子どもたちに本当に見せたいアニメ作品を作るために
企業名:株式会社エクラアニマル 取材先ご担当者様:代表取締役:豊永ひとみ氏
持ち前の行動力で、その時々に才能ある人材を結び付けてアニメづくりを行ってきた当社社長ではあるが、事業運営の安定性と、次のステップである企画会社へ挑戦するためのマーケティング知識が不足していると認識していた…
企業概要
株式会社エクラアニマル(代表取締役:豊永ひとみ氏)は、西東京市の田無駅から徒歩15分、豊かな自然環境のなかにある。1982年、シンエイ動画(本社:西東京市)で「怪物くん」を手がけていた作画監督の本多氏を中心としたメンバーが独立して創業。2007年、前身会社を引き継ぐ形で株式会社エクラアニマルを設立し、豊永氏が社長に就任した。
アニメーションは、企画会社である元請会社、元請会社から仕事を受けて下請として原画・動画を制作する会社、色仕上げを行う会社、撮影をして音声を入れる会社と、多くの会社の分業体制で作られる。当社はその中で、原画・動画を作成する制作会社となる。
「新幹線変形ロボ シンカリオン」等のテレビアニメ制作を中心としつつ、自主制作も手がける当社は、2019年、良心的な漫画等の芸術的活動に贈られる「やなせたかし文化賞」を受賞している。
企業の悩み
豊永社長の悩みは3つあった。1つめは、昨年10人のスタッフのうち4人の退職が相次いだことである。アニメ業界は近年の海外市場の急拡大で業績拡大しているが、その影響で働くスタッフの業務量が飛躍的に増加している。特に制作進行と呼ばれるアニメ制作のスケジュールを管理する人材への負担が大きい。
2つめは、業界特有の慣習から、ほとんどすべての契約が口約束で進行していくことである。そのために当社も何度かトラブルに巻き込まれ、大きなプロジェクトがとん挫したこともある。
そして3つめが、「子どもたちに本当に見せたいアニメを手作りで、心をこめて作りたい」という想いを実現するため企画会社となりたいのに、その準備ができていないことである。
持ち前の行動力で、その時々に才能ある人材を結び付けてアニメづくりを行ってきた豊永氏ではあるが、事業運営の安定性と、次のステップである企画会社へ挑戦するためのマーケティング知識が不足していると認識していた。
「西東京商工まつり」のプロデュース等で以前から関わりがあった西東京商工会から、本プロジェクトを紹介され、利用することにした。
導き出された課題
経営診断の結果、中小企業診断士が指摘した主な課題は、①人材(特に制作進行担当者)の採用と育成、②経営全般における管理規定の整備、③企画会社へ挑戦するための中期経営計画作成の3つである。
①については、負荷の大きい制作進行者の採用と育成が何より急務である。②については、プロジェクトごとの収支管理が丼勘定になっており、案件ごとに儲かっているのかどうかが曖昧な点である。口約束のみでの契約締結も、いったんトラブルに巻き込まれた時の影響が大きく、改善が必要である。③については、経営を安定させ、本当に作りたい良質な子どものためのアニメを作り続けるためにも、企画会社になる必要がある。そのためのブランディングと販路拡大を図ることである。
提案した中小企業支援施策
当社の希望により、本プロジェクトのアシストコースを利用して、専門家から具体的なアドバイスを受けながら、上記の課題解決に向けて取り組んでいくことになった。
第一に、人材の採用と育成計画の実行である。社長のネットワークを通じての採用活動の結果、2名の中国人留学生の採用が決まった。フルタイムではないが、彼らを教育するベテラン編集者の支援体制にも目処が立った。
第二に、各種管理規定の整備では、プロジェクトごとの収支を「見える化」することから始めた。元請から提示される金額に対して、当社として、人件費、外注費、その他経費等を見積もることのできるフォーマットを作成し、いくらの利益が出るのかを把握できるようにした。また、口約束で行われる契約については、議事録を作成して、お互いが確認し合うことでリスクを軽減することとした。
第三に、社長が持っている人脈や行動力を後押しするような仕組みとして、ホームページを改訂し、様々な受賞歴をSNSで積極的に発信することで、企画会社に必要なネームバリューをより強く全国に打ち出す基盤整備を行った。
その後の状況
本格的な中期経営計画の実践はこれからだが、計画を作り上げていく中で、既に多くの変化が起こっている。人材の採用も決まり、今後は育成計画に基づいて、一人前の制作進行者に育てることが目標だ。また、企画会社への挑戦では、既に大手アニメ配信会社やテレビ局への企画持込みを開始している。中国大手食品企業にアニメCMを納品した実績をもとに、新たな市場として中国への進出も始まっている。
企業様の声
今回、専門家の方と一緒に計画を作成するなかで、いろいろな気づきがありました。特に、数字に基づいて考える、今あるコンテンツをビジネスの視点から見直すということは、新たな気づきでした。本来なら経営者としては当たり前のことなのですが、今まで、身近に事業を具体的な数字で語り合えて、経営を俯瞰的に見てくれる方がいなかったために、なかなか実行できませんでした。
西東京商工会さんとは長い付き合いですが、今回の制度を紹介していただき、本当に感謝しています。まだまだ、実行フェーズの緒についたばかりですが、支援していただける皆さんと一緒に「子どもたちに本当に見せたいアニメ」を作れるよう成長していきたいと思います。
経営指導員の声
エクラアニマル様は、地元では知らない方がいないほど有名な企業です。豊永社長も人脈が広くて、アイデアが色々出てくる、とてもパワーのある方です。ただし、経営を数字で見ること、個々のプロジェクトの収益を計算して判断することができていませんでした。こちらからの提案を真摯に受け止めていただき、どんどん実行されています。今後の社長の活躍を一市民としても応援していきたいですし、専門家として継続的にご支援できれば嬉しく思います。
(経営診断/アシストコース担当:中小企業診断士 荒井幸之助氏)
企業情報
企業名 | 株式会社エクラアニマル |
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代表者 | 豊永ひとみ |
創業年 | 2007 |
業種 | 情報通信業(アニメーション制作) |
所在地 | 東京都西東京市北原町3-6-10 |
事業PR | |
URL | http://anime.or.jp/ |
中小企業診断士 竹本正人