業界経験豊富な専門家が意思決定を後押し -生産性が向上し社員にやる気も-
企業名: 取材先ご担当者様:代表取締役社長
店長会議なども開催しているが、社長の存在感が大きく、どうしても社長の意向が強くなる。社長は自身の考えについて、「本当にそれで良いのか?」という不安があり、客観的な視点から自身の方向性について確認をしたいと常に思っていたが……
企業概要
当社は、大手ショッピングセンター(SC)内で、ラーメン、スイーツ店などを多店舗展開している企業である。社長は長年、大手有名企業で主にアパレル分野を専門にSC内への出店をおこなう責任者を務めていた。その頃に行われていた大手企業主催の勉強会で知り合った仲間たちから、飲食店の出店企画の相談を個人的に受けることとなった。実はこれまでも、そのような需要は社長の周りに多くあったという。こうした経験が起業するきっかけにもなった。
そうした背景もあって、大手SCのデベロッパーなどとの人脈は非常に豊富という点が、当社の強みになっている。そのため、通常では難しいSC内のテナントとして新規出店し、軌道に乗せることが社長の業務になっている。
社長には「やる気はあるが機会に恵まれない若者」に、「機会を与えて育成していきたい」という強い思いがある。飲食店への就職希望者の中には、勉強が苦手で学歴社会のレールに乗れなかった若者がいる。そういった若者でも、やる気があるのであれば、当社で店舗経営のノウハウを伝授し、最終的には「のれん分け」という形で独立させてやりたいと考えている。飲食店といっても調理の腕だけでは経営は成り立たない。店舗経営と調理人の職人技は別問題であり、社長は経営感覚を持った人材を育成することが、自身の使命であると強く感じている。
企業の悩み
本来、各店舗の運営を経営面から指導していくのが社長の役割である。各店舗の店長に対する教育を行い、収益事業へと成長させていくことが当社の業務である。そのため、社長自身が、全社戦略、事業計画をしっかりと立てており事業運営をしている。しかし、社長は自身の考えについて、「本当にそれで良いのか?」という不安があり、客観的な視点から自身の方向性について確認をしたいと常に思っていた。店長会議なども開催しているが、社長の存在感が大きく、どうしても社長の意向が強くなる。企業として成長していくには、その方向性を時には修正することも必要である。そのため、社長に対して意見ができる存在を求めて今回の相談に至った。
導き出された課題
当社はSCへの出店のメリットを活かして、短期間のうちに多店舗展開を行ってきた。そのため店舗開設に伴う費用負担が大きく、借入依存体質になっており直近では債務超過に陥っていた。この原因については社長自身も承知していたことではあった。社長自身が収益性の高い業態はなにか探っていた時期でもあり、新規出店した店舗から投資資金の回収が出来る前に次々と出店を拡大していったためである。
営業利益率が目標値に到達していない店舗も存在しており、中小企業診断士からはその点について指摘があり、このあたりで一度新規出店のペースを下げ、投下資金の回収を図るようにアドバイスがなされた。
また、営業利益率が目標値に届かない要因として、生産性が低く人件費比率が高いことが指摘された。現場任せの店舗管理、業務では店長の職人気質が前面にでてしまうこともあり、なかなか効率化が図れていなかった。
提案した中小企業支援施策
上記の課題を解決するために利用できる中小企業支援施策として、以下の提案がおこなわれた。
- 専門家派遣(エキスパートバンク)
小規模事業者の皆さんがお持ちの経営課題に対応する登録エキスパート(専門家)を直接事業所に派遣し、具体的・実践的なアドバイスによって問題の解決に役立てていただくものです。
その後の状況
中小企業診断士のアドバイスにより、SC内でも利益率の高いフードコートの形態に集中する戦略を採った。また、経営方針と合わない従業員の入れ替えを図った。この結果、他の従業員の意欲を向上させることにつながり、生産性の向上を図ることができた。社長自身わかっていながらも意思決定が難しかったところではあるが、中小企業診断士の心強い後押しにより、意思決定することができた。
企業様の声
自分自身の経営の考えは明確に持っているが、時にそれが「あっているのか」、「間違ってはいないだろうか」と思うときがある。社内だけで物事をみていると、独裁的になりがちだったので、業界の標準を知っている第三者の専門家からアドバイスを得られたのは非常に心強かった。
企業情報
企業名 | |
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代表者 | |
創業年 | 昭和48年5月 |
業種 | 飲食業 |
所在地 | 東京都豊島区 営業所 地方都市を中心に6店舗を展開している |
事業PR | |
URL |
取材日:平成22年2月17日
記事:山口 亨