ニッチ市場で着実に成長を遂げる ~高い技術力を活かして海外展開も視野に~
企業名:株式会社資料保存器材 取材先ご担当者様:代表取締役 木部 徹 様
他では取り扱っていない業務内容で同業となる企業も少なかったことから、過去には業界独占状態を築いており、現在でも競合となる企業は少ない。しかし、当社においても課題が……
企業概要
株式会社資料保存器材(代表取締役:木部 徹 氏)の主な業務は、新聞や江戸期の和装刊本、青焼き図面、トレーシングペーパー等、様々な紙媒体記録資料のコンサベーション(利用するために修復処置をすること)とアーカイバル容器(長期間保存し活用していく資料をできるかぎり良い状態で維持するための「いれもの」)の製造販売である。1999年5月設立以降、資料保存関連業界から高い製品評価を受けており、取引先は、図書館、博物館、美術館、公文書館、歴史資料館等の公的機関が多い。他では取り扱っていない業務内容で同業となる企業も少なかったことから、過去には業界独占状態を築いており、現在でも競合となる企業は少ない。また、高い技能を持った人材を確保できており、大手企業が生産協力会社として名を連ねていることが当社の強みであり、着実に企業として成長を遂げており、今後は海外展開も視野に入れている。
企業の悩み
着実に成長を遂げてきたがゆえに、後継者育成に関して考える時間がなかったが、企業規模も大きくなってきたこともあり、そろそろきちんと検討しなければならないと感じていた。事業承継の候補者が複数存在しており、その中の誰に承継するのかも決めかねている状況であった。
ちょうど、以前から続けてきた図書館総合展への出展について助成金が使えないかと、経営相談員に相談したところ、当事業の経営診断を紹介され、利用するに至った。
導き出された課題
中小企業診断士による企業診断の結果、①滞りない事業承継と新たな人材の確保、②新たな市場へ進出する足掛かりの構築、③情報整理による業務効率化、という3点が課題として挙げられた。
①滞りない事業承継と新たな人材の確保については、複数の事業承継候補者がいる状態では、これまで築き上げてきた組織が揺らいでしまいかねないため、慎重に取り組み、社長の意向を踏まえて7~10年という期間を掛け、少しずつ本人及び社内外の理解を得ながら浸透させていく必要がある。人材については、幅広い年齢層で構成されることが望ましく、中でも若年層の人材確保や定着は重要な課題となってくる。
②新たな市場へ進出する足掛かりの構築については、これまでは図書館や公文書館等の公的機関との取引がほとんどであったが、新製品では思いもよらない業界から関心を示される等、想定していなかった市場への供給も見込めるため、新市場の開拓や積極的な販売促進が必要になる。
③情報整理による業務効率化については、過去の製作データや裁断のノウハウ等を系統立てて効率よく運営していくことが必要で、運用方法についての管理基準を作成することが欠かせない。
提案された解決策
中小企業診断士からは、以下の支援策の紹介を受けた。
継続的に行ってきた展示会への出展について、経営指導員に詳細な利用要件を確認してもらったところ、展示会等出展支援助成金が受けられることがわかり、早速活用することとした。
エキスパートバンクについては、まだ利用はしていないが、今後ぜひとも活用したい施策と位置付けられている。こちらは改めて商工会議所の経営指導員と相談しながら活用していくことになった。
提案した中小企業支援施策
展示会等出展支援助成事業 東京都中小企業振興公社
新・経営力向上TOKYOプロジェクトの企業診断を受け、出展の有効性が認められることなどを条件に、展示会への出展料・ブース装飾費用や、カタログ製作費用等について、助成金を受けることができる。
- 専門家派遣(エキスパートバンク)
小規模事業者の皆さんがお持ちの経営課題に対応する登録エキスパート(専門家)を直接事業所に派遣し、具体的・実践的なアドバイスによって問題の解決に役立てていただくものです。
その後の状況
もともと企業理念や今後の事業の方向性等は普段から従業員と共有するようにしていたが、中小企業診断士による診断の結果を従業員全員に公開することで、あらためて意識を統一することができ、従業員にも経営理念が浸透していたことが確認できたので、非常に良かったと感じている。また、診断の結果、重要度が高いと認識させられたのが後継者育成であり、現在は意識的に取り組み始めている。
展示会出展の助成金の利用は非常に助かったと感じており、出展したことで新規の引き合いを得る等大きな成果が上がっている。
企業様の声
これまで外部からの評価や診断を受けたことがなかったため、良い機会になると考え、当該事業を利用することにした。おかげさまで助成金の審査も通り、展示会も無事に終了することができた。課題がはっきりと指摘されたことで、今後、企業の存続を考えたときに大変有効であったと感じている。
海外企業がここ数年で徐々に進出してきたことにより、価格競争に巻き込まれつつあるが、当社製品は高品質であるため、顧客に支持されている。今後の海外展開に向けて、マーケティングや知財面での相談をするために商工会議所の海外展開支援窓口の利用が有効であると聞き、ぜひ相談したいと思う。
企業情報
企業名 | 株式会社資料保存器材 |
---|---|
代表者 | 木部 徹 |
創業年 | 1999年5月 |
業種 | 紙器製造業 |
所在地 | 〒113-0021 東京都文京区本駒込2-27-16富士前ビル |
事業PR | |
URL | http://www.hozon.co.jp/ |
平成26年12月4日
中小企業診断士 山田 晃裕