社内外に混乱を招きます。少なくとも5年先から10年先を見越した長期的な視点で事業ドメインを決定していくことが求められます。

(2)将来有望な事業分野および商品に対して重点的に投資している

 事業ドメインの見直しによる企業の具体的な行動として考えられるのが、製品やサービスの見直しです。長年の主力商品は経営者や従業員にとって愛着があり、なかなか切り捨てることができないものです。ただ、売上も収益力も低下し、ライフサイクルが終わろうとしている製品に過度の投資をすることは、企業の生き残りにとって得策ではありません。経営資源や資金に限りがある中小企業だからこそ、個別の事業分野や商品の将来性を分析した上で、将来有望な事業分野や商品などに対して、重点的、集中的な投資戦略を練る必要があるといえるでしょう。

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