「減容」の自社製品で環境変化に適応 -施策提案と活用でバックアップを受ける-
企業名:株式会社新和精機 取材先ご担当者様:代表取締役 岡本 日吉 様
顧客の要望をうまく取り入れ、適正価格で顧客の悩みを解決するソリューションを提供することについては、自信を持っているが、営業については「待ち」の場合が多く、積極的に取り組めているとは…
企業概要
株式会社新和精機(代表取締役 岡本 日吉 社長)は、1976年、まだ20代だった岡本氏が、それまで勤めていた会社の顧客企業の要請に応じて始めた事業をルーツとする。
創業直後は、まだ系列取引が主流で、新規参入が難しかった時代。顧客企業の紹介で機械や材料を入手でき、事業の基盤を固めていった。
1980年頃、まだATC(自動工具交換装置)のないNCフライス盤が主流だった中で、当社はいち早くMC(マシニング・センタ)を導入。高度な技術力を武器に、ロケット等の特殊な分野にも参画することができた。現在の瑞穂町に工場を移したのは、1989年。工場関係を主とする不動産業者から紹介されてのことだった。
バブル期には、主に各種加工機械の製作を引き受け、相応の利益を出すことができた。しかし、バブル経済崩壊後、企業は次々に設備投資を絞り込み、当社の“装置物”の受注は激減してしまう。
その穴を埋めたのは、ちょうど本格的に立ち上がり始めた、半導体関連の受注(特に真空チャンバの製作)だった。それも、12~13年前、ITバブルがはじけると下火になり、その後はパーツの製作や受託加工を主としてきた。
この20年ほどの間に、系列は崩壊し、競争激化により受託加工の単価は大幅に下落した。低価格化の波を受け、量産の多くは海外へ移行。国内に残ることを選択した当社も、3割~4割の値下げを迫られることが珍しくない。
「受託加工を請け負うだけでは、先がない。」岡本氏は、社員と家族の生活を守るため、バブル期に一度着手し中断していた自社製品の開発に、再び取り組んだ。
当社が開発した代表的な自社製品として、「減容」に資する破砕・粉砕用機器がある。「減容」とは、ペットボトル等のかさばるものを粉砕することで、回収効率を高め、コストダウンにつながる取り組みである。近年の中国の経済成長に後押しされ、ペットボトルのフレークは高価格で引き取られたため、一時は工場増設の心配をしたほど、粉砕機の引き合いが多かった。
しかし、リーマンショックにより、フレークの相場は数分の1から数十分の1に急落。もともと利幅が薄く設備投資の余力が少なかった廃棄物処理業者は、一斉に当社への発注を取り消した。以後、原料相場は持ち直したり、東日本大震災で下落したりと、一進一退の状況である。
リーマンショック以降の当社は、「金型分離反転機」(金型の点検・修理・清掃の際に金型を分離するための装置)、及び大手メーカーが手を出しづらい小型のペットボトル粉砕機に注力している。ペットボトル粉砕機については、材料商社や地元のコンビニエンスストアの協力を得て、コストパフォーマンスに関するデータを蓄積中であり、コンビニや高速道路のサービスエリア等のバックヤードへの導入提案を視野に入れている。
さらには、排出者またはそれに近いところで減容し大量に集めることによって、燃料等から有価物であるマテリアルに高められる、プリント基板や木材の粉砕にも着目し、製品の開発と販売を進めているところである。
企業の悩み
当社は、顧客の要望をうまく取り入れ、適正価格で顧客の悩みを解決するソリューションを提供することについては、自信を持っている。しかし、営業については「待ち」の場合が多く、積極的に取り組めているとは言い難かった。2010年当時、岡本氏は、「何とかしなければ」と思っていた中で、商工会の工業部会で副部会長をしていた縁で(注:現在は同部会長を務める)、経営指導員の紹介により「経営力向上TOKYOプロジェクト」の企業診断を知った。第三者の目から見た課題を参考にしようと、企業診断を利用することにしたのである。
導き出された課題
商工会の経営指導員と、選定された中小企業診断士が、さっそく当社を訪れた。当社はもともと、社長を含めて製造に従事しているため外回りの営業が難しい点を、展示会出展でカバーしていた。中小企業診断士は、当社の持つ高い技術と課題解決力をさらに積極的にPRし、省エネやCO2削減といった環境配慮を打ち出す必要性を指摘した。
提案した中小企業支援施策
各種展示会をより有効に活用するため、「展示会等出展支援助成事業」を用いて、当社の持つ技術や製品のメリットを端的に表現した外部向けのPR資料(カタログ、チラシ等)を充実させること、及び機械の原理や動作の流れが一目で分かるように動画素材を入れたDVDを作成することが推奨された。
- 専門家派遣(エキスパートバンク)
小規模事業者の皆さんがお持ちの経営課題に対応する登録エキスパート(専門家)を直接事業所に派遣し、具体的・実践的なアドバイスによって問題の解決に役立てていただくものです。
その後の状況
新たに制作したカタログ、チラシやDVDを用いて、「産業交流展」、「たま工業交流展」、「テクニカルショウヨコハマ」などに出展し、それぞれが取引拡大に役立っている。当社はもともと、受注の約9割を展示会の来場者ないしその紹介から得ており、その部分がより活性化された形である。さらに、2012年は専門の展示会「ニュー環境展」にも出展し、90社以上から資料請求・見積依頼・テスト設置などの引き合いを得て、社長を中心にフォローにあたっているところである。
産業空洞化の流れに抗い、国内に母体を置いてやっていくためには、高くても売れるものを作るしかない。今後は、「減容」に役立つ、小回りの効く高付加価値な機械を、複数の分野に供給し、リスクの分散を図りながら存続していこうとしている。
企業様の声
最近は中小企業の海外展開を促進する施策が多いのですが、それは「国内で人が働いて税金を払う」という構造の崩壊につながるのではないでしょうか。
国内でやっていくためには、「高くても売れるものを作る」のが基本ですが、瑞穂町商工会が中心となって進めている「瑞穂ファントム工場」のような連携・協働も有効でしょう。
商工会には、それ以外にも各種支援ツールがあり、様々な情報も集まってくると思います。そういった情報の提供や、各施策の目的説明などをしていただけるとありがたいです。
また、当社のように小規模な製造業者では、営業専従の従業員を雇用するのは負担が重く、社長の私が生産と営業を兼ねざるを得ない状況です。商工会や中小企業診断士の先生方には、このような小規模な事業者が着手しやすい施策の提案や活用のバックアップをしていただけると嬉しいです。
企業情報
企業名 | 株式会社新和精機 |
---|---|
代表者 | 岡本 日吉 |
創業年 | 1976年 |
業種 | 金型反転機、破砕機・減容機などの設計・製作、及び各種機械加工 |
所在地 | 東京都西多摩郡瑞穂町箱根ヶ崎1371 |
事業PR | |
URL | http://homepage2.nifty.com/shinwaseiki/ |
平成24年6月5日
松林 栄一