成果に甘んじることなく、改善とチャレンジを継続
企業名:日本ヒーター機器株式会社 取材先ご担当者様:代表取締役:伊藤英孝氏
就任以来の経営改革も一段落しており、今後はより抜本的な改革を検討しなければ、当社の更なる躍進は困難であると思われた。改革の成功の一方で、伊藤氏は社内での対応の限界を感じ…
企業概要
日本ヒーター機器株式会社(代表取締役:伊藤英孝氏)は、東京都大田区に本社を構える、飲料・食品用の加温機器メーカーである。主な顧客は大手コンビニエンスストアチェーンであり、加温機器専門メーカーとしての高い技術開発力、ニーズへの対応力とスピード感のある開発力が強みである。会社一丸となって「顧客の期待を超える製品・サービス」を提供してきた実績から、顧客からの信頼は厚く、業績は好調である。
企業の悩み
伊藤氏が社長に就任したのは3年前のことである。伊藤氏は、経営者としてどのように事業を進めていくべきかという考えを、就任前にすでに持っていた。社長就任後は、経営理念に沿って進めていた経営改革が成果をあげ、売上は増加傾向であった。
しかし、社内関係者だけでの取り組みでは、目先の業務改善ばかりが目に付いてしまい、長期的な観点での改革には広がりにくい。就任以来の経営改革も一段落しており、今後はより抜本的な改革を検討しなければ、当社の更なる躍進は困難であると思われた。改革の成功の一方で、伊藤氏は社内での対応の限界と、第三者からの客観的な視点の必要性を感じてもいた。
当社の売上は、取引先である大手企業の受注動向に左右されることから、年ごとの変動が大きい。長期的な経営計画の策定は必要不可欠であったが、いまだ手付かずでもあった。今後は売上の変動を緩和するために、強みを生かした新規事業への取り組みも進めたいと考えていた。
また、日々の業務に追われる伊藤氏にとっては、自身が改革に取り組むための時間の捻出も必要であった。将来的に取り組みたい事業、打ちたい施策…。伊藤氏の頭の中には多くの事業イメージがありつつも、体系的な取りまとめには踏み出せていなかった。
このような経営環境の中、伊藤氏は既存事業の拡大と新規事業への取り組みのため、更なる一手を模索すべく、本プロジェクトを利用することとなった。
導き出された課題
既に社内で共有されていた経営理念や行動指針などの「会社のあるべき姿」に沿って、経営改革を進めてきた当社であるが、「中小企業活力向上チェックシート」に沿って確認することで、まだ行き届いていない点があることが判明した。特に①BCP(事業継続計画)、②社内体制、③人材育成が課題であると指摘を受けた。これまで多面的に改善に取り組んできた伊藤氏であったが、チェックシートにはこれまで見逃されていた経営課題も確認項目として掲載されていたため、他に解決すべき課題も可視化され、認識することができた。
伊藤氏は、専門家の支援を受けて事業計画書を作成し、その中に指摘項目を含めることで、課題解決に取り組むこととした。指摘された課題の解決とともに、経営理念の更なる定着を進めるためには、伊藤氏の考えや今後取り組むべきことを文書化し、一致した認識を社内で共有することが必要と考えた。
提案した中小企業支援施策
当社の希望により、成長アシストコースを利用して、専門家から具体的なアドバイスを受けながら、事業計画書の作成に取り組んでいくことになった。浮き彫りになった課題解決を確実に行いたいと考える当社にとって、第三者の意見や専門家のアドバイスを得られる当事業は最適であった。
事業計画書の作成にあたっては、既に伊藤氏の頭の中にある事業イメージを、実施時期を含め、具体的に計画書に落とし込んでいった。専門家から記載方法や内容の一貫性などに関し指摘を受けることで、より充実した内容の計画書を作成することができた。
また、支援においては専門家との何気ない会話も、伊藤氏にとっては刺激を受ける場となった。東京商工会議所とは、当社が海外展開を検討し始めた時期からの付き合いであり、担当者は当社の業務内容を熟知していた。伊藤氏と担当者との打ち合わせはブレインストーミングの場にもなり、そこで新たな取り組みについてのアイデアや、課題への気付きも得られた。担当者は多忙な社長が少しでも効率よく経営改善に取り組めるよう、各種フォーマットも提供し、伊藤氏の時間の節約に貢献した。
このように、当社と担当者との信頼関係も、スムーズな支援の一因と言えよう。時間をかけて事業の方向性を検討し、実行プランにまで落とし込むことができた。専門家とのコミュニケーションは「とても刺激のある場だった」と伊藤氏は振り返る。
その後の状況
事業計画書という成果物ができあがったことで、「今後、目標達成のために具体的に何をすべきか」が明確化し、社内共通の認識となった。
これを受けて、経営課題の発見と解決を主導する新部門である業務部も創設した。その他、伊藤氏は部門責任者とともに、取り組むべき事項を部門ごと・月ごとに落とし込み、さらに詳細な計画を作成していった。
取材時はすでに月ごとの実行計画にのっとり、各部門が目標とのギャップを埋める取り組みを始めていた。今後取り組む新規事業についても、事業指針が定まりつつある。
企業様の声
自分の考えを形にする事業計画書の必要性は常々感じていたのですが、日々の業務に終われ、これまで取り組むことができませんでした。
今回このような機会を得て、専門家の方々のご意見や知見をいただきながら、まずは会社の3年後のあるべき姿(目標)を設定、次に部門ごとの目標設定と達成に必要な課題の洗い出し、さらに実施を確実にするための実行プログラム(チェックシート)も作成しました。
今後は、事業計画書で掲げた目標や課題をチェックシートを活かしてクリアし、なんとしても3年後の会社目標を達成できるよう取り組んでいきたいと考えます。
当社の実態を理解された上で、経営上の悩み事に対してもアドバイスしてくださった先生方にこの場を借りてお礼申し上げます。
経営指導員の声
社長から最初にお話をうかがった時、企業規模からは想像できない程の売上・利益を計上していることから、支援の必要性がありそうだという印象を受けました。そして、社長の「収益を上げている時こそ、将来を見据えて企業変革を行う」という経営者スピリッツに感動しました。事業計画書作成の段階では、毎回、議論と検討を踏まえたドラフトを作成し、適時社員全員に会社の目指すべき方向性や課題を提示するとともに、社員の声に耳を傾けるなど、一体感を以て変革を進めてゆくための素地を着々と固められました。支援終了後も、社長のリーダーシップのもと、間違いなく、事業計画の目指すべき姿を実現できるものと確信しております。
(コーディネーター:加来国雄氏)
企業情報
企業名 | 日本ヒーター機器株式会社 |
---|---|
代表者 | 伊藤英孝 |
創業年 | 1984 |
業種 | 製造業(食品加温機器) |
所在地 | 東京都大田区大森北1-23-1 NETビル |
事業PR | |
URL | https://www.heaterkiki.co.jp/ |
中小企業診断士 浅葉名津美