酒店発祥の強みを活かし、新たなファンの獲得を目指す
企業名:有限会社佐々木商店 取材先ご担当者様:取締役:佐々木修平氏
島の人口はピーク時の約6割にまで減少し、高齢化が著しい。当店は酒販店としてのイメージが定着し、酒類を求める年配の固定客が多かったことも影響して、購買の頻度や単価は下落傾向が続いていたが…
企業概要
有限会社佐々木商店(代表取締役:佐々木修氏)は、島の玄関口である大島空港からほど近い幹線道路(大島循環線)沿いで、スーパーマーケット「Foods & Liquorささき」を経営している。当初は酒販店として出発したが、やがて時代の変化に対応すべく、生鮮品を含む食料品や雑貨等も取り扱うスーパーへと業態を変更し、現在に至る。
長年にわたって地域密着で小売業を営み、地元ではよく知られる存在となった当店であるが、約4年前に経営者として店を取り仕切ってきた修氏が体調を崩し、陣頭指揮を執ることができなくなってしまった。そこで、島外で美容師をしていた20代の長男・修平氏が島に戻り、店長として運営に携わることになった。以来、惣菜を強化し、店舗の改装も行う等、経営改善と事業承継に向けて前向きに取り組んでいる。
企業の悩み
急遽「Foods & Liquor ささき」の店長となった修平氏は、すぐに経営環境の厳しさに直面することになった。島の人口はピーク時の約6割にまで減少し、高齢化が著しい。当店は酒販店としてのイメージが定着し、酒類を求める年配の固定客が多かったことも影響して、購買の頻度や単価は下落傾向が続いていた。
そのような中、ある島外の企業が地元スーパーの1つを買収して新装オープンし、いちやく人気店に躍り出た。これをきっかけに、他のスーパーもリニューアルや得意分野のアピール強化に乗り出した。交通の便のよい1km圏内に当店を含む4つのスーパーがひしめいて顧客を奪い合う構造となり、一気に競争は激化した。
当店も、惣菜の強化や店舗の改装といった手は打っているものの、若い層の集客には必ずしも成功しておらず、売上の減少に歯止めをかけきれずにいた。修平氏は、体調の優れない修氏に現場で指導を仰ぐわけにもいかず、一人で悩みを抱え込むことも多かった。
そこで、修氏の時代から長年にわたり様々なサポートを受けてきた、大島町商工会に相談した結果、本プロジェクトのアシストコースでの継続的支援を念頭に、まずは経営診断チェックを受けることになった。
導き出された課題
島しょ部の事情に明るく、小売業の支援経験も豊富な中小企業診断士が選定され、さっそく当店で経営診断を行った。その結果、①マーケティング、②組織・人材、③財務管理のいずれの分野についても、解決すべき課題があることがわかった。
①マーケティングについては、ターゲットや訴求ポイントを明確化し、季節ごとの売場の動きやイベント等で訴求して、より若い顧客層を増やすことが必要とされた。②組織・人材については、販売に秀でたスタッフはいるものの個人差があるため、組織としての販売力強化が必要とされた。さらに③財務管理については、改装時の借入金を安定的に返済できるだけの利益を生み出すべく、客数、カテゴリ別の売上、客単価等の傾向をスピーディに把握し、タイムリーに手を打つことの重要性が指摘された。
提案した中小企業支援施策
引き続き、本プロジェクトのアシストコースを利用して、専門家から具体的なアドバイスを受けながら、上記の課題解決に向けて取り組むことになった。概ね月1回のペースで専門家が当店を訪問し、「軽減税率対策補助金」で導入したPOSレジで得たデータを分析しながら、振り返りと今後の打ち手の検討が行われた。
その中から、共働きの若い世帯をターゲットとし、その層にフィットする商品やサービスを形にしていった。惣菜コーナーを店頭付近に移すという大胆なレイアウト変更を実施し、弁当や惣菜の種類を大幅に増やした。コンビニがなく飲食業も少ないという島の事情もあって、昼どきには多数の社会人が昼食を購入していくようになった。
また、共働き世帯や観光客を狙って、営業時間を「9時〜19時」から「10時〜20時30分」に変更し、定休日を日曜から水曜に変更した。あわせて、LINE@で特売日やタイムセールの情報発信も始め、販売促進に努めた。秋にはワインコーナーを充実させ、POPでの訴求やローストビーフ等のワインに合う惣菜の提案といった工夫により、酒店発祥の強みを活かして来店数・客単価の向上を図った。
さらに、POP作りの勉強会を開催する等、販売力の底上げを図る取り組みも実施した。
その後の状況
共働き世帯を狙ってディナー惣菜も一層の充実を図っており、仕事帰りに惣菜を買い求める方が多くなった。レイアウト変更前と比較して惣菜の売上は3倍に伸び、当店の柱の1つに育っている。
今回の取材は、ちょうど年末年始の企画検討の時期であった。今後は、クリスマスにはオードブルセット等の予約販売、年末はおせちバイキング、年明けはワインの福袋といった時期ごとの提案を能動的に行い、同業他店との差別化を図って、共働きカップルや子育て層のファンをより多く獲得していく方針である。
当社では3年後をめどに修平氏への正式な事業承継を予定しており、修平氏はそこに向けて経営者として実績を積み重ね、社内外の求心力をより高めたいと考えている。
企業様の声
事情により前任者からノウハウを聞くことができないため、悩みは多かったです。今の時代、一般的なセオリーはネットで見られますが、それが大島に合うとは限りません。専門家の内藤先生には、こちらの話に耳を傾けていただき、大島の事情に合わせて「じゃあ、こうしてみませんか」と提案いただけました。タイムリーなデータ分析、各種の販売促進策、キャッシュレス・ポイント還元事業への対応等、自分だけでは難しいことにも着手できました。
今後は、「酒店発祥でお酒に強い」という特長を活かし、ワインと相性のよい食材や惣菜を一緒に提案する等して、他店にはない魅力を発信したいと考えています。ただ顧客を待つだけでなく、スピーディな対応でターゲット層に働きかけていきたいです。
経営指導員の声
佐々木商店様は、私が9年前に大島町商工会に赴任した頃からずっとご支援してきました。前年度の「多摩島しょ経営支援拠点事業」に続き、今年度は本プロジェクトの枠組みを活用しました。修平さんは業界経験がないまま、厳しい環境下で店長になられて、ご苦労も多いこととは思いますが、スピード感のある展開でブランディングを強化し、事業基盤を強固にされていくことを期待します。これからも引き続き、ご支援させていただきます。
(大島町商工会:千葉 努氏)
企業情報
企業名 | 有限会社佐々木商店 |
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代表者 | 佐々木修 |
創業年 | 1993 |
業種 | 小売業(食品・酒類・雑貨販売) |
所在地 | 東京都大島町元町地の岡65 |
事業PR | |
URL |
中小企業診断士 松林栄一