経営理念を大切にして「資源循環型のものづくり」に取り組む
企業名:日本エムテクス株式会社 取材先ご担当者様:代表取締役:三浦征也氏
製品開発や品質管理等のテクニカルな部分の教育や、経営的視点で物事を判断できる社員の育成は不十分と感じていた。そこで、社員教育の部分も含め、第三者からの視点で会社を見てもらうことに…
企業概要
日本エムテクス株式会社(代表取締役:三浦征也氏)は建築資材、インテリア、雑貨等の製造・販売を行っている。もともとは三浦氏の父が興した工務店であったが、三浦氏が後を継いだ後、現在の事業内容へと徐々に変えていった。
当社の特徴は、食品工場から排出される卵殻の加工品を原材料として製品を開発している点である。ペイント材、タイル等の建築資材から、コースターやバスマット等の家庭用インテリア雑貨まで、手掛ける製品は多岐にわたる。本来は廃棄されるものを再利用する資源循環型社会の実現への貢献を理念として、長期的な環境視点での「ものづくり」に取り組んでいる会社である。
企業の悩み
三浦氏の大きな悩みは、人材教育であった。当社では経営理念や事業哲学、行動指針等をまとめた冊子を独自に作成し、毎週月曜日に社員全員で読み合わせを行っている。社員一人ひとりが理念や指針に沿った行動ができているかを振り返るために、感想や意見の共有も実施している。この取り組みは10年以上継続して行っている。
この取り組みを継続した結果、経営理念や行動方針を社員に浸透させることができ、皆が同じベクトルで仕事に取り組めるようになった。「当初は自分の意見を抑えがちであった社員も、次第に本音を話すようになり、風通しの良い組織になっていきました」と三浦氏は語る。
取り組みの効果は、離職率の低下や優秀な人材の確保等の採用面にも表れている。当社では6年間離職者がおらず、新規採用者も安定的に確保している。
経営理念の浸透という観点での教育には手応えを感じていた三浦氏であるが、反面、製品開発や品質管理等のテクニカルな部分の教育や、経営的視点で物事を判断できる社員の育成は不十分と感じていた。そして、そのような教育を自社の経営資源だけでおこなうには限界があると考えていた。
三浦氏は、そういった社員教育の部分も含め、第三者からの視点で会社を見てもらう必要があると考えた。そこで本プロジェクトの支援を活用して、課題の整理と今後の行動方針の策定に取り組むことにした。
導き出された課題
専門家の診断の結果、指摘された課題は、主に①人事評価制度の確立等による組織体制の整備、②マネジメントとオペレーションを担える人材の育成・確保の2点であった。
人員も増加し事業規模が拡大しつつある中で、今後も経営理念の定着を図り、成長を続けていくには、可視化された人事評価体制を作り、社員全員が同じ方向に向かって力を発揮できる環境づくりが必要であった。
また、当社の企画開発は三浦氏がほぼ一人で担ってきたが、今後の成長を考えると、その体制では限界があった。マネジメントの面も同様に、三浦氏が一人で担う部分が大きく、計数管理や一段高い視点で判断のできる人材の育成も必要であった。
以上より、社員の評価体制等を構築して組織体制を強化するとともに、適切な社員教育をおこない、マネジメントとオペレーションの両面で将来の事業推進を担える人材を育成していくという方向性が導き出された。
提案した中小企業支援施策
引き続き、本プロジェクトの成長アシストコースを利用して、専門家から具体的なアドバイスを受けながら、上記の課題解決に向けて取り組んでいくことになった。
まずは社員を評価する体制を作ることである。専門家とともに、人事評価体制の構築に取り掛かった。最終的に今回の支援内では評価体制の完成にまでは至らなかったが、現在も三浦氏が中心となって評価体制作りに取り組んでいる。ここでも、当社の経営理念や哲学を評価体制にも盛り込むことを意識しておこなっている。三浦氏は、一般的な社員評価のものさしだけではなく、「自社の理念に沿った行動ができているか」という視点でも社員を評価すべきだと考えているからだ。
また、世田谷区の制度を活用して、外部のスキルアップ研修に社員を派遣した。中小企業では十分に教えることができない仕事の基礎的なスキルの習得や、より高い視点で仕事を捉えられるようになることを期待して、この取り組みを継続している。
さらに、企画開発体制の強化に関しては、開発担当者の新規採用検討や、社内での開発者育成体制の整備に取り組んだ。
その後の状況
成長アシストコースによる支援の終了後も、少しずつではあるが組織的な経営体制が整えられつつある。今後の開発力強化のために、新卒のプロダクトデザイナーを1名採用し、三浦氏と一緒に雑貨部門の企画開発をおこなうこととした。「開発担当者の採用は迷っていましたが、開発体制の問題を指摘されたことで決心ができました」と三浦氏は語る。また、他の社員に関しても、開発を一緒におこなう等により三浦氏のノウハウを伝え、さらなる製品開発力の強化に取り組んでいる。組織体制の充実により、今後のさらなる成長が期待される。
企業様の声
今回の支援を得て感じたことは、第三者の目で会社を見てもらうことで、多くの「気づき」が得られるということです。自分でも薄々感じていたが確証を持てなかったことも、利害関係のない第三者に改めて指摘をいただくことで確証を得ることができ、課題が明確になりました。
私は事業を通じて、資源循環型社会の実現や他の関係事業者の発展をサポートする等、環境や社会に貢献していきたいと思っています。今、事業の中でそれが実現できつつあります。今後も継続して理念を追い続けられるよう、またより多くのお客様に価値を提供できるよう、ご支援をいただきながら事業をおこなっていきたいと思います。
経営指導員の声
東京商工会議所としては以前より、資金調達や経営革新計画の申請書作成、補助金や助成金等のご相談に応じてきました。事業を進める中で、人材強化に課題を感じられていた三浦社長。今回は、専門家によるアドバイスを受けたいということで成長アシストコースに取り組みました。「資源循環型社会づくりに貢献したい」という経営理念を対外的により強くアピールしていくことで、思いに共感した人材の採用・定着を進めていただきたいと思います。今後のさらなる活躍を祈念いたします。
(東京商工会議所:福島明氏)
企業情報
企業名 | 日本エムテクス株式会社 |
---|---|
代表者 | 三浦征也 |
創業年 | 1997 |
業種 | 製造業(機能性建築資材、インテリア、雑貨等) |
所在地 | 東京都世田谷区駒沢2-16-18 ロックダムコート3階 |
事業PR | |
URL | https://nmtecs.jp/ |
中小企業診断士 日下正浩