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5 財務管理(金融機関との関係)

複数の金融機関と取引するなど、特定の金融機関に依存しないようにしている

複数の金融機関との取引で、リスク軽減や低い金利での融資を

 中小企業にとって、金融機関から資金調達を行って資金繰りを安定させることはきわめて重要です。一般に、取引金融機関が1社しかない場合には、企業が業績不振の際にその金融機関から支援を受けられなければ、他の金融機関からの新たな資金調達はきわめて困難となります。そのリスクを軽減するために、2社以上の金融機関との取引が有効であるといわれています。また、企業の業績が好調の場合には取引金融機関から正常貸付先として格付されるため、金融機関としては融資を受けてもらおうと金利面での競争が行われます。その結果、各金融機関はお互いに他行よりも低い金利での融資提案を提出してくるため、企業が受ける融資の金利は下がり、企業にとって収益性の向上につながります。

 ただし、取引金融機関が1社だけでも長期的に密度の濃い関係を築いており、企業としての満足度も高ければ、あえて増やす必要はない場合もあります。取引のない金融機関から取引要請があった場合には、主要な金融機関の担当者にその金融機関に関する情報を提供するだけでも、十分に競争原理は働くことになるからです。従って、取引金融機関を増やす場合には、主要な金融機関を確立した後に、特定の目的を持って資金調達を行う金融機関を増やすことを検討することがよいでしょう。

企業の状況や利用目的から取引金融機関を選ぶ

 取引金融機関の選び方は、さまざまな視点から検討することが必要です。企業設立後の年数が浅く、企業経営が安定していない場合には、信用保証協会の保証付き融資などが中心となるため、信用保証協会とのパイプの太い金融機関や信用金庫などとの取引が適当になります。一方、業歴が長く安定期に入った企業では、取引目的を検討してその目的に応じた金融機関を選ぶべきでしょう。

 金融機関の利用目的から考えれば、全国規模の情報が必要な企業にとって地域密着型の金融機関では必要な情報は入手できません。特に、海外との取引を視野に入れている場合には、地域密着型の金融機関では情報やノウハウの入手は困難です。また、急成長している企業では、売上の拡大とともに設備や従業員の確保のための投資金額も大きくなり資金需要も高まりますが、1つの金融機関で1社に融資できる額には限りがあります。従って、融資を受ける金融機関の数を増やして資金調達を図らなければならない場合もあるでしょう。このように、企業の置かれた状況や企業が描くビジョンを明確にしたうえで、その目的を達成するためにはどの金融機関との取引が有効なのかを考えて取引金融機関を選ぶことが重要です。

Case Study

情報提供をしっかりやる

 L社では、経営者の交代にあたり、創業者一族は1人も在社しておらず、大口取引先や金融機関からの推薦者もなかった。まず承継準備の第1段として、主取引の金融機関と借入れにおける代表者の個人保証解除の交渉を始めた。相当日数を要したが承諾され、他の金融機関も応諾し、一切の個人保証を解除した。
(機械用カーボン等製造・175人)

Step Up

(1)主要取引銀行に対して、定期的に業績の報告と事業計画の説明を行っている

 主要取引銀行から円滑に資金調達をするためには、まず経営者自身の経営能力や財務管理能力を高めることが必要です。経営者自らが決算報告書や資金繰り表をチェックすることよって、主要取引銀行の担当者との交渉も円滑に進めることが可能となり、担当者の信頼を得ることにもつながるからです。同時に、事業計画書や決算報告書、月次試算表、資金繰り表などを開示して、定期的に業績と事業計画の説明を行うことが重要です。仮に赤字決算の場合にも原因分析をして、「このような事業計画を実行することによって、いつまでにいくらの黒字に転換する計画です」という説明が必要です。

(2)主要取引銀行から必要な時に必要な額を調達できる

 中小企業にとって安定的な資金繰りを行うためには、日頃から主要取引銀行から必要な時に必要な額を調達できる体制を準備しておくことが肝心です。資金調達の際にまず重要なことは、必要資金は運転資金なのか、設備資金なのか、その具体的内容など資金使途を明確にすることです。次に、借入金の償還能力を示せることです。つまり、資金繰り表を提示して、何のためにいつどれだけの金額が必要になり、いつどこからの原資によって返済できるのかを明確に説明できなければなりません。そのためにも必要とされる資料を適切な頻度で迅速に提出するとともに、得意先の開拓状況など定性情報の積極的開示も必要です。

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