楽しいだけでは終わらせない、礼儀やマナーも大切にするダンススクール

企業概要

株式会社RAPID PROGRESS（代表取締役：鈴木真理子氏）は、青梅市河辺町にある2008年創業のダンススクールである。当社が運営する「emanation Dance Studio（エマネーションダンススタジオ）」は、年中（5歳児）から中学生までを中心に、ヒップホップ、ブレイクダンス、ロックダンスなどストリート系ダンスのレッスンカリキュラムを提供している。
代表の鈴木氏は、「子供たちにダンスを知ってもらいたい！楽しんでもらいたい！」との想いから、2002年に当社の前身となるキッズダンスサークルを立ち上げた。子供たちにはダンスそのものを楽しむことに加え、チームワークや真剣に取組む姿勢など、心の学びも経験してほしいとの想いを込めて、「ダンスを通じて、心も体も育めるダンススタジオ」という経営理念を掲げる。
レッスンは、未就学児や小学生の初心者クラスから、コンテストに挑戦する経験者クラスまであり、それぞれのレベルに合わせたクラスを受講できる。また、地域との交流にも積極的で、青梅市周辺の地域のお祭りやイベントには多くの生徒たちが出演している。

企業の悩み

前身のダンスサークル時代からの生徒を引継いだため、スクール開業直後から生徒数は安定していた。その後も、青梅市を含む西多摩地区におけるダンススクールの先駆けであることに加え、「ダンスの魅力だけでなく、礼儀やマナーも身につく」との口コミが広がり、生徒数は順調に増加した。
しかし、開業から数年が経ち、少子化の進行に加え、青梅市周辺にも競合となる団体が現れ始めると、「エマネーションダンススタジオのレッスンはレベルが高い」という口コミが出始め、次第に未経験者の入会が低調となった。これを契機に、これまでダンス指導一筋だった鈴木氏は、経営者に必要な知識や第三者からの視点を求め、ふと目に留まった「まちゼミ」（注）の主催者である青梅商工会議所へ相談した。
その後、商工会議所の会員となり、様々な支援制度を利用する中で、経営診断と最大9回の専門家派遣（アシストコース）を利用できる本プロジェクトの紹介を受けた。
（注）まちゼミ：お店の人が講師役となり、プロならではの専門的な知識や情報、コツを無料で受講者（顧客）に伝授するプログラム。お店と地域のコミュニケーション活性を図ることができる。

導き出された課題

専門家の経営診断により、競合教室が増えた中、「当社のブランドイメージが確立されておらず、当社教室の独自の価値が顧客層へ十分に伝わっていない」という問題点が明らかになった。「どういうスクールでありたいか」、「どういうスクールに思われたいか」を明確にしたうえで、顧客層にわかりやすく明快に発信することが課題とされた。カラーについても、従来からダンスのかっこよさと元気を表す青とオレンジをブランドカラーとはしていたが、場面に応じて色調を変更するなど、統一感に欠けてしまうことがあった。デザインを含めてブランディングを抜本的に見直すため、引き続きアシストコースを活用し、ブランドマーケティングの専門家からアドバイスを受けることとした。

提案された解決策

実行支援では、ブランドイメージ確立のため、①スクールコンセプトの整理、②ブランドカラーの統一とロゴの修正、③スタジオ看板のデザイン変更を実施した。
①スクールコンセプトは、鈴木氏が従来から大切にしている、ダンスを楽しく元気よく踊るとともに礼儀やマナーも学ぶという想いを、「ダンスを通じて心も身体も育むダンススタジオ」という経営理念にブラッシュアップした。他のキャッチコピーも、きめ細かく検討し、より端的で伝わりやすいものに作り直した。
②ブランドカラーは、これまで様々な種類の青とオレンジを使ってきたが、専門家とともに、スクールコンセプトの色として相応しい青とオレンジを決定した。その色を基に、印象に残りやすい配色のロゴへ変更し、フォントや縁取りのしかた等も専門家からいくつもの提案を受け、じっくりと比較した上で決定した。
③スタジオ看板のデザイン変更は、支援期間中にスタジオの看板が台風により壊れるというハプニングがあったため、予定より前倒しで行うこととなった。図らずも、即座にブランドカラーをスタジオの看板に反映することができ、ブランディングの基礎となる部分を作ることができた。

提案した中小企業支援施策

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その後の状況

初めに感じた変化としては、ブランドカラーを統一したことにより、チラシなどの広告物等を作成する際に、「どのような色やデザインにしようか」という迷いが無くなったことが挙げられる。さらに、経営理念やロゴへの客観的な意見を反映できたことで、自信を持って発信できるものとなった。これらの効果は測りにくいものの、体験者数は増加傾向で、潜在顧客を含む生徒や保護者にしっかりと理念が届いているように感じられる。
コロナ禍においては、ダンススタジオでのレッスンに制限がかかり、多くのダンススクールが休講を余儀なくされる中、動画レッスンを制作・配信することで、生徒たちへのダンスレッスン提供に懸命に取り組んだ。
さらに、中堅男性向けのオンデマンドレッスン「テレダンス」という新たなコンテンツの提供を開始した。2021年度も継続して本プロジェクトを利用しており、ダンスレッスンの新たな事業モデルの構築を目指している。

企業様の声

個人事業主としてダンススタジオを開業し、2年後に法人化をしましたが、経営者としての経験が少なかったため苦労が絶えず、暗中模索の状態でした。偶然、商工会議所の「まちゼミ」のチラシを見たのがきっかけで会員となり、支援していただくことになりました。キッズジュニア向けのダンススタジオのブランド化をテーマに、カラーやロゴ、キャッチコピーに至るまで細かくご指導いただくことで、自身としても経営の軸を作れたと思います。今回の支援を通じて、改めて客観的な専門家の目線が重要だと感じました。今後もより成長していくために課題解決に取り組んでいきます。
（代表取締役：鈴木真理子氏）

支援者の声

鈴木氏は、当所主催の経営セミナーや女性経営者向けセミナーへ参加され、日々の情報収集を経営に活かしてこられました。今回は、市内に同業者が増えてきた中での差別化についてご相談がありました。「ダンスだけではなく、礼儀やマナー、思いやりなども身に付けてほしい」という想いがあることを聞き、それをわかりやすい形で外部に発信できればと感じました。専門家から提案のあった「ブランディング」という初めての取り組みについても、イメージカラーやフォントの形、キャッチコピーの細かなところまで、納得がいくまで意見交換を行ない、理念が反映された形でブランドロゴを刷新し、最終的にはホームページのリニューアルまで出来たと思います。
（青梅商工会議所：小笠原広志氏）

企業情報

中小企業診断士　玉木涼太郎